170話 ハーレム法爆誕
禿男に刺されたあと、俺はすぐに、近くの病院に運び込まれたそうだ。
幸い、ナイフは、腎臓などのヤバい臓器は避けて刺さってたらしい。
大事には至らなかった……が。
ずいぶんと皆を心配させてしまったようだ。
「すまん……」
「まったくだよっ。もうっ、めっちゃ心配したんだからっ」
あかりが俺の隣に座って、ぷんすか怒ってる。
「でもせんせえが無事で本当に良かったです……ぐすん……」
菜々子が今もなお泣いており、それをるしあがなだめている。
「すまない……ワタシのせいだ。最初から三郎を投入していれば……」
「いや、るしあのせいじゃあない。俺が自分でケリ付けたかったんだ。ちゃんとな」
みどり湖は大きくため息をつく。
「……お義父さん、あとで見舞いにくるってさ」
「ああ、父さんに報告したんだな」
「当たり前でしょ……」
俺の父も長野に住んでいる。
しかもこの辺だ。多分車に乗ってすぐにくるだろう。
……そのとき、親にも説明しないとな。
俺の置かれてる状況を。
「あ、そうだおかりん! 大変だよ!」
ぱっ、とあかりが笑顔になる。
「トンデモニュースが舞い込んできたんだよ!」
「トンデモニュース……?」
「うん! 開田高原、新総理爆誕! ハーレム法案が、せこーされたって!」
……はい?
開田高原氏が、総理……え? え?
ハーレム法って……?
「すまない、おかや。じいじが……暴走してな。この日本を変えるといって、こうなったのだ」
「そ、それは……本当のことなのか?」
うんうん、と皆がうなずいてる。
一花だけは今も黙ったままだ。
……つまり。
「皆と……結婚できるってことなのか?」
「そーですっ!」
がばっ、とあかりが俺に抱きついてくる。いたたた。傷口が。
「あ、あかりちゃん……せんせえまだ傷口縫ったばっかりだよぅ……」
「あ、そうだった! ごめんね」
あかりが離れて笑う。
しかし……そうか。はは、開田高原氏の、やることなすこと、驚かされてしまうな……。