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元勇者は現魔王  作者: たむーん
3/4

王女

残酷な姿となった仲間達から声が聞こえてきた。

「...ぅ...ぁあ......ゆ...し...ゃ...。」

それは王女の声だった。俺は立とうとした。

立とうとしたのだが、立てなかった。

足の使い方というか、力の使い方を忘れてしまったのだろうか。手の動かし方は覚えていたので、手で這いずりながら王女の元へ向かった。必死に必死になって、たどり着いた俺は

王女の顔に触れた。ひどく冷たかった。まるで氷を触っていたかのように王女の顔は冷え切っていた。

俺は王女に声をかけた。

「.....................ぁ。」

声の出し方が分からない。

どうしよう。

俺は焦った。

言葉を発せないなら気持ちで伝えるしかない。

俺は生きている。おまえは大丈夫か。と。

その時、王女の身体から黒い瘴気が溢れた。

俺は離れた。

王女の黒い瘴気は膨れ上がり、繭の形になった。

俺は繭に触れようとした。

その前に繭はヒビが入り、黒い瘴気が溢れ出した。

俺は驚いていた。黒い瘴気に触れているが魔王を倒した後に感じた痛みは無かった。

繭が完全に真っ二つになる。

「...ふー。流石に肩が痛いわね。」

王女の声だった。

「勇者。何をそんな驚いた顔をしているのですか。」

紛れもない。間違いなく王女だ。

繭から人が出てきた。それは王女だった。

「.............ぁ....ぅ...。」

喋れない。喋りたい。

「勇者。魔法をかけます。目を閉じてください。」

昔から王女には頭が上がらなかった。

王国で初めてともだとになった人間は王女だった。

魔王を倒した後は結婚する予定だった。

俺の妻となる王女がお願いをしてきているのだ。

俺は涙を流したかったが、涙が出ない。

俺は目を瞑った。

「<記憶よ。記憶よ。目を覚ませ。>」

俺の頭、いや意識の中に暖かな光が入ってきた。

その瞬間、足がピクリと動いた。涙と思われる液体が俺の頬をつたる。流石王女。俺の状況を感じ取ってくれたのか。

そして声が出るようになっていた。

「...王女。毎度のことながらすまんな。ありがとう。」

「勇者。私は私にできることをしたまでです。」

王女は変わっていなかった。見た目は青白く、所々緑がかっていたが中身は王女そのままだった。

「王女。何が起きたと思う?私達に。」

「勇者。もうこんな堅苦しい呼び方はやめて名前で呼んで。」

「王...アメリ。じゃあ俺も名前で呼んでくれ。」

「えぇ、パド。何が起こったのかみんなに聞いてみましょうか。」

「みんな...?」

そう思った俺は周りを見た。仲間達の身体が動き始めたのだ。

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