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145話 慰め



《岡谷視点》


 開田高原かいだこうげん氏に、処分を任せた俺。

 開田かいだ氏の用意したホテル、そのスウィートルームにて。


「…………」

「おかりんっ、すごい豪華なホテルですなぁ~! これは一泊おかりんの年収の何年分? なんちって~!」


 俺とあかりはこのホテルにしばらく滞在することになっていた。

 すべてが終わるまで。


 あかりはホテルについてからずっとテンションマックスだ。

 だが……。


「あかり。おいで」

「どったの~? あ、もしかしてえっちしたいとか? もー! おかりんもほしがりさんだね~!」

「おいで」


 ハイテンションなあかりが俺の顔をじっと見てくる。

 俺は知ってる。この子は結構無理するタイプだって。


 人前だとあかるく振る舞おうとする子だって。

 今も……不安な気持ちを押し殺してるってな。


「俺の前でそんなふうに、無理しなくて良い。おいで」

「…………うん」


 一転して、あかりは俺の元へとやってきて、抱きついてくる。

 体が震えて、そして……冷たい。


 ストーカーが、かなり怖かったのだろう。


「……こわかった」

「だよな。ごめん」

「ううん……おかりんのせいじゃ………………ごめん」


 あかりは頭の良い子だ。

 彼女をストーキングしていたのは俺の関係者。


 俺のせいじゃない、といったらかえって俺に気を遣わせると思ったのだろう。

 だから謝ったんだ。


「ほんとに、怖かったんだ」

「そうだな……」

「……ねえ、おかりん」


 小さくあかりがつぶやく。


「……アタシのこと、慰めて? アタシが、大丈夫になるまで」


 涙を目に浮かべながら、あかりが言う。

 それは意図的に男を誘惑するような仕草ではなかった。


 体をふるわせ、よわよわしくそういう彼女からは、作為的なものを全く感じさせない。

 ……普段俺を誘惑しまくってる彼女が、ふとみせる、弱い部分。


 それが……どうしようもなくつやっぽかった。


「いいよ。おいで」

「…………うん」


 俺はあかりを連れベッドへといく。

 俺からこの子を連れて行くのは初めてかもしれない。


 端から見れば、ヤバい行為なのは承知してる。一花に、菜々子に、るしあに、みどり湖に……申し訳ない気持ちもあった。


 それでも……俺はあかりを抱いたのだった。

 

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