06 前兆
七話です、よろしくお願いします
純白の建物の中に、魚の特徴を持つ男がいた………【水生人】と呼ばれる種族である。
その男は体が大きく、4メートル程の体をしている。
イルカのような鮫のような顔を持つその水生人はラルフ王だ。
トゥービックネイションの王であり、ここ何百年とこの国を治めている賢王である。
この純白の建物はいわゆる王宮である。
しかし、なにせラルフ王が大きく、彼は睡眠を取らないので宮殿に壁はなく、柱と屋根だけの簡素なものとなっている。
最も装飾は施してあるが、派手すぎず素朴なイメージを受ける。
「今日も平和であるな…………」
「えぇ、そうでございますね」
側近らしき人間とラルフ王が他愛もない話をしていると、王宮に1人の兵士が駆け込んできた。
かなり息を切らしており、必死であることが伺える。
「貴様、王宮でやかましい音をたてるな!」
兵士の鎧の金属音に側近は怒りを示すが、ラルフ王は”よい”といって大きな手で兵士を支える。
「何があったのだ。話してみよ」
「は、はい!これを!」
兵士はとある紙を差し出す。
報告書のようだ。
そしてラルフ王はその報告書を読んで大きく目を開く。
「大義であった、ゆっくりと休め」
ラルフ王は兵士にそう勧め、退出させる。
「王よ、何かあったのですか?」
側近の1人がそう問いかける。
ラルフ王は厳かに言い放った。
「七つの大罪が動きだした」
「世界が混乱に堕ちる」
ラルフ王の握りしめた報告書には色欲の名がのっていた。
「…………七つの大罪?」
「ゑ、まさかお前、知らねぇの?って記憶吹き飛んでんだったな」
クルトはヤレヤレとでも言うように首を振る
「七つの大罪ってのはな?憤怒、強欲、嫉妬、怠情、暴食、傲慢、色欲からなるようは人の悪いとこ詰めたようなモンなんだ」
「それが……どうしたの?」
「人の負の感情、つまり悪い事考えていると寄ってくるんだ」
「………なにが?」
「七つの大罪の化身がな」
「それで………?」
「そいつら滅茶苦茶強くてな?馬鹿みてぇなパワー持ってっから。気を付けるんだぜ?って事だ」
「ん………分かった…けど、どうしてそんなこと、今話したの………?」
「もう少しで着くとはいえ暇だからだ」
「………やっぱり……」
呆れたようにフィムロがため息をつく。
「......て........けて....」
「ん………クルト、何か言った…………?」
「ん?いや、なんも言ってないぜ?」
フィムロには確かに聞こえた。
誰かが助けを求めている。
フィムロは目を閉じ、耳をすませ、どこから聞こえてくるのかを感じた。
「……………こっちだ…………」
「え!?どこ行くんだ!?」
フィムロは走っていった。
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