164話 窮地にヒーロー
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
伊那 禿男が下卑た笑みを浮かべながら、姉の体を、なめ回すかのように見る。
そう……。あの目だ。
禿男は彼らの本当の父ではない。母が作った新しい男。
その男から、あかりたちに(主に菜々子に)向けられる、あの目が嫌で……家を飛び出してきたのである。
自分たちの大切な初めてを、大好きな男性に捧げるために……。
「…………」
菜々子がふるえている。
嫌に決まってるのだ。こんな男に、体を開くなんて。
でも……。
「わ、かり……ました……」
「お姉……!!!!!!!!!」
あかりにはわかっていた。
姉は、自分の体を好きにさせることで、あかりを守ろうとしてるということに。
「そのかわり……あかりちゃんには、手をださないでください。あかりちゃんの……結婚を、許してあげ……て、くだ、さい」
菜々子の声が恐怖で震えている。
当然だ。こんなクソ親に抱かれるなんて、嫌に決まってる。あかりだって死んでもごめんだ。菜々子も同じく思ってることだろう。
特に、菜々子は岡谷に身も心も捧げているのだ。
他人に抱かれるなんて本当に、死ぬほどいやに決まっている。
……そんな、姉が。
妹を守るために、身を捧げようとしてる。
「駄目だよお姉!」
「黙ってろ」
禿男が菜々子の肩に手を置く。そして、二階の寝室へと連れて行こうとする。
「げへっへ! 美味しく育ったなぁ菜々子ぉ……」
「…………」
禿男が菜々子の胸をがしっ、と無遠慮に掴む。
菜々子の顔が恐怖でゆがむ。でも、きゅっと唇をかみしめていた。
「お姉! お姉ぇええ!」
禿男が菜々子の頬を舐める。
ああ、駄目だ……このままでは、菜々子が……。
「た、すけ……て……」
あかりは、今回の件を、自分たちだけで解決しようとした。
いつも彼に助けられてきてばかりだった。
だから、今回くらいは、自分の尻は自分でふくつもりだった。でも……。
「たすけて……! おかりん!」
「げへへ! 誰だか知らないが、助けなんてこねえよぉ! こんなクソ田舎によぉお!」
菜々子と禿男が部屋から出て行く。
玄関近くの階段から、二階へ昇っていこうとしてる。
「助けてぇ……! おかりーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
と、そのときだった。
ガラッ……!
「な、なんだおまえ……ガッ!」
どさっ!
禿男が後ろに吹っ飛ばされて、あかりの前で倒れ込む。
「あ、ああ……」
そこに、現れたのは。
怒りの表情を浮かべた……。
「おかりん!」
岡谷光彦。あかりたちの愛する、男が……助けにきてくれたのだった。




