169話 闇
……闇の中にいた。
ひとりぼっちで、心細くて、さみしかった。
さみしさを埋めようとして、俺は……この胸の空白を埋めてくれる人を探した。
ミサエは、俺を最初必要としてくれた。
必要としてくれる、だから……俺はその思いに答えようとした。
必死に、その要求に応えようとした。でも失敗した。
浮気された。よそで男を作っていた。
……駄目だった。
今思い返せば、当然かも知れない。
ミサエが欲しかったのは、都合のいい男だったのだ。
自分の面倒を見てくれるような、小間使いが欲しかったのだ。
愛する男がほしかったわけではないのだ。だから……結婚生活が美味くいくわけがなかったのだ。
……俺は、一人に愛されて良い人間じゃあない。
ミサエに浮気されて、どこか、俺は壊れてしまったのかも知れない。
もともとあいていた、胸の穴が……ミサエに裏切られたことで、さらに大きく広がってしまった。
もうこの穴を埋めることはできないだろうって思った。
……でも。
『おかりんっ!』
『せんせえっ!』
『おかやっ!』
『お兄ぃ!』
……俺は、出会ってしまった。俺を心から愛してくれる、女性達に。そして……。
『光彦君!』
……俺を、裏切らない、本当の……愛に、気づいてしまった。
胸にあいていた穴はもう塞がっていた。彼女たちが、埋めてくれたのだ。
ゆっくりと、目を覚ます。
「光彦君!」
ぎゅっ……っと、一花が俺のことを抱きしめてくれる。
ああ、暖かい……。俺は、これが欲しかったんだ。
「皆……」
あかりをはじめとした、俺の女達が、俺のことを待っててくれた。
俺の無事を、喜んでくれてる。
ああ……なんというか……。
こんな時に思うのは、不謹慎かもしれないけど、幸せだなぁって、そう思った。