176話 ください
《岡谷Side》
高原氏が帰ってしばらく立ったある日……。
あかりと菜々子が、一人の女性を連れてきた。
……髪の毛、そして目の色から、異国の人なのだがうかがえた。
「あかりたちの……お母さんですね」
「はい、そうです」
母親は俺を見るなり、その場で……土下座した。
どうしたんだろうか、急に……?
「このたびは、岡谷さんに大変ご迷惑をおかけしました……! 私たちのゴタゴタに巻き込んだうえに、大けがまで負って……!」
なるほど。
俺に迷惑をかけて申し訳ないっておもってるんだろう。
彼女は、目に涙を浮かべていた。心から、今回のことを、申し訳ないと思ってるんだろう。
なら……俺の答えは決まっていた。
「立ってください。俺は、気にしてないです」
「は? い、いやしかし……あなたは……」
確かに怪我は負った。
大変な目にあった。が。
「俺は別に、迷惑なんて思ってないですよ」
だって……。
「あかりも、菜々子、俺の家族なんで」
「「!?」」
そうさ。家族なんだ。……まあ、まだ結婚してないけども。
「俺は家族二人のために、自分の意志で、やっただけです。その結果怪我しただけなので、あなたが謝る必要はないです」
だって、家族とは、どれだけ迷惑をかけようとも、気にしないものだ。
他の誰でも無い、開田高原氏に、教えて貰ったのだ。
「むしろ……俺の方が謝らないといけないですね。二人を、危険な目に遭わせてしまいました」
俺はベッドから立ち上がって、頭を下げる。少し傷口が痛んだが、そんなの気にしなかった。
「あ、あなたが謝ることじゃあないですよ!」
あかりたちの母が慌てる。
「いえ、俺の責任です。すみませんでした」
「…………」
あかり達の母親は俺を見て、ほっ……と安堵の息をつく。
「こういうところに、二人は惚れたのね」
母親がそう言うと、あかりたちは強くうなずいた。
「優しいおかりんだいすきっ!」「……はい、好きです♡」
二人が笑ってくれてる。
それを見れただけで、俺は……もう十分すぎるくらいの、満足感を覚えてる。
……さて。
俺は、しなくてはいけないことを、しよう。
「お義母さん」
俺はすっと、母親に頭を下げる。
「あかりさんと菜々子さんを、僕に、ください」
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