05 怖いものは怖い
六話です、よろしくお願いします
お化けとは、非物質的な生体であり、精神体が半魔族化したものである。
かといってそこまで恐ろしい存在でもなく、むしろ冒険者にとってかっこうのエサであるのだが………
「フィムロォ…………」
クルトは絶賛ビビっている。
フィムロを盾にするようにしてビクビク震えている。
先程から葉っぱが揺れる度にびくついている。
「クルト……もしかして」
「いやいやいや!!べっ別に!怖いとか!そんなっ、そんなんじゃねぇし!!」
「………まだ何も言ってない………」
「だだだ、だっ大丈夫だ!問題無い!!」
「だから……まだ何も言ってない…………?」
「?どうしたフィムロ」
「──閃──」
フィムロが腰の剣を抜いてそう呟き、剣を真横に切り払う。
そして、そこには“お化け”がいた。
白い布のようなものに目と口と手がついた典型的なお化けだ。
区分としては霊魂を束ねるチーフゴーストと呼ばれるものだ。
「ぎゃああああ!!」
耳と尻尾をピンと立てたクルトが若干涙目になりながら驚く。
「………………」
「せっ戦闘準備!!ビビってねぇからな!!」
「………だから何も訊いてない……」
二人にチーフゴーストが襲い掛かる。
フィムロがチーフゴーストに向かって剣を突き立てた。
だがチーフゴーストは煙のように消えてしまった。
「く、攻撃が効かない...」
「ど、どこ行ったんだ...」
クルトの肩を誰かがトントンと叩く。
「フィ、フィムロ、俺別にビビってなんかな....」
クルトがヒィ…………!?と言う声が聞こえる。
クルトの後ろにはチーフゴーストがいた。
「そこだっ!!」
もう一度剣を突き立てたが、やはり消えてしまう。
「どうすれば…どうすれば倒せる...あっ!あれなら…」
チーフゴーストは呪いや怨念を強く持つ魔物なので光りのような輝いたものに弱く、先程剣の反射光に嫌そうな反応をしていた。
「クルト、チーフゴーストを引き付けて!!」
「んな事言われなくても勝手に近づいて来てる〜!!わぁぁぁぁぁぁ〜!!」
フィムロは自分の剣を目の前に持ってくると目を閉じて息をゆっくりと吐く。
「ハァァ……………」
剣に光が集まっていく。
「クルト!!」
フィムロがそう呼ぶと剣を構える。
「あ、ああ!!たすけてぇぇぇ~」
フィムロはもう既に泣いているクルトを追いかけるチーフゴースト目掛けて一気に飛び出す。
「──閃光斬り───」
フィムロがそう呟くと、辺りが光に包まれた。
あちこちで悲鳴が聞こえる。
おそらく、チーフゴーストの仲間だろう。
光が収まると、ただ暗闇だった森は光が射し込む、綺麗な森へと変化した。
「フィムロォォォ!!」
「ん………?わっ………!」
クルトが顔をすりすりしてくる。
クルトの毛がくすぐったいのかフィムロは目を細める。
「………進めるようになったし、行こうか………」
「うっし、行くぞぉ〜!俺が1番だぁ〜!!」
すっかり元気になったクルトは進行方向を指差すと走り出す。
「相変わらず早いね」とフィムロは苦笑いして追いかけるように走り出す。
そして─
1人の男が綺麗になった森の木の影から現れる。
「ほう、もうあの力を使えるとは....」
男は魔法陣が書いてある丸い機械のようなものを取り出すと、それを開き、話し始めた。
「奴らは閃光を使えるようになりました。現在、トゥービックネイションに向かっている模様です。…………はい。…………では。」
そう言うと、男は機械を閉じた。
男はククク、ハハハ………と言いながら歩いていった………
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