135話 俺を頼れ
※書籍化にともないタイトル変更になります
変更前)窓際編集とバカにされ、妻に浮気されたその日から、双子JKと同居することになった〜新しい職場と美少女達が家で待つ幸せな新生活を送ってるので、今更有能編集だったと気付いて謝られても相手にしません
変更後)窓際編集とバカにされた俺が、双子JKと同居することになった
「ストーカー……?」
喫茶あるくまの事務室にて。
あかりが、ストーカー被害にあってるかもしれない、と言ってきた。
「うん。なんか、最近誰かが、ずっと後から付いてきてる気がして……」
……あかりが不安そうな顔でうつむいてる。
いつもあかるく、元気な彼女が、こんな辛そうな表情をするなんて……。
なんてことだ。
大変な事態ではないか。
「あ、ごめんね。多分アタシの自意識過剰だとおもうから。気にしなくて良いよ」
「馬鹿野郎」
俺は、あかりのことを抱きしめていた。
彼女が不安なのを必死に隠して、普段通り振る舞おうとしてるのがわかったからだ。
抱きしめて、彼女が震えていることがわかった。
いつもぽかぽかしてる彼女の体が、氷のように冷たくなっていることも。
やっぱり不安だったのではないか。
「こういうときこそ、俺を頼れ」
「おかりん……でも、アタシは……」
……暫定彼女。
自分でそう言い出したくせに、こういうときは頼ろうとしないなんてな。
きっと心のどこかで、自分が本当の彼女ではないっていう意識があるのかもしれない。
それか、まあもっと単純に、俺に迷惑かけたくないって気持ちか。
でも、だ。
「俺はおまえの保護者役だ」
「っ!」
「俺を頼れ。な?」
「おかりん……」
ぐすっ、とあかりが鼻をすする。
あかりが俺に抱き返してくる。
「ほんとは……すっごく……こわかった……」
「…………」
俺はトンデモない馬鹿野郎だ。
自分のことばかり考えて、直ぐ近くで、困っている彼女のことを見過ごしていた。
本当にアホ極まる。
「あかり。俺がいる。だから安心してくれ」
俺の言葉に、あかりの体の震えが止まる。
ぎゅっ、と抱き返してくるあかりの体は、次第に、温かくなっていく。
俺の体温が、彼女を温めていく。
やがて、彼女が顔を上げる。
そこには、いつもの明るい笑顔のあかりがいた。
「うん。頼りにしてるよ、おかりんっ」