1話 妻に浮気された日、双子JKとの出会い
新連載です!よろしくお願いします!
「岡谷さんって、窓際編集って呼ばれてるの知ってるっすかぁ?」
19時頃。
俺がデスクで仕事をしていると、新人編集の木曽川が、俺にそう言ってきた。
ここは大手出版社、のおもにライトノベルを取り扱っている編集部。
この間興行収入600億円を突破したラノベ原作の映画【デジタルマスターズ】を出版しているレーベルだ。
「まどぎわへんしゅう……」
「あんれぇ~。知らないんすかぁ~?」
木曽川、今年新卒で入ってきた若い編集だ。
金髪のいかにもチャラそうな見た目の男。
一方で俺は29歳、ボサがみでヒョロイくたびれたおっさんだ。
なるほど、窓際族ならぬ、窓際編集と言われても、仕方ない見た目してるだろう。
「みんな言ってますよ。いつも窓際に座って、何してるのかわからないって」
「はぁ……そうかい」
いちおう仕事してるんだけど、周りには伝わってないようだ。
「今日もぼけーっと座って、なにしてるんすか? ねえ、帰らないんすかぁ?」
「まあね」
俺は今日、【るしあ】先生が原稿をあげてくるのを、待つ必要があった。
今日が校了日だというのに、あの女……じゃない、るしあ先生はまだ原稿を出してこない。まったく……。
「無駄な残業乙ぅ~」
「無駄じゃないんだが……君はもうあがるのかい?」
「そっす! これから彼女とデートっすよぉ。へへ、ちょーぜつ美人でさぁ。写真見ます?」
「いや……いいよ。彼女とお幸せに」
木曽川は俺を散々馬鹿にして気分が良くなったのか、晴れ晴れとした表情で帰っていく。
「あーもしもし、ミサエさん? ん、おれおれぇ。うん、もう終わったからぁ、そっちいくねぇ~」
木曽川が帰っていく。
ん? ミサエ……?
偶然にも俺の妻も、ミサエって名前なのだが……。
まあ、偶然だろう。
ミサエなんて女性の名前、ありふれているからな。
それにミサエは既婚者、というか俺の嫁だ。
木曽川が付き合うわけがない……。まあ美人なのは確かだけどな……。
「今日は帰れないって、メールしとくか」
俺はスマホの電源を入れて、妻に帰りが遅れることを、LINEする。
すぐに既読にはなった。
だが……返事はなかった。
「はぁ……」
妻と俺との関係は、最近特に冷え切っている。
声をかけても無視される事も多いし、弁当も最近は作ってくれない。
「…………」
最初の頃は優しかったミサエとの関係も、今ではすっかり冷え切っている。
あいつが俺を、ATMくらいにしか思ってないのは、知っている。
何をしても感謝してくれない、残業で遅くなると言ってもお疲れ様の一言も言ってくれない。
「なんで俺、結婚したんだろうな……」
★
結局、すべてが終わったのは、昼の12時ちょっと前のことだった。
るしあ先生が原稿を仕上げてきたのが、明け方近く。
そこから校了作業をして、諸々に頭を下げて、すべてが終わって……今に至る。
「疲れた……」
昨日の昼から編集部に居るから、24時間働いていたことになる。
なんてこった。道理で疲れたわけだ……。
俺はパソコンの電源を落として編集部を後にする。
出版社の人間はまだ誰も出社してきてない。
ほかはどうか知らんが、うちの編集たちは、午後から出社するのがザラだ。
俺は編集部を後にして自宅に向かう。
今日は疲れた。
帰ったらすぐに寝たい……。
山手線と地下鉄を乗り継いで、俺は自宅へと戻ってくる。
都内にあるマンション。
ここも結構高かったなとふと思った。
エレベーターに乗って自分の部屋へと向かう。
5階の一番奥の部屋。
「そういえばミサエに帰るってLINEしてなかったな……」
この時間だと家に居るだろう。
あいつは専業主婦だからな。
俺は自宅の前までやってきて、ドアを開けようとする……。
ガチャッ……!
「……あれ? 鍵掛かってる?」
家にミサエが居るって言うのに、なぜ鍵が掛かってるんだろうか。
買い物にでも行ってるのだろうか。
多分そうだろうな。
俺はカバンから家の鍵を取り出して開錠。
ドアを開けて中に入る……。
「…………」
疲れすぎてて、寝不足で……俺は気づけなかった。
玄関にミサエの靴と……そして、男ものの革靴があることに。
俺は廊下を歩いて奥へと向かう。
リビングスペースへとやってくる。
水でも飲んで寝ようかと思ったそのときだ。
「あ、あなた……」
「え? ……ミサエ?」
振り返るとそこには、青い顔をしたオレの妻、岡谷ミサエがいた。
美人だ。ショートカットの艶やかな黒髪に、白い肌と。
地味な俺には似合わないと、散々他人から言われ続けた……。
そんな美人妻が、顔面蒼白で立ってる。
「な、なんであなた、ここにいるの……?」
「なんでって……昨日LINEしただろ。残業。終わって帰ってきたんだよ」
「そ、そう……」
なんだか知らんが、ミサエはすごく動揺しているようだった。
何度もチラチラ、と隣の寝室を見ている。
「俺、今日はもう寝るから……」
「ま、待って……!」
妻が俺を通せんぼしてくる。
寝室に、入れまいとしている……?
「なんだよ?」
「ちょっと……出かけない?」
「は? どうして……」
「だから……その……」
と、そのときだった。
がらっ、と奥の寝室のふすまが開いた。
中から誰かが出てきて、ドンッ、と俺を突き飛ばす。
「いっつ……だれだ……って、おまえ! 木曽川!?」
そう……なぜか俺の後輩編集、木曽川が、俺の家の寝室にいたのだ。
「なんで……」
「チッ……!」
木曽川は舌打ちをすると、全速力で逃げていく。
「待って……!」
「あ、おい!」
ミサエは木曽川の後を追いかけていく。
「待てよミサエ! どういうことだよ!」
だが俺の呼びかけにも応じず、ミサエは出て行った。
後には俺だけが残される。
「なんだよ……なんなんだよ……?」
……だが俺の中には一つの明快な答えが浮かんでいた。
昨日、木曽川は彼女とデートといっていた。
相手はミサエ……。
そして……俺の家に、木曽川と妻のミサエがいた。
「…………」
ふらふらと立ち上がり、寝室を見やる。
布団が敷かれていて……そこには使い終わった避妊具などがおいてあった。
「嘘だろ……」
俺は、遅まきながら状況を理解した。
つまり……。ミサエは……。
俺の妻は……。
「若い編集と、浮気してやがったんだ……くそ……チクショウ!」
★
……気づくと日が暮れていた。
俺はソファに仰向けに寝ている。
……あの後、何度もミサエに電話をした。
だが音信不通だった。
ついには着信拒否にまでされてしまった。
「くそ……」
俺ではなく、ミサエは木曽川を、若い男を選んだと言うことだ。
なんてことだ……最悪だ。
俺は、何のために仕事してたんだよ……。
「…………」
思い返せば、前兆はあった。
弁当を作ってくれなくなったこと。
素っ気ない態度をとってくるようになったこと。
休日になると、やたらと大学時代の友達と会っていたな……。
「アホらしい……ほんと……馬鹿馬鹿しい……」
妻が男と遊んでいる間、俺はせっせと仕事していたわけだ。
なんだか怒りを通り越して、呆れてしまった。
ミサエへの思いが、一気に冷めていく。
「これから……どうするかな……」
今はミサエのことなんてどうでもいい。
好きにしたら良い。
よりを戻す気も今更ない。
「……とりあえず、飯でも食うか」
と言っても飯を作る気になれない。
夜帰ってくると、最近はいつもコンビニかカップ麺を食べていた。
夕飯を作ってくれなくなったのもまた、浮気が原因だったのかな……。
「……外食でもするかな」
俺はサイフと鍵を持って、部屋を出る。
と、そのときだった……。
「……あ」
「え……?」
俺の家の前に、女の子が座っていたのだ。
まごう事なき美少女だ。
艶やかな長い黒髪に、目を見張るほどの巨乳。
ブレザータイプの制服を着ている……。
「…………」
じわ、と女の子が目に涙を浮かべる。
急に泣き出した。
いや、なんだ、どういう状況だこれ……?
「あー! お姉を泣かしたー!」
エレベーターの方から、またも女の子の声がした。
そっちを見ると……これまた美少女JKがいた。
ウェーブがかった金髪を、シュシュでまとめて、サイドテールにしている。
こちらはブレザーを着ておらず、カーディガンを腰に巻いていた。
胸元のシャツを大きく開けて……ザ・ギャルって感じ。
「お姉……?」
「も~だめじゃんオジサン。お姉泣かしちゃ」
「いや……俺は別に……」
こいつら、なんなんだ……?
「……違うよ。あかりちゃん。私が勝手に……感極まっちゃって」
「あー、そっか。運命の人と再会だもんね。わかるわー」
……俺だけが理解できんのだが。
「あ、そうだ。本題本題。ね、オジサン?」
金髪のギャルが、ニコッと笑って、俺に言った。
「今夜あたしら泊めてくんない? えっちなことしても……いいからさっ♡」
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