95話 北海道到着
俺は双子JKの姉、伊那菜々子とともに北海道に来ていた。
菜々子が北海道大学のオープンキャンパスに参加したいとのこと。
保護者代行として俺が彼女を連れてきた次第。
飛行機に乗って数時間、俺たちは新千歳空港へと到着した、のだが……。
「……うう~……きもちわるいです……」
「大丈夫か、菜々子?」
「……はひぃ」
ロビーにあるソファに、菜々子が深く腰を下ろしている。明らかに血色が悪い。
「乗り物酔いか」
「……すみません、結構弱くて……いつもは、あかりちゃんがお薬のませてくれるんですけど、忘れてて」
しっかりものの妹が今回いないからな。
というか、そうか。乗り物に弱いのだな。
「すまん、配慮が足りてなかった」
「……い、いえ。せんせーのせいじゃないです。お薬飲み忘れたのがわるくて……あう」
俺は自販機で冷たい飲み物を買ってきて、菜々子の隣に座る。
「ほら」
「……ありがとーございます」
菜々子が飲み物をのんでひと息つく。
体調が戻るまで少し休んだ方が良いだろう。
新千歳空港から札幌は電車で移動する予定だったし、まだホテルのチェックインまでは時間がある。
だから、治るまでは休んでおこう。
「……わたし、いつもどんくさくて……めーわくばっかりで、すみません」
しょぼくれてる菜々子の額に、俺は手を置く。
「ひゃんっ。せ、せんせー?」
「おまえはどんくさいんじゃなくて、どんなことにも真剣に取り組むから、結果的に遅くなってしまうだけだ。それは美徳だよ。決して悪い事じゃない」
菜々子が目を丸くする。じんわり……と目に涙を浮かべる。
「……でも」
「そんな風に、自分を悪く言っちゃ駄目だ。自分の言葉で自分の自尊心を傷つけるようなこといっちゃ、ますます辛くなるだけだぞ。いいな?」
ぽんぽん、と俺は菜々子のあたまをなでる。この子は、何でもできるあかりのそばにいたせいで、かなり自分に自信がない子なのだ。
でも俺は、菜々子が劣っているとは決して思わない。この子は聡明で、そして優しい。
自分にある長所を、本来なら親が伸ばしてやるべきだろう。だがあかりたちは特殊な家庭環境にあった。そのせいで、菜々子は長所に気づけないで居る。
俺はこの子等の親代わりをやってる面もある以上、菜々子たちを導いていきたい。もちろん、恋人として接することもするが……。
「せんせー……ありがとぉ……」
ふわっと笑う菜々子。昔から変わらない、優しい笑みに癒やされる。
「元気になったか?」
すると菜々子は頬を染めて、ふるふると首を振る。
「……わ、わー、まだちょっと、元気がでないなぁ。もうすこし、こーしててほしーです……」
甘えるようにそういう。それが可愛らしくて、俺はしばらく菜々子の額に手を置いていたのだった。
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