159話 戦地へ
あかりたちは、三郎の運転するリムジンで、長野県松本市までやってきた。
松本駅前、バスターミナルにて。
「本当に……ここからは二人でいくのか?」
るしあがあかりたちにそういう。
友達は不安がっていた。あかりたちの言葉の端々から、彼女らの親があんまりよろしくない連中であることは、なんとなく察してくれたのだろう。
心配はありがたい。けれど……だ。
「うん。大丈夫。こっからは……アタシらだけで大丈夫だよ」
あかりは、友達に親を見られたくなかった。
るしあ、そして岡谷たちと、あの親を近づけたくないのである。
「しかしよぉ……おれぁ不安だぜ!」
三郎が声を張り上げる。
本気でこちらを心配してくれてるのが伝わってきた。
るしあも、三郎も、岡谷も。
東京で出会った人たちは皆いい人たちばかりだ。
温かい人たちだ。だからこそ、あんなゴミ屑同然の親とは関わって欲しくない。
「三郎。いかせてあげよう」
「お嬢さま……」
先ほどまでの不安げな表情から一転、るしあは決然とした調子で言う。
「二人は覚悟を決めたようだ。その覚悟を踏みにじる権利は我々にはない」
「るーちゃん……ありがとう」
菜々子がぺこりと頭を下げる。
ふっ……とるしあは笑って、菜々子の頭を下げる。
「ワタシはここで待ってる。すべてにケリを付けて……おやかの元へ帰ろう。みんなで」
るしあがあかりを見つめてくる。
皆で帰って、幸せになろう、という硬い決意がるしあから見て取れた。
あかりも、そうだ。同じ気持ちだ。
せっかく重婚OKとなったのだ。誰も悲しまずにすむのだ。
ならば、みんなで幸せになりたい。いや、成るのだ。そのために……。
「うん。いってきます!」
あかりは菜々子と手をつなぎ、松本駅へと向かっていく。
菜々子は依然として、不安げであった。でも、それを決して口にしなかった。
あかりが無理して、不安を口にしていないからだろう。
「いこ、お姉」
「……うん」
二人は後ろを振り返らない。
……振り返れない。
だって立ち止まって振り返ったら、ついてきてくれ、とるしあに言ってしまいそうになるから。
「……お嬢さま、じぃじスタンバっておかなくていいの?」
「……いや、今回ばかりはおじいさまを頼らない。強いて言えば……」
【★大切なお知らせ】
好評につき、連載版をスタートしました!
『 【連載版】虐げられてた片田舎の治癒師、自由気ままに生きる〜辺境の村で奴隷のようにこき使われてた私、助けた聖獣とともに村を出る。私が居なくなって大変お困りのようですが、知りません』
広告下↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。
https://ncode.syosetu.com/n9600jj/