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90話 るしあ、幸せを得る

【★お知らせ】


書籍化決定しました!



GAさまで出してもらえます!




皆様のおかげここまでこれました!




本当にありがとうございます!



 岡谷(おかや) 光彦の恋人、開田(かいだ) るしあ。


 るしあはふと目を覚ます。

 気づけば部屋の中は薄暗くなっていた。


 周囲を見渡す。

 そこは自室の、大きなベッドの上だ。


 るしあは自分がなにも身に付けてない、生まれたままの姿であること。

 そして、隣にはいとしい彼がいることを見て、軽くパニックを起こす。


「な、なな、なんで!? あ……そうだ」


 るしあは先ほどのことを思い出す。

 開田の家にやってきた岡谷に、るしあは奇行ともとれることをした。


 ギャルゲーをやって男心を理解したつもりのるしあが、暴走。

 エロい格好で岡谷を誘惑したのだ。


 しかし見当違いだったことが判明。

 暴走したるしあだったが、岡谷が優しく受け止めてくれた。


 そして思いが通じ合ったふたりは、抱き合って肌を重ねた次第。


「うう……今思い返すと、とても恥ずかしいことを……」


 三郎が用意したギャルゲーを端に発する騒動。

 ともすればドン引きしてもおかしくないのに、岡谷は自分を否定しなかった。


 初めて、さっきは男に抱かれた。

 正直言って自分が岡谷を悦ばせられたとはいいがたい。


 終始彼にフォローしてもらった。

 男女の営みとは、どちらが一方的に与えるのではないと理解していたのに。


 初めてのるしあは何もできず、ただ岡谷から与えられる、温かくて優しい快楽に翻弄されることしかできなかった。


「……おかや」


 彼に抱かれている間は、夢のような時間だった。

 大好きなおかやを、とても近くに感じられた。


とても気持ちよくって、頭の中が真っ白になって、ずっと雲の上にいるような感覚でいた。


「知らなかった……こんなに気持ちがいいものだなんてな……」


 るしあは開田の家に生まれ、両親を失ったときから、大人として振る舞うことをことを選んだ。


 大人びていた。

 だからセックスについても、知識として学んでいたし、どういうものか理解していた……つもりだった。


 だがそれは間違いだった。

 自分は何も知らなかったのだ。


 大好きな人と結ばれることは、とても幸せなことであると。

 愛する男に抱かれることは、こんなにも気持ちがいいことであると。


 ……自分が、思った以上に、スケベであることを。


「あんな、ケダモノみたいな声を、出してしまうなんて……うう……」


 最初はたっぷりと体をほぐしてもらえたから、痛みはほとんど感じなかった。

 

 そこから目くるめく快楽の渦に巻き込まれ、気づけば自分が岡谷の上にまたがって、彼を激しく求めていた。


 一度で満足できず、二度、三度と……行為の継続を求めたのは、他でもないるしあだった。


 岡谷はるしあの要求に全て答えてくれた。

 ……かなりふしだらな要求にも応えてくれたし、それに何より、たっぷりと優しく、愛してくれた。


 それがうれしくって、気持ちよくって、彼との行為に没頭した。


「……なんだ、ワタシも、所詮は一匹の雌だったのだな」


 自分は次世代を生むための母体だと、昔はそう思っていた。

 セックスや恋にこがれる、同世代の女たちを、一歩引いたところから見ていた。


 るしあにとって子作りとは儀式であり、それ以上の何物でもないはずだった。


 でも、岡谷との行為は違った。特別だった。

 愛のある、素敵な時間だった。


「……相手が、岡谷だったからかな。こんなにも、満ち足りた気持になれたのは」


 そう、いつの間にか、かつて感じていた焦りはなくなっていた。


 るしあがギャルゲーを通して勉強をしなくてはと思ったのは、彼を理解しなかったら、他の女たちに岡谷を取られてしまうと焦ったからだ。


 でも焦る必要は何もなかった。

 こうして愛してもらって、深いところでつながって、理解したから。


 彼が自分を愛してくれてることに。

 自分が、いかに彼を愛してるかを。


「……おかや、ワタシはもう、お前がいなくては生きてけない体になってしまったぞ。完全にな」


 隣で眠る岡谷の胸板に、そっと頬を寄せる。


「お前が、ワタシを変えてくれたんだぞ」


 生まれて初めて書いた原稿を、彼は面白いと言ってくれた。

 ラノベ作家にしてくれたのも彼だし、自分を女にしてくれたのも、彼だ。


 もう体も心も魂も、彼に全てささげると……決めていた。

 彼のそばで生き、彼の子を産み、そして彼にみとってもらいながら死ぬ。


 ああ、なんて素敵な人生だろうか。


「ありがとう、おかや……」


 るしあはそうささやいて、岡谷の唇に、自分の唇を重ねる。


「大好き、大好きだ。ずっと……ワタシのそばにいて……ワタシの王子さま……」


 岡谷はいつだって新しい世界を与えてくれた。

 そう、物語に出てくる、王子様みたいだ。


 大人であることを強要されていた彼女にとって、そんな夢見る乙女みたいなことを、口にする日はもうないと思っていた。


 それでもいま彼女はこうして、大好きな彼に愛をささやいている。

 愛する男と肌を重ねている。

 まるで、普通の女の子のような、幸せな気分でいられている。


「……全部おまえのおかげだよ。ありがとう」


 ふとるしあは、体のうずきを覚えた。

 彼にまた抱かれたいと、彼のものを入れたいと思ったのだ。


 衝動にかられて、るしあは岡谷の腹の上にまたがる。

 これじゃあまるで夜這いじゃあないか。


「……るしあ?」


 岡谷がふと目を覚ます。

 かぁ~っと頬が赤くなる。


「あ、いや、これは、その……」

「いいよ、おいで」

「あっ♡」


 岡谷がるしあを抱き寄せて、強い力で抱きしめてくれる。

 くたぁ……と体から力が抜けた。


 もう彼に何もかもをささげたい、彼の言うことを何でも聞きたい、そういう気分になる。


「わ、ワタシ……は、なんて、ハシタナイ、ことを」

「気にしなくていい。ほら」


 るしあは躊躇した後、彼を抱きしめる。

 そしてまた、甘い嬌声をあげる。


 彼の愛に優しく包まれながら、るしあは思う。

 生きていてよかったと。


 神は自分を見捨てていなかったと。


 愛する男とともに人生を歩むだけの、幸福は残されていたことに……。


 るしあは深く、感謝するのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 書籍化おめでとうございます! いつも楽しく読んでます これからも頑張ってください!
[一言] こっちも書籍化!? おめでとうございます〜
[気になる点] >彼のそばで生き、彼の子を産み、そして彼にみとってもらいながら死ぬ。 年齢的にも性別的にも何なら、心労的にも岡谷のほうが先に他界しそうです。
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