166話 戦う
あかり達の前に岡谷が現れた。
禿男が姉に性行為をする前に。
あかりは菜々子をぎゅっと抱きしめる。
「お姉……!」
「あかりちゃん……」
「ばかっ! もうっ、ばかっ!」
姉を罵倒したくて言ったのではないが、つい、そんな言葉が口をついてしまった。
「なんでお姉は! 自分をないがしろにするの!」
ああ、違うのに。
なんでそんな、相手を罵倒するようなことを言ってしまうんだろう。
姉が助けてくれたことに、感謝しなくちゃいけないのに。
無事であることを、喜び合いたいのに。
……でも。
あかりにとって姉は本当に大事な存在なのだ。
だから……姉にも傷ついてほしくないのだ。
岡谷が来たからよかったものの、来なかったら今頃、愛のない性行為に及び、一生心に深い傷と、最悪のトラウマが植え付けられるところだったのだ。
「もう……二度と、こんなこと……しないで……」
「あかりちゃん……ごめんねえ……ごめんねえ……もうしないよぉ……」
ぎゅっ、と姉が抱き返してくれる
そこには妹に対する愛情が感じられた。
あかりに害意があって言ったのではないのだと、言葉の真意を汲んでくれたのだろう。
「てめえらぁ……! おれを無視して浸ってんじゃあねえぞぉ!」
禿男が怒りで顔を真っ赤にしていた。
「特にてめえ! 何勝手に上がってきてるんだ! 不法侵入罪で訴えてもいいんだぞぉ!」
……確かに岡谷は家主の許可無く勝手に入ってきた。
法的に、とがめられても言い逃れできない。
岡谷はというと……。
「どうぞ」
「なっ!?」
「どうぞ、ご自由に。こちらも、訴えさせてもらいますので」
「な、なんだと……?」
岡谷は……自分たちの王子様は、引かない。
あかり達の前に立ち、あの最悪の親から守ってくれる。
……悔しいな、と。あかりはつぶやく。
岡谷の支えになりたいといつも思っているのに、結局、いつも岡谷に守られてばかりだ。
「な、なんだよ……訴えるってよぉ」
「強制わいせつ罪。それに……動物虐待で」
自分たちの周りには、小屋の中に無理矢理つっこまれた、犬たちがいる。
「無理矢理犬たちを繁殖させ、それを売ってもうけているのでしょう?」
「うぐ……だ、だからなんだよ」
「こんな劣悪な環境におしこんでおいて、これは完全な虐待です」
岡谷は禿男をにらみつけながら言う。
「あなたが私を訴えるのはご自由に。こちらも、戦います。このか弱き子どもたちを、守るために」
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