表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/180

129話 わたしが



 るしあがトイレから戻ってきた。


「取り乱してすまない……」

「いや……」


 王子の作品が売れてることを、るしあは凄く気にしてる様子だった。


「何を焦ってるんだ?」

「……ワタシは」


 るしあがうつむいて、体を震わせる。

 ぎゅっ、と唇を噛んだあと言う。


「ワタシは、売れたいんだ」

「作家なら皆そう思ってます」

「そういうことじゃなくて……。ワタシが売れることで、おかやがすごいやつなんだって、……ワタシが証明したかったんだ」


 るしあの言葉は、予想外のものだった。

 自分が売れて、その結果俺のことを、皆に知ってもらいたい……?


「おかやはすごい編集なのだ。でも編集のすごさは一般には伝わりにくい。おまえが凄いってことを知らしめるためには、作家が売れるしかない」


 確かにるしあの言ってることはわかる。

 編集は裏方だ。


 日の目を見ることは少ない。

 すごさが伝わらないというのは、確かに俺も思うこと。


「でも作品が売れたところで、それは作者が凄かったのだと思うぞ」

「……でも編集が居ないと本が売れない。すごいのは作家ではなく、凄い作品を書かせる編集なのだ」


 ……そう、思ってくれてるのか。

 作品が売れたら作家の手柄。そう思ってくれて全然いいのに。


 るしあの、編集の手柄と思ってくれる考え方は、普通に嬉しかった。


「……ワタシがやりたかったのだ。おかやはすごいんだって……。ワタシの作品が売れて……だから……悔しくて……」

「……そうだったのか。ありがとうな」


 俺は、幸せ者だ。

 王子を初め、いい作家の編集になれている。ほんとに、嬉しい。


 でもそれに甘えてはいけない。

 作家のためになるなら、たとえ、作家に嫌われようとも、きちんと意見を言うべきだ。


「でもなるしあ。だからと言って、今持ってる作品を投げ出して、新作を書くのはどうかと思うぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ