01 終わりの始まり
この作品は友人のぐんぐにる(仮名)と書いたものです。
2人の作風は全然違うので、僕が調整をしています。
多少作風が変わることがあると思いますが、愛嬌として捉えてください(笑)
二話です。よろしくお願いします
「₳₶₶₹$₹$₹¢¢₲₹¢¢₩」
土と岩で出来た巨人、グラウンド・ゴーレムは赤い目をフィムロ達に合わせ、なにか喋っている。
グラウンド・ゴーレムが奇怪な音を出しながらフィムロ達に向かってパンチを繰り出す。
人の4倍はありそうなパンチはかなりの力がかかっていて、その迫り来る拳をひと溜まりもなさそうなのはクルトにもすぐ分かった。
「お、おい!どうするんだ!逃げるか?!」
焦るクルトとは違いフィムロは落ち着いていた。
いや、感情が抜け落ちていた。
「……………ここは…………僕に任せて」
フィムロはそれだけを呟くと腰に下げた剣の柄を掴み、銀色の剣を抜く。
それを正眼に構えてグラウンド・ゴーレムの拳をじっと見つめる。
「馬鹿!何やってんだ!早くにげ─────」
クルトがそこまで言ったときだった。
ズバン!とあり得ない程の轟音が響き、グラウンド・ゴーレムの体が真っ二つに割れる。
フィムロが剣で切り捨てたのだ。
クルトは思わぬ出来事に目を見開き、唖然としている。
「お、おい、何をやったんだ?」
フィムロはクルトの質問に答えずにグラウンド・ゴーレムの残骸を指差す。
「………あいつ、何百万回でも復活する………」
「先に言えよぉ!?」
クルトのツッコミを待たずにグラウンド・ゴーレムは復活する。
かなり怒っているのか身体中から湯気が上っている。
「…………どうしよう」
「またさっきみたいに斬れないのか?」
「………対策されてる………多分次はあれ以上の………威力が………必要」
たどたどしくフィムロがそう話す。
クルトはそれを見て頭をかきむしると、フィムロに手を差し出す。
「ん!」
「………?」
差し出された手を見てフィムロはきょとんと首を傾げる。
「俺がお前の仲間になる!獣人には掟というか礼儀があってな、一緒に戦う仲間とは握手しなきゃならないんだ」
フィムロはあまりよく分かっていなさそうな顔をしたが、無表情のまま手を握る。
「よぉし、これで俺たちは仲間だ!良いな?」
「なか………ま」
「俺がアイツの腕を打ち上げる、そこに全力の一撃を入れてくれ!アイツが復活するなら復活しなくなるようなところを見つけようぜ!」
「ん」
タガーを取り出しながらそう言うクルトにフィムロは頷く。
「へへ、意外と反応してくれんじゃねぇか」
クルトはそう笑うと、一気に地を蹴った。
獣人の身体能力は各種族の中でも抜きん出ている。
20メートルはあった距離を一瞬で詰め、下からタガーを振り上げると、腕を弾かれたグラウンド・ゴーレムがよろける。
「………!」
それを見たフィムロの頭に数多の情報が駆け巡る。
それが何か分からないが、フィムロの意思に反して体が勝手に動き出す。
グラウンド・ゴーレムに向かって走り大きく跳躍すると、フィムロは上段に剣を構える。
──土殺し──
フィムロはそう呟くと剣をグラウンド・ゴーレムに向かって振り下ろす。
スパンッ!と軽い音がなる。
「◢₳₲₳₲₳₹₳₹◑◑₹◑」
グラウンド・ゴーレムは何かを話しながらフィムロを掴もうと手を伸ばすが、手が頭に近づいた時に、全身に亀裂が入る。
「₲₳₳₲₲☆₩¢¢◥!!!!」
そして、何かを発しながらグラウンド・ゴーレムは細切れになって崩れていった。
復活する予兆はない。
「お前………本当に何者なんだ?さっきの技はなんだ?!」
「…………分からない、頭に浮かんだ。なにか忘れたものがあるような……………そんな………感じ」
「お前もしかして記憶喪失か?」
「………記憶………喪失?」
「おう、何らかの衝撃で前の記憶が失くなっちまったんだ。さっきの技はちょっと記憶が戻ったんだろ」
「そうなんだ…よく…………記憶喪失だと…………分かったね」
「一応、戦闘に必要な知識として医学は履修してるからな」
「そうなんだ…………じゃあね」
一通り話し終えたフィムロは背中を向けて歩き出す。
「おう!じゃあな!」
あまりにも自然な流れだったので、クルトは思わず手を振る。
「って!!ちょっと待てーい!」
クルトが猛スピードでフィムロの前に回り込む。
「お前これからどうするんだよ!記憶喪失なのに、旅してんのか!?」
「………うん」
「うん、じゃねぇよ!………はぁ、よくこれまで生きて来られたな」
クルトはタガーを腰のホルダーにしまうと、呆れたようにため息をついて、フィムロにまた手を差し出す。
「俺はお前に着いていくことにした」
「………え?」
「記憶喪失のお前を放ってはおけねぇ、俺が付いてやるよ」
何故か上から目線のクルト。
恐らく照れ隠しなのだろう。
「………ん、分かった」
「おう、よろしく」
2人は再び握手をする。
落ちかけている日の光が2人を照らす。
この日、フィムロとクルトは仲間になったのだ。
この時2人は知らなかった。
この握手が全ての命運を変えた事を。
2人は知らなかった。
この世界に異変が起こっていたことを。
世界は知らなかった。
既に始まっていたことを。
コメント、評価等々気兼ねなく送ってくださると幸いです