158話 実家へ
あかりと菜々子は、るしあのお手伝いさん、三郎の運転するリムジンに乗っていた。
「しっかしあかりちゃんよぉ、いいのかい? 岡谷さんに黙って出て行ってさぁ」
三郎が心配そうに聞いてくる。
そう……あかりと菜々子は、決着を付けるため、あのまま東京を出立したのである。
「うん。これは、アタシとお姉だけで解決するべきこと……家族の問題だから」
あかりたちが決着を付けるべき課題。
家族の問題。
二人はそもそも、家出してきていたのだった。
あかりたちは最近が充実しすぎてて、それを忘れかけていた。
否……目をそらしていた。
けれど、結婚となると、やはり家族に何も言わないというわけにはいかない。
自分たちは未成年なのだ。
いくら法律が変わって、重婚OKになろうと、自分の立場が変わるわけではない。
許可はもちろんもらえないだろうが、保護者に一言言っておかないといけない。
筋は通しておかないと行けない。
その役目を、岡谷に押しつけるわけにも……。
「…………」
あかりの脳裏によぎるのは、最悪の母。
そして……最悪の、父。
どちらも顔を合わせたくない。でも……
「大丈夫、あかりちゃん」
「お姉……」
隣に座る菜々子が、あかりの手を優しく、けれど、強く握る。
「乗り越えよう、二人で」
姉の手が震えてるのがわかった。
そうだ、男嫌いの姉にとって、父はもっとも苦手な相手。
父の被害にあっていたのも、姉ではないか。
自分以上に、姉は父に会いたくないに決まっている。
それでも、付いてきたのだ。本気で、岡谷と結婚するために、覚悟を決めてきたのだ。
「…………うん。がんばろ、二人ならできるって、ね」
いつもなら、あかりは明るく姉を励ましていた。
でも今それはできない。不安の色の残る表情を浮かべたまま、彼女たちは実家へと向かうのだった。
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