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第百三話 真相




 「良くないことでも書かれてた?」


 俺がブニウのことを思い出して顔を引きつっていたのだろう。フィティーは心配をするように俺の顔を覗き込んでいた。澄んだ碧眼は変わらずに。


 「いいや、そこまで気にすることでもないが、気になることと贈り主が相まってすごい顔になっただけだ」


 「嫌いな人からの手紙?」


 「1座上の神傑剣士で、好きだが苦手でもある人だな」


 「なるほど。ヒュースウィット王国の現状報告ってとこかな。良かったじゃん、私の耳にもヒュースウィット王国は安泰だって入ってるからリベニアと比べると羨ましい限り」


 本気でそう思うからこそ、ニコッとした表情の裏に復讐の念を感じる。もしフィティーがヒュースウィットに生まれてたならば、今頃ライバルとして同じ座に座っていただろうか。


 王女として神傑剣士に就くのは歴史上皆無。そんな偉業を成すために生まれてきたとも言われそうな天才が、呪い人として生まれる。これもまた運命と言われるやつなのかもな。


 「そんな羨ましい王国と肩を並べるには、フィティーが玉座から言葉を発せるほど力をつければ良いだけだぞ」


 この世界は剣技が全て。しかし、唯一そうはならない点がある。それが王座だ。貴族にはなり得ても、王族には決してなれない。血筋の問題が第1の問題であり、その他多くの問題から引き起こされる反乱などを危惧してそれは絶対にない。


 正直不満はあれど、俺は国をまとめたいとは思わないし、まとめれるほど才能を持ち合わせてもいない。だから各王国の王の座を狙いもしない。だが、ヒュースウィットのシュビラルト国王とは違い、バルガン国王は別だ。


 だから俺は血筋では問題のないフィティーを、この王国の王にしてみるのも良いのではないかと考える。俺が刀を抜いて「リベニアの国王になる、文句があるなら俺と一騎討ちをしろ」といえば難なく国王になれる。だが、先の条件や気持ち的に反感を買うのは得策でもなんでもない。


 弟子に夢を託すのも、師匠としての役割だと思うしな。


 「私が王座に就くのなら、それはこの世界に安寧が訪れてからか、御影の地を最低でも75%は知り得てからかな」


 「最高の見返しをして、その後に蹴落とすってことか?」


 「そういうこと。私って悪い女だから、あれを父とは思ってないの。満足行くまで――ね?」


 重く、話せば話すほど暗くなるような話しなのだと察する。声色も、少し落ち着きを持ち伝えたい思いを載せているかのよう。今この時に話しておくべきと判断をしたのだろう。


 「ちょっと休憩がてら話すね」


 鍛錬を初めて2時間程度。休憩にはタイミング良きだった。その場に座りながらボソッと話し始める。


 「あの国王は私の母を殺したの」


 「殺した?」


 いつどこで?なんて聞かずとも、俺だからこそだいたいの予想はついた。


 「うん。考えたらすぐ分かるけど、私が生まれて、全員が全員反対すると思う?呪い人だとしても、我が子を放り出すことなんて母には耐え難いこと。だから何があろうと母は反対を続けた。けど、その先は言わなくてもわかるように、傲慢で強欲で唯一神のように考える国王が許すわけもなく、ついには母の首に刀を振り下ろしたんだよね。それが国王に対する抑止力ってか、反抗したら殺すという見せしめにしたんだ」


 「だから入国してから1度も見なかったのか」


 「そう。だけど、私は母に思い入れもないし、顔すら思い出せない。そんな私が復讐なんてしていいのか分からないけど、やらないと後悔すると思って。だから御影の地から戻って、いつかは王座に就こうとは思ってる」


 「良いじゃんか。復讐なんて小さな理由で始めることではないが、信念持って、今まで受けた苦痛を解放するためにはそれだけで十分だろ。どんな理由であれ、復讐の覚悟を心に決めれる人は強いからな」


 俺は楽しいことが好きで退屈なことが嫌いだ。この先のフィティーの未来が、今の俺には楽しみで落ち着けないのだから全力で背中を押す。


 それを知ってるかのように、俺の後押しに笑顔で応える。


 「最後まで付いてきてくれるんでしょ?師匠」


 「弟子が感動のフィナーレを齎すのなら、それをこの目で見るのも役目だろう」


 「流石は世界最強」


 「どうだろうな、人間の中ではそうかもしれないとでも言っておくか」


 俺を超える力を持つ魔人が存在するのは確実のようなものだ。神傑剣士でも戻ってこれないのなら、それを遥かに超えるのは当たり前だ。死を目の前にするのが初めてになるが、俺もフィティーのように成長しないかと気になるな。


 「よし、中々いい話も聞けたし、俺も手紙でやる気は出たし、再開するか」


 「短くて全部私の話で埋め尽くされて、これを休憩と呼べる?」


 「気合いで乗り越えれるだろ」


 「イオナも結構鬼だよね……」


 気派を見れば今からでもすぐに再開出来るのは読めている。だから否応なしに再開するが、気持ちは読めないので、相手のことを考えていろいろ言うのは難しい。


 なんだかんだ立ち上がってやる気マックスのフィティーは深呼吸しては体の何もかもを万全にする。リラックスが大切なのは常識だな。


 それから俺との鍛錬は長期間によって行われた。1日4時間は最低であり、日を重ねるごとに休憩時間も短くなっていった。問題はない程度だったが、その通り進むフィティーには感服する。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

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