116話 翌朝
俺はJK姉菜々子の付き添いで、北海道に来ている。
ホテルでひと悶着があった翌朝。
ビュッフェスタイルの朝食を、ホテルの最上階のレストランでとっているところだ。
「ふふんふーん♪」
テーブルを囲う俺、菜々子、妹JKあかり、義妹みどり湖そしてラノベ作家るしあ。
あかりはとても上機嫌で、パンにバターを塗っている。
「あかり、なんかご機嫌じゃん」
みどり湖が眠そうにしながら尋ねる。昔からこの子は低血圧で、朝が苦手なのだ。
「べっつにーん♪」
「……まさか、お兄と?」
「さ~~~~~? どうでしょ~~~~~?」
昨晩は、俺とあかりが一緒に寝て、それ以外のメンツはおのおの、別の部屋で寝ていた。
あかりは大人ぶりたいのか、意味深な笑みを浮かべる。やれやれ。子供だな。
「るしあ、どう思う?」
「どっちでもいいんじゃないか」
るしあは優雅に紅茶をすする。さすが年長者、余裕が見て取れた。
……と思ったのだが、中身が減ってないので、多分気になってるんだろう。年上っていってもあかりたちより1個しか違わないから、こっちも子供なんだな。
「とかって~。気になってるくせに? あかりちゃんが、おかりんとワンナイト過ごしたのが~」
「ぐぬ……うぉっほん! その、ワタシは全然気にはなってないし、おかやがどの女と、寝たとしても、許せる度量があるのだが……おかやは、あかりのような子がいいのか?」
うるんだ眼で俺を見てくるるしあ。やっぱりに気にしてる様子だ。そりゃそうだ。
「別に、るしあも魅力的だよ」
「し、しかしワタシは自慢ではないが、胸もないし、あかりのように健康的な身体でもないから……」
「そんなの気にしてないから。おまえと一緒にいるのは、俺の意思だから」
「お、おかや……!」
るしあが嬉しそうに笑う。するとあかりが不機嫌そうになる。みどり湖も無言で怒ってる。一人の男に複数の女。ラノベではよくあるが、ここは現実だ。
俺のやってることが世間的におかしいことは十二分に承知している。けど……俺は彼女らを拒むことができないし、誰か一人選ぶことは……できない。
どこかこの、異常な空間に心地よさを覚える自分がいる。
「ところでおかりんは、今日はなにするの?」
「菜々子と北大のオープンキャンパスに参加するんだよ」
「へぇー……」
へえ、って。あかりは理解してなかったのか……。
「その間、あたしらどこで待ってる? 観光でもする?」
「移動が電車ってなるとめんどくね? あんまり電車って本数ないみたいだし」
俺の実家の長野もそうなんだが、田舎は車での移動がメインのため、あまり電車の便がよくないのだ。
「そこは多分大丈夫だ」
「? おかりんどういうこと?」
と、そのときである。
「おか……光彦くん!」
ぶんぶんと手を振りながら、こちらにかけてくる美女が一名。
髪の毛を下ろした、黒髪の美女、贄川一花だ。
「遅れてごめんなさい」
「いや、別に」
一花が昨日の夜、ここに来たいと行ってきたのだ。
俺は菜々子と用事があるとつたえたら、子供らの面倒を見てくれると自ら進んで勝ってでてくれたのである。
「一花。おまえ……仕事は?」
「お嬢様。大丈夫です、有給休暇を取って参りました」
「休みをわざわざ取ってまで……まあ仲間はずれはいやだものな」
るしあがそう言うと、同意するように一花がうなずくのだった。