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第百一話 目的の確認




 ミストが首を斬られ、神傑剣士であるザーカスも決死の逃走、いや、わざと逃したことによりこの広場には静寂が訪れる。結果的にはミストに止めを刺したのはルミウであるが、それは魔人化のために身動き1つ取れずに屍への道を進んでいたミスト。人間のまま殺したかったルミウには少し心残りがあるだろう。


 それでも深夜である今この時間帯に、騒ぎ立てる国民もおらず、俺らもその場に静かに会話をしていた。


 「それで、理由を聞こうかな」


 ミストの死体をそのままに、納刀後すぐに俺のとこへ戻ってくると、開口一番に聞くべきことを迷いなく聞く。


 「ああ。仲間を見捨てて逃走したことに対して怒りを覚えるのも分かるが、俺個人としてはあいつが国民に対して被害を齎す悪だとは考えてない。だからルミウがミストにやり返しをするように、ザーカスにはフィティーがやり返しとして刀を振ってほしいと思ったんだ」


 基本何においてもルミウと相性のいい俺だが、人である以上、考え全てが合致することはない。ルミウは今、仲間を見捨てて逃げたザーカスにムカついて殺意を微かに匂わせているが、俺は仲間を見捨ててでも自分の役割を果たそうとする姿は間違いとは思わない。このようなすれ違いから、時々噛み合わずに言い合うこともある。


 そのため、多くはルミウが引いて俺の意見が通ることがある。実際、それが正しい正しくないで、人の命が脅かされることはないので気にすることでもない。しかし、考えれば考えるほど、お互いの言うことが正しいと認識出来るので、一概にどちらかが完璧な判断とは言えないのも事実だ。


 「今、俺の任務はフィティーを御影の地でも通用するような剣士に育てること。そのためにザーカスを使えると判断したんだ。あいつが国民を無差別に攻撃するのならルミウより速く殺していたからな」


 「なるほど。私と彼は初対面だから詳しいことも読めてないけど、君がそう言うなら信じよう。でも1つ、彼らウェルネスの人数は20はいるかもしれないと聞いている。なら、トップを相手にせずとも、ミストと同等程度の相手でもいいんじゃないの?いきなり神傑剣士なんてハイレベルすぎると思うけど」


 「なら、ルミウはメンデと本気の殺し合いをしたら死を感じるか?」


 「死を?……いいや、実力的に私が上回るから不可能だと思うよ」


 「俺だったら?俺との殺し合いなら死を感じるか?」


 「それは……多分本能的にも簡単に分かると思う」


 悔しさを隠しながらも、絶対に勝てないことを身を以って知るルミウだからこそ、嘘をつくことはしない。目の前が最強であり、打ち破れない壁なんだと理解しているのは、猛者としては苦しいだろうに。


 「そういうことだ。今のフィティーでは神託剣士じゃ怖気づいても死を覚悟するとこまではいかない。ここに来て5ヶ月が経過しようとしているが、フィティーはもうその領域を超えたんだ。そして次なるステップとして、死を感じながら己の力だけで何とか乗り越えることが必要だ。フィティーは鍛えられて身につく技術よりも、潜在能力が遥かに高い。だから咄嗟の判断や行動で莫大な力を手にするんだ。そのために今フィティーに必要なのは死なんだよ」


 「……君は……見ていないようで見てる。そして、知らないようで知っているんだね。フィティーに付きっきりとはいえ、しっかりと師匠としての立ち回りをしてるなんて……頑張っているじゃないか。珍しく」


 俺の顔に何かがついているかのように、覗き込んでは不思議そうに首を傾げる。これが20歳とは思えないほどの幼く、顔はクールビューティーなので意外なギャップに惚れ惚れする。


 「あれ、珍しいのはルミウの方じゃね?褒めるなんて雪でも降るのか?」


 「そんなわけ無いでしょ」


 「つまんねーの。それより、フィティーの剣技はどうだ?蓋世までは一歩手前でも、極までは行けてるだろ?」


 話を変えるタイミングを今だと思った俺は、今日の昼頃のことも兼ねて聞きたいことを聞いておく。進捗状況に滞りがないかを確かめるのは、師匠として当たり前のこと。


 「いいや、面倒でフィティーの才能的にいけると思って、心技を教えたら一気に蓋世まで飛んだよ。そこからランクダウンさせた方がいいと思ってね」


 「……だからか。ルミウと会った日の夜、毎回俺のテリトリーに入るフィティーの気派が弱々しくなってたの。鬼かよ」


 テリトリー内では何でも察知可能。殺意はもちろん、その日の気分や気派の量、疲労度はどれほどかなど細かなとこや、プライベートの変態的なことまで知れる。


 これに関してはマジで下心なく善意でやっているので、変態ではあるが、王女に手を出すほど下劣な生物ではない。


 ぜってぇに!ちげぇからなぁ!


 「んで、それなら蓋世は?」


 「紅だけを教えたよ。1つ覚えるだけで刀の振り方や調整がしやすくなるからね」


 「そうか。ルミウはホント、紅好きだよな」


 「うん。使いやすいからね」


 最近ではエイルへの怒りとともに、魔人化したプロムたちを葬った時に見たが、相変わらずのイカれた威力はルミウ特有のもの。基本は怒りなんて持ちながら振る技ではないので、もう少し威力は下げられる。


 「よし、詳しいことは明日また説明しよう。今日はゆっくり寝て明日に備えてくれ」


 「了解」


 そこまで疲れてないだろうルミウとともに、安堵の表情を見せながらともに王城へと戻って行った。

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