140話 犯人は元妻、そして編集長
《岡谷Side》
俺は一花の弟に呼び出された。
現場へと向かうと……
「おー、岡谷さん! 捕まえましたぜぇ、ストーカーの犯人をぉ!」
犯人。
俺とあかりを、ストーキングしていたやつらが、そこに居た。
二人いて、どちらも女だった。
……だが、そのどちらにも、見覚えが無かった。
「あなたぁ……!」
「岡谷くぅうん!」
……俺を見て、そいつらは俺の名前を呼ぶ。
だが……。
「あの……どちら様ですか?」
俺から見ると、そいつらには、見覚えが無かった。
まず……俺を【あなた】と呼んだ女。
髪の毛がボサボサ。
体はガリガリで、眼下は落ちくぼんでいる。暗がりでそいつを見ると、まるでお化けかと思った。
そして……俺を岡谷くんと呼んだ女。
こちらはボロッボロのスーツを着てる。
こっちはかろうじて、見覚えが……有るような気がした。
「十二兼……編集長……?」
そう、俺の元職場、TAKANAWAの編集長、十二兼だ。
どうして、十二兼がここに……?
いや、ストーカーの犯人だって言っていた。
「十二兼……編集長……あんたが俺をストーキングしてたのか?」
「あ、あう……そ、そう……よ。で、でもぉ! 誤解しないでぇ! 別にあなたのことを、おとしめるつもりはなかったのぉ!」
十二兼が俺に詰め寄ろうとする。
すぐさま、三郎が引っ捕らえる。
「大人しくしなよ」
「は、離してぇ!」
ジタバタと暴れる十二兼……。
まさかこいつが犯人とは……。
っと、あとじゃあ、こっちのお化けは……?
「あなたぁ……ひさしぶりねえぇ……覚えてるぅ……? ミサエよぉ……」
「…………………………は?」
うそ……だろ?
ミサエ……?
ミサエだって!?
「おまえ……ほんとに……ミサエ……なのか?」
どう見ても、年齢は50……いや、80とかでも普通に通る。
そんな外見をしている。
これが、本当にあの(見た目だけは)美しかった……ミサエ……なのか……?
「はい、とゆーことで、犯人は岡谷さんの元妻ミサエと、元職場の上司、十二兼でしたー」
三郎が明るい調子で言う。
「で、どーするの、高原様……?」
振り返るとそこには、険しい表情をした、開田高原氏が立っていた。
「無論、彼奴らには地獄を見てもらうかの」