03 独白と記憶
四話です。
少々無理な展開になっていますが、ご了承ください。
ごくり………とクルトは息を飲んだ。
目の前で格好の餌が倒れている…………
「………」
クルトは腰に着けていたタガーに手をかける。
「………あの時本当は仕留めようと思ったんだがな………」
クルトは溜め息を付くと腰を下ろす。
「………記憶が無い………か」
「俺の警戒のしすぎだったか」
クルトはフィムロの肩を担ぎ、近くにあった藁の上に寝かせる。
「本当は掟なんてお前を殺せばいつでも解消出来る」
「そんな考えも浮かばないとは………記憶が無いからか、ただのお人好しか………」
「………見極めるぜ、お前のことを」
ポツリと呟いたクルトの独白は誰にも聞かれなかった。
「.....?ここは.....?」
フィムロの周りは燃え盛っている。
人々の悲鳴、建物が崩れる音が聞こえる。
「...!あれは....!」
5歳くらいの子供だろうか。
お母さん、お母さんと叫んでいる。
フィムロにはよくわかった。
あの子どもは自分だ。
これは自分の記憶の中。
何故その子どもが自分と分かるのか?
何故自分は叫んでいるのか?
それは今のフィムロには全く分からなかった。
ただ一つ分かることは、フィムロの心に揺らぎが生じたことだけ。
「....ロ、........ムロ、......フィムロ...フィムロ!!」
「この声は…」
クルトだ。自分を読んでいる。周りが明るくなっていく…………
「フィムロ!!おい、大丈夫か!!」
「うっ、うん...」
フィムロは気を失っていた時にみたものをクルトに話した。
「ふむ、子供の頃の記憶がまだ残っているのかもな」
「でもなんで気を失ったのかな……」
「きっと頭の中にある記憶が無理矢理呼び覚まされたのだろうな。それに耐えきれなかった頭がパンクしたんだろう」
クルトはそう言うとフィムロの首からぶら下がるペンダントに指を差した
「お前、もしかしてこいつも………」
「うん……気付いたら持ってた。なんか懐かしい気もするんだけど、決して開かないんだ………」
うーんとクルトは首を捻る
「もしかしたらそいつも記憶を呼び覚ますきっかけになるかもしれないな。」
クルトは溜息を一つつき。
「よし!俺はお前の記憶が戻るまで共に行動しようと思うがどうだ?」
「記憶……手伝ってくれるの?」
「ああ、良いか?」
「ん……よろしく」
そうフィムロが言うと、
クルトは笑みを浮かべ
「ああ!よろしくな!!」
二人の姿を朝日が
眩しく照らしていた。
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