157話 過去と向き合う
《あかりSide》
あかりは、みんなでハッピーエンドへ向かうことを決意した。
あかりは涙を拭うと、スマホを取り出す。
「あかりちゃん……? 何してるの?」
「…………」
姉が心配そうにこちらを見てくる。あかりは、意を決したように言う。
「【あいつ】に、話する」
「……!」
姉はすぐにあかりが誰のことを言ってるのか、察しが付いたようだ。
るしあは首をかしげながら尋ねる。
「あいつとは誰だ?」
「……あたしとお姉の、生みの親」
母親、とは言いたくなかった。あかりも菜々子もあの親に散々苦労させられてきたのである。
「そういえば……おまえたちは家出してきていたのだったな。忘れてたぞ」
「そーね。半年も前のことだもの」
今は冬。あかりたちが家出してきたのは夏。あれから半年しかたっていない。
多分向こうの環境は、状況は半年たっても変わらないだろう。
母親の電話番号も、まだ、変わってないはずだ。
「お姉。ケリ……つけなきゃ、だよね」
あかりたちは前に進むと決めた。そのためには、過去との決別をすませなければいけない。
過去、すなわち、生みの親たる母親との決着だ。
これを終わらせない限り、岡谷との明るい未来は訪れない。
……過去と、親と向き合うのは……怖い。でも……。
スッ……と姉があかりの手を取って微笑む。
「あかりちゃん」
「お姉……」
「いこう。あの人のもとに。決着……つけに」
「うん!」
こうして伊那姉妹は、岡谷との未来のために、己の過去と向き合うことにしたのだった。