137話 優しい人
あかりにストーカーがいる。
警察に電話で相談してみた……が。
あかりが言うとおり、まともに取り合ってくれなかった。
民事不介入だとか。それと一番は、証拠が不足してるとのこと。
「ふぅ……」
ベランダで電話を終えて、戻ってくる。
「お、お姉……だいじょうぶだから……」
暫定カノジョたちには情報共有してる。
それを聞いた菜々子は、あかりをずっと抱きしめていた。
「……お姉ちゃんなのに、気づけなくて、ごめんねぇ」
どうやら菜々子はあかりに怖い思いをさせていたのに、気づけなかった自分を責めているようだ。
本当に優しい子だな。
でも、自分を責め続けるその姿は痛ましかった。
「菜々子。あまり自分を責めるな」
「でもっ! わたしは……お姉ちゃん……です……」
「妹のことを思いやる気持ちは立派だ。……でも、おまえが自分を責めて、傷付くたび、あかりもまた傷ついていることに、気づいてるか?」
「!?」
菜々子がそうであるように、あかりももまた、家族思いの優しい子なのだ。
自分のせいで菜々子が傷付いてるって知ったら、それがまた彼女を傷つけることになる。
あかりは俺を見て、小さく笑う。
声に出さないのは、それでまた、姉を傷つけるとわかってるからだ(認めることで)。
「あかりちゃん……ごめんねぇ」
「良いってば。お姉は大げさだなぁ。あかりちゃんちーっとも傷付いてませんけどっ」
いつもの調子であかりが言う。
でも俺も菜々子もわかっていた。あかりが無理して明るく振る舞っているってことに。
それでも、菜々子は頭が良いから、それ以上謝ることはしなかった。
優しい姉妹なのである。
「ううむ……許せん!」
気炎を上げたのは、るしあだった。
「ワタシの友達を傷つけるやつがいるだなんて! 絶対に許せないぞ!」
るしあ……。友達のために怒ってやれるなんて。この子も優しい子なんだよな。
なんだか俺の周りは、一花も含め、いいやつらばかりが集まっている気がする。
……ありがたいことだ。
「最終兵器を投入しよう」
「「さいしゅーへーき?」」
そのときだった。
PRRRRRRRRR♪
……俺のスマホに着信があった。
【開田高原】
るしあの祖父から、電話が掛かってきたのだ。
色々思うところがある。
が……無視するわけにはいかなかったので、電話に出た。
『わしじゃよ。出番かな?』