133話 気力
冬のボーナスをもらったあと、俺は自宅へ向かう。
考えるのは、クリスマスのこと。
もうすぐクリスマスだ。
去年までなら、何とか時間を作って、ミサエ(前妻)と過ごそうとした。
だがミサエは家族とクリスマスを過ごしたいからといって、俺との約束を反故にしていたっけ。
「……今にして思えば、不倫だったのかもな」
家族と過したいって……俺も家族じゃないのかよってさ。
振り返ってみれば、ミサエが浮気していた兆候はあったな……。
何故気づかなかったんだろうか。
ブラック企業に勤めてたからか……?
「…………」
ミサエと別れ、新しいホワイトな職場へと転職した。
美しい女性達に囲まれ、何不自由ない生活を送れている。
なんと満ち足りた生活を送っているのだろうか。
……そう、俺は今結構、現状に満足してしまっている。
特に、女周りに関して。
美女に囲まれ、メシを作ってもらい、そして体の関係も持っている。これ以上無い幸せである。
……だから、この関係から抜け出せないのだ。
「…………」
王子も、一花も前に進んでいる。
一花も俺と同じ場所にいるけど、彼女は『俺と結婚して二人で生きたい』という気持ちを強く持っていた。
現状を変えたい、という思いがある時点で俺より上だ。
……俺は、今この場から動く気力が沸いてこない。
去年の出来事が結構ショックだったのと……あとは、年のせいだろうか。
椅子に座ってしまうと、立ち上がるのに結構労力が要るように。
寒い日に、こたつから出て行けないように。
1歩前に出るには、かなりの力がいるのだ。
年を追うごとにその力が摩耗して行ってる気がする。
……もうアラサーの俺は、ミサエの一件もあって、すっかり立ち上がる気力が失せていた。
……このままじゃ駄目だとわかっている。
でも……立ち上がる気力が沸かない。
どうすればいいのだろうか。
……そう考えて、結局現状維持を選んでしまうのだ。
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