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第百七話 神傑剣士のプライド




 そして砂埃が舞い終えると、その先に見えるのはザーカスを含めた13名のウェルネスと思わしき人たち。私たちが入ってくることも、どのように来るかも知っていたかのように動じない姿はカッコつけたがる思春期の男の子のようだ。


 全く危機を感じていない様子。誰もが短刀を回して遊んだり欠伸をしたり、さらにはこっちすら見ずに談笑している。私たちがなめられているということだろうが、それが逆効果なのだと知らないらしい。


 「やぁ、真ん中に構える男ほどダサいものはないね」


 ルミウ様は周りと比べて明らかに莫大な気派を纏うザーカスに、子供じみたことをするのだと挑発をする。入る前から気派で分かっていたのだろう。神傑剣士ならばそれが出来て当たり前のようだ。


 「待ちくたびれたぞ。今回は俺らの人数に対して2人かよ。それも1人は足手まといになりかねないリベニアの落ちこぼれ王族じゃないか。大丈夫か?敗北が目の前に見えてるようだが」


 負けじとプライド勝負のように煽り合う。効いている効いていないは見れば分かる。ルミウ様はこういうのには神傑剣士とは思えないほど正直に感情を顕にする。が、ザーカスは表面上では落ち着きを見せても、内心は生意気を言われていると感じている。


 プライドの高い神傑剣士は安心安全だが、同時に危険でもある。


 「目の前に敗北が見えたらお前は戦わないの?神傑剣士なら命を代償にして立ち向かうのが当たり前でしょ?あーそうか、お前は神傑剣士であっても自己中心的なクズだったか。なら私と価値観は合わないね」


 ヒュースウィット王国では神傑剣士としての暗黙のルールがあり、第1に国民の命を優先するということが掲げられている。だからイオナもルミウ様も日々の鍛錬を欠かさず行い、任務には絶対の自信を持って向かうらしい。


 だがこのリベニアの神傑剣士はそんなことはない。国民を守るのは絶対だが、それ以外は普通のプライドの高い剣士。自分の命を最優先にする剣士ばかりだ。


 「お前なんかと価値観の相違があったとこでなにもないだろ。そもそも自分の命を優先にして何が悪いんだ?俺らが居なければ国民は今頃死んでいるだろうに」


 「私は悪いとは言っていないし、思ってもいない。ただ、神傑剣士が勝てないと思って立ち向かわず逃げると国民はそれだけ多くが死ぬ。神傑剣士たるもの、国民を守るのは義務であり存在意義だ。お前でも勝てないのなら国民に勝てるわけもない。なら少しでも多くの国民を逃がすために立ち向かおうとは思わないのかな?遅かれ早かれ勝てない災厄に襲われるのならお前の死は見えているのに」


 どの王国にも変わらないこと、それが神傑剣士の存在意義。国民を守るために神傑剣士という剣士団が存在するのだとこの世の誰もが知っている。


 それを正式に承諾したから就けるのである。それが偽りだとしても就けるのは少し問題でもあるが。


 それにしても20歳、もうすぐ21歳になるほど若いのに33歳であるサーカスを言葉で押しているのは面白い。頭の良さなんて関係ないこの言い合いは、神傑剣士としての誇りがどれだけか競われている。それを圧倒するのだから、そこから優劣はつけられたようなもの。


 見えないな……もうすぐ21か……。


 「綺麗事ばかり並べやがって。どうせお前もそんな地獄を目の前にしたら怖気づいて逃げるさ」


 「いいや、それはない。お前らと一緒にするな。私は今まで1度として逃げることを考えたことはない。私の王国の剣士ですらそう思っているのにお前は……ふっ、情けない」


 即言い返したことにより威圧感が増す。それだけは違うと勘違いでもされたくないのが伝わってくる。顔にもそれが表れており、普段優しい目が相手を若干怯ませるほど鋭く睨んでいた。


 ドMを喜ばせるような煽り方は私も受けてみたいほどカッコよかった。きっと男に生まれていたなら大人気だっただろう。現在ヒュースウィットでも人気No.1らしいので順位は変わらないだろうけど。


 「相変わらずムカつく女だ。神傑剣士として力はあるようだが、煽れるほど勝ちを確信してるのか?」


 「それは人数差のことを言っているのか?」


 「ああ。どう見ても13人をお前ら2人で相手には出来ると思えない」


 「……お前が本当に神傑剣士なのか怪しいよ」


 呆れていた。なんならイオナにイジられる時よりも何倍も激しく。本当に心底期待外の男なのだろう。ザーカスという剣士は。


 「神託剣士やそこらのレベル5が集まったところで何になる?お前も神傑剣士なら分かるでしょ?神託剣士が最低でも8人は同時じゃないとレベル6の神傑剣士には勝てない。でもそれはあくまで予想。私なら――20人は遊べるよ」


 気派を使えば力量の差は分かるでしょ?と言っているようだ。レベル6ならばそれほど出来て当たり前なため、ザーカスも言われて目を凝らす。


 遊べる。この言葉が本当だと知った時、ザーカスの顔は一瞬引きつった。これが正真正銘最強の剣士であり、可視化されるように気派を纏われていたことで自分との差を知ったからだ。


 「……いいな。バケモノには慈悲も何もいらないから全力で殺ってやるよ」


 「そう。でも残念。お前の相手は私じゃない」


 「お久しぶりですね、ザーカス。私のことが嫌いで嫌いでどうしようもないマゾヒスト。私が相手をして()()()()

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