3話 お風呂上がり、泊まるJK
妻に浮気されて出てかれたその日、元教え子のJK二名が俺の家にきて、風呂に入ろうとしてる。
……冷静に考えて、なんだこの状況は。
俺はふたりをシャワー室へ案内し、使い方を軽くレクチャー。
「ありがとおかりん♡ 一緒に入るぅ~? なんちって!」
金髪ギャル、妹のあかりが、にひひと笑ってシャツの胸元をぴらぴら見せる。
ちなみにこいつらはハーフなので、あかりの髪の色は天然ものだ。
「……バカ言ってないでさっさと入ってろ。着替えは用意しとくから」
学習塾でバイトしてた時から、こいつらは知り合いだ。
つまり幼少期をよく知っている。
俺にとっては、久しぶりに再会した親戚の子供みたいな感覚だ。
「ちぇー。おかりんつまらないのー。もっと胸をときめかせていいだぜ★」
「あとで着替え持ってくるから、先に入ってろ」
俺はひとり脱衣部屋を出る。
……しかしさっき、姉の菜々子は、なぜ泣いたのだろうか。
安心してっていったけど……。
「ああ……そうか。俺と、一緒なのか」
昔の人が、記憶のとおりで……ホッとしたのだろう。
……でも、これで泣くと言うことは、俺と同様に、何か辛いことがあったのかもしれない。
10年ぶりの再会。
でも、10年間に彼女たちに何があったのか、俺は知らない。
でも……女子高生2人が、ほとんど見知らぬ男の家に泊めて欲しいと言ってくる。
これは……異常事態だ。
「……何かが、あったんだろうな、あの子らに」
俺は彼女たちの着替えを用意するべく、寝室へ向かう。
浮気相手と妻の、不快な行為のあとがそのままにしてあって、不愉快だった。
とりあえず、衣類や避妊具やらは片端から燃えるゴミに突っ込む。
布団は……後で考えよう。とりあえずたたんでベランダに置いといた。
とりあえずミサエの着替えを拝借し、タオルをもって、俺は脱衣所へと戻る。
「「え……?」」
「なっ!?」
……そこにいたのは、風呂から出たばかりの、あかりと菜々子だった。
「ひぅ……♡」
真っ先に肌を赤くして、その場にしゃがみ込んだのは、あかりだった。
「あ、あかり、立って!」
一方で菜々子は妹を抱き起すと、風呂場へと戻っていった。
『せ、せんせ……ごめんなさい!』
浴室の向こうから、姉の声がする。
「あ、いや! 俺の方こそ、すまん……」
『い、いえ……気にしないでください。あかりも、気にしてないみたいなので』
……いかん。
ノックくらいするべきだった。
しかし……10年で、変わるものなのだな。
中身が、あの時と同じだから、つい小学生時代と同じ感覚で接していた。
けれど、彼女たちの体も、年齢も、立派な大人なのだ。
気を付けて、節度を持って接しなければな。
「すまなかった。次から気を付ける」
ドア越しに、俺は二人にそういう。
『……そんなに気にしないでください。事故でしたので』
『うう……おかりんの…………えっち』
★
それからほどなくして。
風呂から出てきた菜々子たちには、俺のスウェットを貸した。
下着は……ミサエのものをと思ったが、キツくて入らないそうだ。
「オジサンたいへんだっ。アタシらノーブラノーパンですよ? 巨乳女子高生が……きゃっ♡ おそわれちゃう~」
先ほどの風呂場でのシーンはなかったかのように、あかりが振る舞う。
だが耳の先はまだ真っ赤だった。
無理してるはいるが、恥ずかしかったのだろう。
「……バカ言ってないで座れ。今洗濯してるから」
「へへっ。さーせん」
湯上がりの菜々子たちは、先ほどよりも艶っぽかった。
スウェットの膨らみにどうしても目が行きそうになるが、しかし相手は子供だ。
あまりそういう目で見てはいかん。
「おかりんって……去勢でもしてるの?」
「は……?」
「……あ、あかりっ。だめでしょっ、そんなこといっちゃー!」
姉が後ろからあかりを羽交い締めにする。
「もが……だって、風呂上がりのJKが! 目の前に居るんだよ? しかもノーブラ! こう……ムラムラとかしないわけっ?」
「……もうっ、もうっ、ばかー!」
「しかもお姉の胸を見てくださいよ、ブラ無しでまったく形が崩れない脅威のおっぱい」
「バカ言うな。子供相手に欲情なんてするわけないだろ」
「「ちぇー……」」
……あかりだけじゃなく、菜々子までがっかりしてるのはなんでだろうか。
「ところでおかりん、洗濯機、動いてないみたいだけど?」
「え!? ……マジか」
俺は慌てて脱衣所へ行く。
ぴぴぴぴ、と謎の音を出してとまっていた。
電源を抜いて差しても、戻らない。
「ありゃん、壊れた?」
「……すまん、そーみたいだ」
「んんー。これは困りましたなぁ~」
にやにや、とあかりが笑いながら言う。
「着て帰るものがない状況。これは帰るに帰れないですなぁ。修理屋さん、こんな夜にやってないでしょうしぃ~」
……こいつ。
まあでも、こいつの言うとおりでもある。
「……あ、あかりっ。ごめんなさい、近くのコインランドリー、使わせてもらいます」
「あー! お姉だまってればいいのにー! もー! このまま流れで泊めてもらえると思ったのに!」
……あかりは気づいてた様子。
そういえばそうか……。
「で、でもでも、オジサンはいいのかなー? 女子高生の着替えを持ってコインランドリーに行くなんて、外の人から見たら怪しまれ……」
「わかった。泊めるよ」
「「え……?」」
あかりと菜々子が、2人揃って目を丸くする。
「だから、泊めるよ」
「「い、いいのっ!?」」
「ああ……。ただし、今日だけな」
ふたりは目を見合わせると、喜色満面となって、抱き合う。
「やったー! やった! お姉やったね!」
「……うん、よかったぁ」
……正直、何が起きてるのか、俺にはさっぱりわからん。
なぜこの2人が、俺の元を頼ってきたのかも。
親御さんは、なにをしているのかも……わからん。
ただ……これだけは言えた。
……菜々子たちと、玄関先から出会ってから今この瞬間まで。
俺は、妻に浮気され、後輩に妻を寝取られたってことを……忘れていた。
「んじゃおじさん、ご飯作ってあげる~」
「料理できるのかおまえ?」
「もっちろん! あ、お姉は残念だけど料理ちょー下手です」
「……あかりっ。よけいなことをっ」
「だから料理の代わりに体でごほーししちゃう~♡ なーんてねぇ♡」
「…………」
「え、冗談だよお姉、顔あかくしちゃってどーしたの? ん~?」
……結局、俺はこの日、2人のJKを泊めることになった。
だがまさか、この日から、2人と同棲することになるとは……。
思いもしなかったのである。