145話 木曽川、懲役90日の刑に処される
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
《木曽川視点》
「おら起きろ! 囚人番号930番!」
げしっ! と腹部に鈍い痛みが走る。
ゆっくりと木曽川は目を覚ます。
鋭い目つきの看守が自分を見下ろしていた。
「さっさと外に出ろ! 930番!」
「…………ちっ」
悪態をついてると、看守が木曽川の頬を遠慮なく殴ってきた。
「いってえ! なにすんだよ!」
「黙れ! さっさとたち、牢屋の外に出るんだ!」
「……ちっ、怒鳴らなくてもそうするよ!」
木曽川が看守の後について外に出る。
歩きながら、木曽川はここに至るまでの経緯を思い出していた。
……自分は、岡谷光彦に復讐するために動いていた。
しかし企みはばれてしまい、開田高原の手のものに捕まる。
その後、木曽川は裁判にかけられた。
終身刑かと思われた木曽川だったのだが……。
『木曽川クスオに、懲役90日の刑に処す』
……ひひっ、と木曽川は嗤う。
「死ぬまで牢屋の中だとおもったらよぉ、たった90日で外に出れるんだぁ……ひひひ! なんでか知らねーが、90日後には外に出れる!」
看守にせかされながら、木曽川は心の中ではまだ、復讐を誓っていた。
(覚えておけよ岡谷ぁ……! 90日後、牢屋から出たら、真っ先にてめえをぶち殺してやる!)
……しかし木曽川は、おろかだった。
懲役90日なんて判決、おかしいと、違和感を覚えなかったのだから。
「で、おれはこれからどーなんの?」
「出ろ」
「は?」
「出ろ!」
木曽川が連れてこられたのは、刑務所の屋上だ。
周りには、遮るものがない。
空を見上げると、太陽の光がさんさんと降り注いでいる。
立っているだけで汗をかいてきた。
「そいつを【あれ】に拘束しろ」
看守が部下に命令する。
木曽川は部下たちに掴まれると、屋上に設置してあった、【それ】のもとへ連れて行く。
「は、張り付けの十字架……」
まるで宗教画に出てくるかのような、十字架が設置されていた。
木曽川は十字架に手足を固定される。
「な、なんだよ……これから何するんだよ!? まさか火あぶり……とか?」
しかし看守は、にやぁ……と笑うだけだ。
「貴様を殺す、なんて安易な方法はとらない。あのお方はおまえに対して、たいそう……ご立腹だ。殺すなんて生ぬるい方法で、貴様を救いはしない」
……木曽川は内心首をかしげた。
(あのお方って、開田高原とかいうじじいだよな。ぬるい方法をとらないってわりに、懲役90日? ……どうなってる……?)
さすがに違和感を覚えた木曽川だったが……。
「さぁ、930番。貴様はこれから、この炎天下のなかで、耐えてもらぞ」
そう……ここは遮蔽物がないため、太陽光がもろに当たる。
じりじり……と日の光が木曽川の肌を焼いていく。
「はぁ……はぁ……あ、あちぃい……」
木曽川が顔を上げる。
柱時計は、まだ1時間もたっていないことが示されていた。
「これから貴様は、日没までずっとここだ」
「はあ……はあ……み、水ぅ……」
だが、看守たちはニヤニヤ笑うばかりで、水をくれない。
1時間……2時間が経過する……。
喉の渇きはとっくにピークを迎えている。
だが、水をくれない。
3時間……4時間……。
意識がもうろうとしてきた。肌が熱い、痛い……。
5時間……6時間……。
「あ………………う………………」
木曽川が耐えきれなくなり……気を失いかける。
バシャッ……!
「げほっ! ごほっ!」
「ほら、念願の水をくれてやったぞ」
顔に水をぶっかけられて、気絶させてくれなかったのだ。
「ちくしょ……何しやがる!」
「水をくれてやったのに、礼の一言もないのか。これはお仕置きが必要だなぁ」
言って、部下が前に出てくる。
その手にはスタンガンが握られていた。
ぎょっ、と木曽川が目をむく。
「お、おいやめろよ! 今水ぶっかけられた後なんだぞ!?」
「安心しろ。930番。死なない程度に、電圧は抑えられてる」
「いやだからって……! おいやめろ! やめろよぉお!」
だが、看守はスタンガンを躊躇なく、木曽川に押し当て、スイッチを押した。
「ぎゃぁああああああああああああああああああああああ!」
激しい電流が体を駆け巡る。
死ぬほどの痛みが彼を襲う。
「なんだ全然元気じゃないかぁ! それもう一発!」
「ぎゃあああああああああああああああああああ!」
結局日没まで、そうやって痛めつけられた。
木曽川は拘束を解かれると、牢屋にまたぶち込まれる。
「ちく……しょぉ……ちくしょぉお……」
どうしてこんな目に……と彼はつぶやく。
「だが……これであと、89日……。あと、89日経てば、ムショからでれる……」
木曽川は壁に近づいて、爪で【一】と、正の字をかく。
「あと89日の我慢だ……そしたら……ここをでて……まずはあの岡谷をぐちゃぐちゃに……」
がくん、と木曽川が気を失う。
懲役、残り89日。
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