173話 じいじ来る
翌日、俺の病室に、開田高原氏がやってきた。
「大事なくてよかったよ」
ニコニコしながら、高原氏が言う。
「すみません、ご心配をおかけして。それと……病院の手配までしてくださり」
「良い。未来の花婿のためだ。これくらいやるのは当然じゃ」
花婿……。
そうだ、俺はるしあと結婚できるようになったのだ。
ハーレム法。
……日本の法律を、この人が変えてしまったのだ。
「あの……」
「む?」
「法律を変えたのって……もしかして……」「うむ、孫娘のためだなっ!」
……やっぱり、るしあのためらしい。
ひいては、俺のためでもあったわけだ。
「ありがとうございます。俺たちのために、法律を変えて」
……長い歴史を、変える。それはとても難しいことだろう。俺の、想像の及ばない苦労が、あったに違いない。
それでも、俺たちの幸せのために、この人は動いてくれた。
そこは……感謝しないといけないことだ。
「よいよい。わしがしたくてやったことだ」
「そうですか」
「うむ。そうだ。だから……まあ、どんな苦労があっただろうとか、そんな余計なことは考えずともよい」
この人は何でもお見通しなんだな……。
余計なことを考えなくていいと、本人が言っている。とはいえ、この人への感謝は……忘れてはいけない。
優柔不断な俺が、幸せになる唯一の方法を、示してくれたんだから。
「本当に、感謝しております。その……お義父さん」
「!?!?!?」
高原氏が目をむいていた。
突然だったからか、びっくりさせてしまったようだ。
「おおおおおおおおお!」
高原氏は立ち上がって、両腕を上げて雄叫びを上げる。
「頑張って良かったぁああああああああああああああああああああ!」