表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

遺されたもの

 どれくらいそのままでいたのだろうか。茫然自失となって反応できないでいる私を残し、吉松はいつの間にか帰っていた。気がつけば、部屋は暗闇に包まれている。


 机の上には、白いボア手袋とUSB、それから、冷め切ったお茶。


 いつの間にか手が冷え切っていた。無意識に机の上の手袋へと手が伸びる。あの日、徹に渡したはずの手袋がなぜ、ここにあるのか? 手袋を手に取ると、昼間の来客の言葉が蘇ってきた。


「瓦礫の中から、発見された遺体の一部が、徹氏のものと判明したそうです」


 徹はもうこの世にはいないーーーー


 そんなこと、あるはずがないと思いながら、彼の存在を、匂いを感じたくて、白いボア手袋を強張った顔に押し当てる。しかし手袋からは、自分が普段つけている香水の香りがするばかりで、彼の残り香を感じることはできなかった。


 徹はなぜこの手袋を、ロボットの手に()めたのか?


 机の上のUSBへと視線を向ける。吉松は、このUSBに徹が私に宛てたデータが入っていると言っていた。そのデータを見れば、徹の意図がわかるだろうか。


 思考が停止しそうになりながら、それでも、本能が真実を知りたいと私の体を動かす。私はパソコンを立ち上げると、USBを挿入した。


 “柚季へ”と名前のついたファイルデータが一つだけ入っている。そのファイルを、無心でクリックした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ