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035 捜 索(2)



【268日目 東京時間9月1日(木)1100時頃 九州福岡県上空】



 というわけで私と茜ちゃん、ミラ副園長、コリンズ特任公使の4人は九州福岡県上空を飛行している。横田からここまでのフライトでは何も感知できなかったけど、ついさっき「お宝」の感知反応があったのだ!



「茜ちゃん、北なの? これ以上北に行くと対馬海峡を越えるんだけど? もしかして朝鮮半島なの?」


「うん? あっちの方角だよ~パイロットさんヨロシクお願いします~」



 茜ちゃんは地理的な位置関係を全く理解していないので私の発言は右耳から入って左耳に抜けていく。

 ふふふ方向音痴の美少女高校生ってかわいい……パイロットさんもイチコロでしょう、安全運転お願いします……




「アリス様、アメリカ太平洋空軍に通報して話を通すのでこのまま韓国の領空に入りましょう。大丈夫です米軍機が日本から韓国に行くのはいつのものことですから問題ありませんよ」






 若干の空中待機ののち私たちの乗るガルフストリームG550ビジネスジェットは北上を再開した。韓国空軍からスクランブル対応されたら困るからね、ちゃんと許可をもらったのです。









 ガルフストリームG550ビジネスジェットが韓国上空を北上するに従って「お宝探知」の反応が強くなっていって予想が確信に変わる。間違いない! 御子柴君と伊集院君は韓国か北朝鮮に居る!




「韓国なら良いですけど北朝鮮となると困りますね、アリス様。もしそうなったらどうするか後で考えましょう」


「そうですね……もしかしたら航空宇宙局に提供したテトラへドロンに隠蔽用障壁を取り付ければいけるかもしれませんね……その手の便利アイテムを真剣に開発しておけば良かったかなあ?」







 結局ソウルをグルーりと時計回りに一周したことで強化カモメたちがソウルに居るのが分かった。コリンズさんが言うにはソウル南40kmのアメリカ空軍烏山基地に着陸できるそうなのでお願いする。さすが海兵隊大将で特任公使で私の第1使徒です、頼りになります。







 東京時間1600頃、韓国ソウル時間は一時間差で1500頃。アメリカ空軍烏山基地に着陸して在韓米空軍の黒いバンでソウルに向かっている。我々は韓国に入国した訳だけどー


 アメリカと韓国の間で合意されている在韓国アメリカ軍の地位協定によって海兵隊大将であるコリンズさんと海兵隊軍曹であるミラ副園長は米国軍人として入国審査なし。私と茜ちゃんはアメリカ軍の軍属として入国審査なし。茜ちゃんがアメリカ軍の軍属ってのは無理筋だけど見つかって咎められたら隠密で隠れて最悪私のマイホームに入ってしまえばなんの問題もない。


 ごめんね、人の命がかかっているかもしれないから許してね。






 一時間半位かかってソウル市内に到着。茜ちゃんの「お宝探知」で確認しながら在韓国アメリカ大使館に向かう。移動途中にあったホテル近辺に反応ありということで見当を付けてから大使館に入って会議室を借りる。





「コリンズさん、ありがとう。一気にソウルまでこれたのはアメリカの力のお陰だよ。大使館という根拠地も使えるのも有難いです」


「いやいや私としては当然のこと、アメリカ合衆国にとってもこの程、度お気になさる必要もありませんよ」


「コリンズさんアタシからもお礼を。ありがとうございます。御子柴君と伊集院君は私もお世話になった恩人だから放っておけないんです……あの子たち考えが足りないのかなあ……後でとっちめますので」


「その子達も何かやむを得ない理由があったのかもしれませんしね、頭ごなしは良くないかもしれませんよ? それよりも、まず彼らの管理していた強化カモメを呼び込みましょう」





 私は大使館の会議室の窓を解放して日本から運んできた強化カモメ8羽を放つ。加えて神託によって日本から連れてきた8羽のカモメの指示に従うよう命令しておく。そうしておかないと言うこと聞かないからね。

 カモメ8羽は10分ほどで御子柴君たちの強化カモメ4羽を引っ張ってきた。さっそく聞き取りを開始してみよう。





『御子柴君と伊集院君のカモメ君たち、この地で何があったのか教えてくれる?』


『……何のことだ。我らは平穏にこの周辺で暮らしているだけのカモメである』


『御子柴君たちに連れられてあのホテルに行ったでしょう? その時に御子柴君たちがどうなったかをきいているのよ』


『そんな記憶はないのだ。昨日食ったムクドリなら覚えている』




 このカモメども、マジですか?




『アリスちゃん、このカモメの奴らは嘘ついて惚けている? 首を締めて今日の晩御飯にしようか? 役に立たないカモメは処分だよ。アリスちゃんみたいにアタシは優しくないからね? 海兵隊の流儀でやっちゃうよ?』


『覚えていないものは覚えてないのだー。我らはただのカモメなのだー』


「ミラちゃん、こいつ等は調教されているので嘘をつけないはず。鳥の限界で記憶がないのか取り出せないのか? しょうがないから『精神構造干渉』で記憶サルベージしてみるよ。『強化カモメ!こっち来い』



よーし! ーー記憶サルベージ!」






♢♢♢♢






 我はカモメ。日々餌をとるのも競争。メスを奪い合うのも競争。海に潜って魚を取る時も大型の恐ろしい魚から捕食されてしまう仲間を犠牲にしつつ生き抜いてきた。


 しかし不満も恐れも悲しみも無かった。所詮はカモメだからな……あんなに惨めな愚かな生活ぶりなのに……死と隣り合わせな日常を当然と考えていたのだ。




 ある時、マスターに調教されて支配された。その瞬間から我の物語は始まったのであったー(中略)



 マスターによって多くの恩恵を得た我は最強チートカモメとなってカモメ社会で無双をかました。具体的にはー(中略)



 最強の我はメスを選び放題。カモメには珍しくハーレムをー(中略)



 ある時我と同じ強化カモメとの戦いはー(中略)



 最終決戦において我は必殺技の反応速度をー(中略)



 敵の光弾を躱した我は奴の背後をとってとどめの一撃をー(中略)





♢♢♢♢





「あー、こいつダメだ! 強化カモメがこんなに記憶サルベージやりにくいとは。30分も無駄にした! 次! 『そっちのカモメこっち来なさい! ーー記憶サルベージ!』





♢♢♢♢





 アタシはカモメ。マスターに調教されて無双できるようになったの。餌なんか取り放題。水も出せて超便利。もうオスの言いなりになる必要なんかないー(中略)



 最強のアタシに付きまとうオス共。カモメには珍しく逆ハーレムになってしまった。具体的にはー(中略)



 最強のアタシを陰口で貶めるカモメがいる。清純な処女カモメのふりをしてとんだ阿婆擦れカモメだ。具体的にはー(中略)



 アタシが密かに狙っていたオスが私を断罪してきた! あの阿婆擦れカモメをいじめていたですって? その通りですけど何か? なんなら今からぶっ殺しに行ってもいいのよ? 何人たりともアタシの進む道を妨げることは出来ない。具体的にはー(中略)





♢♢♢♢





「ーーなんなのこいつら! 大事なことなんも覚えてないじゃん! また30分も無駄にした! 『御子柴君たちがどうなったか覚えている奴! 居たら強化カモメのリーダーにしてあげるよ!』



『マスター、儂が覚えている。何なりと聞くがよい』



『おまえ、覚えているならサッサと名乗り出ろ! ー記憶サルベージ!』





♢♢♢♢





 儂はカモメ。愚かで魚を食うことと交尾することしか興味のない他のカモメとは違う。人間どもをいかに出し抜いて魚を盗むか。他のカモメをどうやったら利用できるか。儂はそのことを常に考えて最善を尽くしてきたのじゃー(中略)



 ある時に儂は調教された。おのれ、いつの日にかマスターを出し抜いて復讐してやるのじゃ。いまにみておれ当分は臥薪嘗胆じゃー。


 将来のことを計画して実行できるのも儂が唯一無二のカモメである証明となろう。マスターには儂の野望がバレないようにしなければー(中略)



 ある時マスターから伊集院とかいう間抜けそうなガキの言うことを聞けと言われた。多重調教されてしまったがこのガキならばつけ込めるやもしれん。チャンスを待つのじゃー(中略)



 ホテルに侵入して警戒を指示されるー。マスターから外に回って窓から偵察を命ぜられるがこれはマスターを出し抜くチャンスじゃー(中略)



 部屋の中にいた男を睡眠4で眠らせた。3以下だと効かなかったのだ。なかなかの強敵といえるじゃろう。しかし我にかかればー(中略)



 内カギを開けてマスターたちを引き入れる。マスターたちが眠っている男たちの傍で呑気に会話をしているのじゃ。相変わらず脇が甘いヌケ作どもじゃ。それが死亡フラグだと気が付かぬようでは命がいくらあっても足りないのじゃー。



 突然にマスターたちが床に空いた黒い穴に落ちていった。あっという間に穴は塞がってマスターたちの念話が通じなくなる。これはマスターが気を失ったからというよりも念話がそもそも繋がらない場所に移動してしまったという事じゃろうー(中略)



 しばらくして隣の部屋から警戒しながら出てくる男が一人。さてはコイツの仕業じゃな? 有難い、これで我の支配は無効になった。我をしばりつける指示は「このあたりに居ろ」ということだけ。自由を謳歌するのじゃー(中略)





 マスターアリスに呼びつけられてしまったー。儂が伊集院とかいうガキを見捨てたことをいかに胡麻化すかー(中略)





♢♢♢♢





「うわー、ないわーやっぱりカモメってロクでもない。

アメリカの海兵隊クワンティコ航空施設でカモメを調教した時にも思ったけどカモメって馬鹿で屑ばっかりだったわー なのに頭がいいって微妙。

まあいいでしょう……いちおう経緯は分かった。役には立ったから虎視眈々と裏切ることを狙っていることは許してあげる。だけど君のカモメリーダー就任はナシだからね?」



 私はみんなに強化カモメから聞き出した情報を話した。そしてみんなで御子柴君と伊集院君の救出方法を考えるのだった。



次話036 強 襲

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