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46話 動揺する俺。JK妹に落とされていく



 俺、岡谷おかや 光彦みつひこ、29歳。


 出版社で、編集者として働いている。


 現在、夏休みを取って、長野県の軽井沢へとやってきていた。


 うちで保護しているJKの伊那いな 菜々子ななこおよびあかり。


 そして担当作家の開田かいだ るしあと、大学時代からの友人の贄川にえかわ 一花とともに、ホテルに泊まりに来ているのだが。


「…………」


 現在、俺はホテルの一室の洗面所で、歯を磨いている。


 昨晩のことを思い出す。


 ーーねえおかりん。いつまで……昔のままだと思ってるの?


 JK妹の、あかり。

 俺は裸の彼女に押し倒され……夜這いを駆けられそうになった。


 10年前、学習塾で教え子だった伊那姉妹。


 彼女たちは何か事情があって、家出してきた。


 元教え子であることもあって、俺はあの子らを保護することにしたのだが……。


 ーーもうあなたは……あたしのこと、子供って見れないよ。


「バカ言うな。あいつらは、子供だ……俺の教え子なんだ」


 そう言い聞かせる。そうじゃなければ、ダメなんだ。


 なぜなら、この奇妙な同居生活が成り立っているのは、俺が保護者おとなで、彼女たちが被保護者こどもだからこそ。


 あかりの言うところの、彼女を大人の女と見てしまったら……。


 それはもう……。


「ダメだ。気にしちゃ、ダメだ」


 俺は冷水で顔を洗い、邪念を払う。


 俺は保護者であり続けなければならない。


 あの子らは、俺を大人として、頼ってきてくれている。


 異性として意識すると言うことは、その信頼を壊すことになる。


岡谷おかやくん?」


 振り返ると、黒髪の美女が立っている。


 黒いノースリーブのシャツに、白いチノパン。


 あかりたちより一回り大きな乳房と、きゅっと引き締まった体つき。


 贄川にえかわ 一花……一花いちかがそこにいた。


「…………」


 思い起こされるのは、一昨日の夜。

 俺は彼女と肉体的な関係を持った。


 彼女は、大事な友達である。

 けど一花は俺を好きだと言ってくれた。


 俺は、そんな彼女の思いと、どう向き合うのか考えた矢先に……。


 あかりの事件があって、俺は……これからどうすれば……。


「どうしたの? 体調でも悪いの?」


 一花が心配して、俺に近づいて、額を手で触れてくる。


 甘い、髪の毛の香りと、化粧の大人っぽい匂いがする。


 一昨日の夜、生まれたままの姿で、甘い声を上げる一花を思い出してしまう。


「な、なんでもない……大丈夫だ」

「? そう」


 俺は、一花を拒んでしまった。

 なぜだ? なぜ俺は、こんなにも罪悪感を覚えているんだ?


 彼女と、友達とふれあうことなど……今まであっただろうに。


 なのに、今。

 一花が俺に触れることに対して、【だれかに悪い】と思ってしまった。


 だれかって、だれだ。


 ……馬鹿か、俺は。


「飯、行こうか」

「そうね、あの子らも待ってるわ」


 俺たちはレストランに向かう。

 

 ……大丈夫、だろうか。


 俺は昨晩から今の今まで、あかりと顔を合わせていない。

 

 LINEでも連絡していない。

 はてして、あかりは、どういう対応を取ってくるだろうか。


 みんなの前で、昨日のことを言いふらす……ようなことは、さすがにしないだろう。


 いや、わからん。


 あいつは、本気だった。

 本気で俺を誘惑してきた。


 ならば、この先も、ところ構わず、俺にアタックしてくるかも知れない。


 人前でそんなことされたら、どう言い訳すればいいんだ。


 いや、いいのか。別に、言い訳なんて。前々からあいつは、ぐいぐい来てたわけだし……。


 ああくそ、ダメだ……。今日はいつもにまして、思考がまとまらない。


 さて。

 そんなこんなありながら、俺たちは目的地へと到着。

 

 このレストラン、朝食はビュッフェスタイル。


 ホテルのテーブルには大きなテーブルがおいており、その上にはトーストなどの料理が並んでいるのだ。


「……おはようございます、せんせえ」

「おかや、おはよう」


 朝食の席へ向かうと、黒髪のJK姉、菜々子ななこ


 白髪に赤い瞳の、小柄な少女、ラノベ作家のるしあが、待っていた。


 菜々子ななこはロングスカートにシャツ。

 るしあは青いワンピース姿だ。


 どちらもやや幼い印象の、しかし清楚な出で立ちである。


「…………」


 俺は、残る1人がいないこと気づく。

 どこだ、どこにいるんだ……?


 あいつは、どんな格好で、俺の前に現れるんだ……?


「おかや? どうしたのだ」

「……なにか、探してるんです?」


「え、あ、……いや。あかりは、どこだ?」


 と、そのときだ。


「おっすー」


 ぽんっ、と誰かが後ろから、俺の肩を叩いてきた。


 振り返ると、そこには……。


「あかり……」


 彼女の今日の格好は……。


 肩がぱっくり開いたシャツに、短パン、ニーソックス。


 長い髪の毛をサイドテールにした……。


 ……普段通りすぎる、格好だった。


「おっはー、おかりん」

「あ、ああ……」


 あかりは、どう来る?

 昨日のことに、触れてくるだろうか。


 みんなの前で自慢したり、からかったりしたりするかもしれない……。


「おかりん、どいてどいて」

「え……?」


 あかりの手には、お皿が握られている。


「いっぱいとって来ちゃってさー。落としたら大変だし~」


「あ、ああ……すまん」


 あかりは普通に、俺の横を通り過ぎる。


「お姉! あっちにフレンチトーストあったよー!」


「……! それは、行かねば!」


 だーっ、と菜々子ななこが席を立って、フレンチトーストの置いてあるスペースへと向かう。


「菜々子は子供だな」

「るしあん、あっちにチョコフォンデュあったよー」


「ば、馬鹿な!? ちょこふぉんでゅが、朝から食べられるだと!?」


「マシュマロも置いてあったから、付け放題だぜ!」


「う、うむ……ちょ、ちょっと取ってくる!」


 るしあもまた、席を立って離れていく。


 残されたのは俺とあかり、そして……一花。


「おかりんたち、何ボサッと立ってるのさ。早く座ればー」


「そ、そうだな……」「ええ、そうね」


 あかりが座る。


 俺は目の前の空いてる席に、座りかける。


 だがそこは、あかりのちょうど真横だった。


 ーーあたしのこと見るたびに、今日の出来事思い返しちゃうんだ。次第に耐えきれなくなって……最期には飢えた獣のように押し倒しちゃうの。


 昨日の、あかりの言葉を思い出し……。


 俺は、あかりから、距離を取って座った。


「? おかやくん、なんでそっちに座るの?」

「……なんとなくだ」


 言えるわけがない。

 近くに居たら意識してしまうから、などと、中学生でもあるまいし。


「…………」


 あかりは、ジッと俺を見つめていた。

 そして、ニコッ、と笑う。


 ……その笑みは、昨日の大人びた、妖艶な笑みではなかった。


 いつも彼女が俺に向ける、子供のような、無邪気な笑み。


「おかりん、寝癖ついてるよー」

「え? あ、ああ……」


「アタシが治してあげよっかー?」

「い、いや、結構だ」


「あ、そー」


 あかりはあっさりと引き下がる。

 昨日のように、執拗に、ぐいぐいこない。


 ……なんだ、どうしてだ?

 何を考えてるんだ? くそ……わからん……。


「はい、岡谷おかやくん」


 ことん、と一花が、俺の前にコーヒーを置く。


「あっちにアイスコーヒーあったから、岡谷君の分もとって来ちゃった」


「ああ、ありがとう……」


 俺の正面にはあかり、その隣には一花が座る。


 ーー刹那、彼女たちの裸がフラッシュバックする。


「……!」


 俺は慌てて、コーヒーを飲む。

 いかん……何を考えてるんだ俺は。


 俺は……こんなに、性欲が強いやつだったか?


 元妻ミサエは、向こうから絶対に、肉体関係を求めてこなかった。


 俺が子供作ろうと迫っても、拒まれ続けた。

 

 次第に、俺は肉体関係を持つことを、諦めた。

 俺もそれでいいと思って、仕事に没頭していた。


 性的な興味は、歳をとるにつれて、薄くなってくのだろうと、自分の中で結論づけた。


 ……だが、一花と寝て、そして、昨日あかりに迫られてから。


 俺は、何度も、何度も、2人との行為を思い出してしまう。


「……せんせえ?」

「おかや、どうした、暗い顔して?」


 菜々子とるしあが、不思議そうに首をかしげる。


 ……だが俺は、またあかりとの、昨日の出来事を思い出す。


 あの一幕があって、俺はあかりを、そういう目で見るようになってしまった。


 このまま、同じように、無垢なる2人すらも、同じように見るようになってしまったら……


 と、そのとき。


 ふと、俺とあかりの目が合う。


「…………」


 目をほそめて、くすり、とあかりが笑う。

 それは昨晩見た、艶っぽい、大人びた笑み。


「少し、トイレいってくる」


 一旦頭を冷やすべく、俺は席を離れる。


 ああ、くそ……ダメだ。

 俺はどうしてしまったんだ。


 昨日と今日で、まるで別人になったかのように、気持ちをコントロールできなくなっている。


 俺は、こんなに、女に興味を持つようなタイプだったか……?


 俺は男子トイレへ入り、顔を水で洗う。

 心頭滅却だ。冷静になろう。


「おーかりん♡」

「なっ……!? あかり!?」


 振り返ると、あかりがいた。


「おまえ! ここ男子トイレだぞ!?」


「ん。そーだね。でも周り誰も居ないし、だいじょうぶじゃない?」


「ばか! 出てけよ」


 すると、あかりはクスリ……と笑う。


 ……ぞくっ、とするくらい、妖艶な笑みだった。


「どうして?」


 彼女が俺に近づく。


 鼻先がくっつくくらい、顔を近づける。


 ……びっくりするほど、整った顔つき。

 大きな青い瞳に、小さな顔。


 リップをつけてるのか、ピンク色で、艶のある唇。


 あかりが俺に、正面から密着している。


「は、離れろ……ばか!」

「おかりん、かわいい♡」


 すっ……と顔を近づけてくる。

 昨日の、情熱的なキスが、思い起こされる。


 ……だが、彼女は俺をスルーすると、耳元でささやく。


「……キスして、欲しいの?」

「! 違う!」


 俺は彼女の肩を掴んで、ぐいっ、と離す。

 彼女は頬を染めて……目をほそめて、誘惑するように、上目遣いになる。


「今、トイレ誰も居ないね」

「だからなんだよ!」


「おかりん、どうしたの? いつも冷静なあなたが、今朝からずぅっと、動揺しっぱなしでさ」


 くすくす、とあかりが笑う。


「あたしの隣に座ろうとして、別のとこに座ったでしょ? 好きな子を意識しちゃう男子中学生みたいで……かわいい♡」


 こいつ……気づいてたのか。

 全部……。


「アタシいいよ。一花ちゃんも、お姉もるしあんのことも……おかりんがいやらしい目で見ても。許してあげる」


「おま……ちが……」


「ほかの子と、えっちなことも、させてあげる。でもね……」


 あかりは俺の胸に手を当てて、妖艶に笑う。


「あなたの心は、アタシだけのものだから」


 不意打ち気味に、彼女が顔を近づけて、俺の頬にキスをする。


昔の女あのババアのことなんて、忘れさせてあげる。辛い過去も、アタシ以外の子のことも、全部気にならないくらい、夢中にさせちゃうんだから」


 そう言って、あかりは去って行く。


 俺は……その場から動けなかった。


 【こんな状態】で、あいつらの元へ、帰れるわけが、ないからだ。

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― 新着の感想 ―
あかりは魔女だな! おかりんはもう逃げられないね、あかりのトリコだね
[一言] あかり、なんて恐ろしい娘!(少女漫画風白目)
[良い点] はっちゃけ系元気JKと妖艶系小悪魔とのギャップが大きすぎて、10歳年上の男を転がすあかり。 今後どうなるのか楽しみです。
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