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第百五話 不気味




 荒野といえど、荒れ果てた土地のど真ん中に1軒の拠点が建ち並ぶようなことはなく、元は人が住んでいたであろうボロボロの家が無数に建ち並んでいた。ルミウが調査を始めた理由である貴族攫いの拠点も、剣技を使えば即座に崩れるようなものだったらしい。ウェルネスはそういうのが好みなのかもしれない。


 砂漠に近いような地の様子に、ここらで生きるためには長期滞在は不可能だと予想出来る。なので、おそらく最近作られた拠点なのだろう。同じ拠点を使い続けるような神傑剣士でもあるまいし、少しは頭が使える。


 私の知るザーカスはそれほど賢い人ではない。レベル6として力技で押し切る脳筋とも言える。まぁ、そこらへんの管理云々は手下に任せてそうだが。


 視界は良好でも、何軒も崩れそうな家や、既に原型を保てずバラバラになった家が足元を引っ掛ける。無駄に入り組んだ迷路のような通路も後々厄介になりそう。地形把握までこの短時間で出来るわけもなく、基本はこの左目かサウンドコレクト頼りかな。


 そんな道を安心安全の権化を連れて歩く。一応レベル6として妥協の最低ラインまでは仕上げた私の技術も、並ぶ3人の神傑剣士には到底及ばない。同じレベルなんて今ではほとんど到達不可能と思えるのに、レベル5のマークスにすら足元に届くかどうかのとこにいるのでこの先は明るくても長過ぎる。


 これはため息ばかり吐いてしまう。


 「着いたのはいいが、ここの何処にいるんだ?」


 「もう少し歩くと、見た目はボロボロの家でも、内装はそれなりに整えられた元貴族家がある。直進し続ければ着くから気にしなくていいよ」


 「了ー解」


 1度足を運んでまで調べたというルミウ様は自信満々に答える。リベニアに来てから半年だが、街並みから国民の質、魔人についてや御影の地についてなど、様々なことを調べ上げている。どれもどこから入手しているのか不明であり、確実なものであるから少し不気味だったりする。


 「直進し続けるのって退屈だよな。曲がったりする方が奇襲とかあって楽しいんだけど」


 相変わらずどこにいても緊張感の欠片もない最強は欠伸をしながら、大嫌いという退屈に人生無駄にしてる感を味あわされているようだ。


 するとそんなイオナの隣で常に周りを警戒していたマークスは言う。すぐにイオナとルミウ様もなにかに気づいた様子。


 「すまないが、私は一旦離脱させてもらおう」


 「何処へ?」


 後ろを振り向きながらマークスに問いかけると、既に何処かへ消えたいってしまい、姿はどこにもなかった。


 「心配しなくても、後ろを殺りに行っただけだ。第1座ならすぐ戻るだろ」


 「そういうことね」


 極めるまであと少しと思っていた気派についても、まだまだ遅れを取る状態。残る2人が特異なのは理解しているが、それでも反応に遅れるのは実力不足を証明されている気がして悔しい。


 私は決して気派の扱いが下手なのではない。むしろレベル6としては普通といったとこで、固有能力と特異体質を持つ2人で忘れがちだが優秀だと自負するほどには長けている。


 でも、師匠としてイオナを就かせたのならそれ相応の実力を身につけるべきだと思い、まだ上へと登り続けようとしているのだ。


 「でもイオナ」


 「ん?」


 「マークスの反応速度異常じゃなかった?」


 ルミウ様でも若干マークスには遅れを取ったことに疑問が残る。気配取りに長けているからこそ、今まで1番に気配に気づいているからこそ、その不思議さは強く残る。


 「それがあいつの得意分野なんだろ。あの気派なら周りの変化に敏感なのも納得出来るしな」


 全く動揺もしない。感情の起伏がなく、常に陽気で明るい性格をするイオナらしいといえばらしい。だが、この落ち着き方は私の第六感で怪しむことだと感じていた。


 敵としてではなく。


 「プライドが傷ついたのか?」


 「多少はね。これでまた鍛錬の日々だよ」


 「ドMかよ」


 受けて分かる。過酷な鍛錬の果にしっかりとした成果を得られるのだが、その過酷な鍛錬が地獄と大差ないほどきつい。生と死を彷徨う感覚を初めて体感した半年ほど前が思い出されるだけで鳥肌が立つ。


 「マークスは自由行動を好む人だから、好きにさせていいと思うよ」


 「好まなくても1人行動させるわ。あんなのと一緒にいて落ち着けるわけもないしな」


 「苦手になった?」


 「出会った瞬間から苦手だ。隣に並ばれるだけで狂わされそうだ」


 「分からないこともない」


 神傑剣士でも、マークスの気派の気持ち悪さは同じ。私も気派を極めようとすればするほどその気持ちが理解出来るようになった。勝手に干渉されてるような、自分の意志に反して体を動かされる感覚に似たようなものに襲われる。呪術をかけられたと勘違いする。


 「あいつがいないと空気が美味しく感じるな」


 と言いながらも周りを警戒するための発を強めていく。警戒を高めているのだろうが、自然に分かりにくく行動に移すところは尊敬するほど完璧。


 「このまま真っ直ぐ進むだけなら相手からも見えてるだろうに、まだ近くにすら出てこないって、ビビってるのか?」


 「私の調査が間違ったかもしれないよ?」


 「もしそうなら初めて記念としてここで結婚式だな」


 「なら私が司会者をするよ」


 「フィティー、それは無視するのが正解だよ」


 呆れ顔で私が王女であっても見下ろす姿は凛々しい。権力なんて生まれつき得たものであるため、今の私は地位なんて気にもしていないが。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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