128話 焦る、るしあ
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
あくる日、俺は普段使っている喫茶店『喫茶あるくま』へとやってきていた。
今日は担当ラノベ作家、るしあとの打ち合わせのためだ。
彼女は窓際の席に座っていた。
いつも背筋をピンと伸ばしている彼女だが、うつむいて、ぎゅっと唇をかみしめている。
「先生、お待たせしました」
「おかや……」
待ち合わせの時間通りにきた。
るしあは早くついたみたいで、待たせてしまったようだ。そのことに怒ってる……とは思えない。このこは子供だが、しかしそんな些細なことで怒るほど、幼稚な性格をしていない。
となると……。
「何か、ラノベのことで悩み事でも?」
「……すごいな、おかやは。そんなことまでわかってしまうのだな」
「編集ですから。それで……?」
るしあはうなずいて、膝の上に載せていたカバンから、1冊の本を取り出した。
見慣れた装丁の本だった。
王子と作った本、【スーパードクターXX】だ。
王子の最新作にして、ありがたいことに、とても売れている本だ。
「読んだよ、おかや。とてもいい本だったよ……」
褒めているわりに、るしあが辛そうな顔をしてる。
「おかや……今の新作、売れてるかな?」
るしあの代表作、せんもし。
そのあとに、彼女は俺と新作を作って、うち(SR文庫)で出版した。
「ああ。かなり売れている。コミカライズも始まるし、さらに部数は増えるだろうな」
「……部数は、XXより、上になるか?」
るしあが売り上げを気にするなんて、珍しいな。
このこはあんまり、何部売れたとかきにしないタイプの作家だ(カミマツ先生に似てる)。
なのに、どうして今回だけ売り上げを気にするのだろう……?
「……すまない、売り上げのことを聞いて。答えられないよな、プライバシーに関わることだし」
「そうですね。おっしゃるとおりです。……どうしたんですか? 先生。部数のことなんて急に気にしたりして。今の新作はとても好調ですよ?」
ふるふる、とるしあが首を振る。
「でも……おまえが、白馬王子と一緒に作った本の方が、売れてる」
「先生……」
「白馬先生の努力は知ってる。高い執筆力があることも承知してる。けど……あの人とワタシ、条件は一緒だ。おまえという、同じ編集と一緒に本を作った。でも……彼の本の方が売れている。……それが悔しい」
確かに王子もるしあの作品も、同じレーベル、同じ編集と作った本。
それで向こうの方が部数が上となると、自分の能力を疑いたくなる気持ちは、わからないでもない。
「先生……。いや、るしあ。他人の部数なんて、おまえは気にしなくて良い」
るしあは天才型の作家だ。
部数や流行など気にしないで、売れる作品が描けるタイプである(自分の描きたい物を描いてヒットできるタイプ)。
王子はその真逆……努力型。計算型だった。XXは売りたい物を描いてヒットした。
「るしあは努力型は向かない。好きなことを、好きなように描けば良いんだ。それを読者は望んでいる」
「おかやもか?」
「当たり前じゃあないか。何をそんな気にしてるんだ?」
「…………」
ぽたぽた……とるしあが涙を流し出す。
俺はとっさにハンカチを取り出して、彼女に渡した。
どうしたのだろう、ここまで彼女が取り乱すだなんて……。
「すまない……おかや……ちょっと失礼する」
「ああ……」
るしあは席を立ち、トイレへと向かう。
……一体どうしてしまったんだろうか、るしあのやつ。
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