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チビ魔王様と狂暴女神にクリソツなネオ魔王様、

ロージアとライアンはオネェに滅ぼされた村を出た後、街道を逸れて道なき道をしばらく歩いてたいたのだが、雑木林の中で立ち尽くす様にロージアが足を止めた。


「…………うるっさい!!どんぶりオカマのオッサン!!うるさい!!ずっとペラペラペラペラ!!ライアンに話し掛けてんじゃないよ!うるさいんだよ!!」


「あらやだ!恋バナじゃないのよ!だって気になるのですもの!!この、カッコいい男の子が、あんたの事を好きだって顔をするから!!オネェさん協力してあげたいじゃない!?」


ロージアは、触手に乗せ風船の様にプカプカ宙に浮かせたどんぶりオネェを自身の目の前に運ばせると、思い切り睨み付けた。


「あんただと?魔王の僕をあんた呼ばわりするの?それに、余計な御世話なんだよ!!眷族の人間ごとき、魔王の僕が相手をするハズが無いだろう!!愚か者め!!」


「……あの……ロージア様、どんぶりの意味は分からないのですが、そのプカプカ浮かせた頭のチョン切れたオッサンですが……そのまま連れ歩く訳にはいきませんよ?」


ライアンの言葉にオネェを睨み付けていたロージアが「あ、やはり、こちらの世界では「どんぶり」は通じて無かったのか」と思ったりする。

そしてライアンの言う様に、確かにこのままでは…と考える。


「犬に擬態させて、引き摺って歩くか。……それもめんどくさいなぁ……」


「い、いっそ殺しなさいよ!あたしも女よ!その位の覚悟は出来ていてよ!?こんな姿で生かされているよりは…!」


女じゃねーし!!それに、そんな覚悟は必要無い。

生かすも殺すも、僕が決める。

相手の感情や覚悟も命乞いも、まったく関係無い。


「カッコいい事を言ってるつもりなの?ダサっ!お前を生かしているのは、僕にとってそうする必要があるからだよ。お前の覚悟なんてどーでもいーんだよ。」


とは言え、普通の人間として目立つ事無く旅を続けたい自分としては、確かに触手を出したままで居る訳にもいかずに、どうしたもんかと……どうしたもんか……どうし……………




「何よ、オモシロきたねぇオッサン連れてんじゃないの!」


背後から聞こえた声に慌てて振り返れば、雑木林の中で腕を組んでふんぞり返るディアーナがライアンの隣に立っていた。


「………は?ディアーナ…?何で、ここに…」

「ヒィ!ま、魔王様!!も、申し訳ございません!!あ、あたし…!」


ロージアの言葉を遮るように、どんぶりオネェが悲鳴に近い声をあげる。

どんぶりオネェはいきなり現れたディアーナを魔王だと思っているようで、半分しかない顔を真っ青にして触手にまで震動が伝わる程に震えている。


「私?ライアンが連れて来たのよ。転移魔法で迎えに来て一瞬でコチラにね。」


どんぶりオネェの処遇について、頭の悪いライアンは考えるのを放棄してディアーナを頼った……のは分かるけど、僕の後ろをついて歩いていた途中でディアーナのもとに行き、一瞬で連れて来てしまったと。


馬鹿じゃないの!?レオンハルトどうすんだよ!!置いて来ちゃって!!

アイツがディアーナを目の前で拉致されて黙ってるワケ無いじゃん!!


「ま、魔王様……じゃないの?そっくりだけど女!?だ、誰よ!お前は!!」


僕とライアンが「げっ!!」という顔で同時にどんぶりオネェを見る。


「……お前だぁ?きたねぇオッサンが、この私をお前と呼ぶの?」


口角を上げ不敵な笑みを浮かべつつ、ドスの効いた声でオネェに尋ねるディアーナ。

こいつは今、言ってはいけない事を言った。

ディアーナとレオンハルト。

この馬鹿夫婦だけは、お前と呼んではいけない。


「おらぁ!オッサン!歯ぁ食いしばれ!!」


「ディアーナ!!だ、駄目だよ!粉砕したりしないで!!こいつは偽魔王に繋がる手掛かりなんだからぁ!」


慌てて止めようとする僕とライアンの前で、危険な笑顔を浮かべたディアーナが腕を大きく振りかぶった。




「お帰り、ディアーナ。面白いモノ見れたか?」


ディアーナの帰りを待っていたレオンハルトの元にライアンの転移魔法により送って貰ったディアーナは、目を輝かせて両手に拳を握って何度も頷いた。


「キモチ悪いオカマの顔だけのが居た!私を魔王様って呼んでお前って呼んだ!顔だけだったの!オッサンがキモチ悪いのが!」


興奮し過ぎて要領を得ないディアーナの説明を優しい笑顔で聞くレオンハルトは、飛び付くように抱き付いて来たディアーナの身体を抱き止める。


「そうか、楽しかったのなら良かった。で、これどうする?」


レオンハルトの足元には、累々と積み上げられた黒いローブを身に纏う男達の死体があった。


「またなのぉ?レオンがプチったんじゃないわよね?一時間程前の私がライアンに呼ばれた時は、まだ生きてたじゃん。」


「ああ、まただな。崇拝する魔王とやらについて尋ねようとしたら、全員心臓発作みたいので勝手に死んだ。こいつらの崇拝する魔王とやらは、えらくビビりだよな。情報漏らされる前に信者を死なせてしまうとか。」


「……それ、ネオ魔王の仕業じゃないかも知れない。私似の美形ネオ魔王の仕業じゃないかも。」


「……そうか、ディアーナはソイツに、ネオ魔王と名付けたんだな。しかも美形付けて言い直したな。自分に似てるからって、わざわざ……」


レオンハルトがディアーナから目線を逸らして小声で呟いた。




「まさか、こんな使い方出来るとは知らなかったよ。僕の触手。」


ロージアは感心した様にどんぶりオネェを見る。


今のどんぶりオネェは長いローブを纏った魔道士の様な姿をしている。


「ロージア様の触手、切り離して使えるんですね。……何だかタコみたいになってますけど。」


ライアンがどんぶりオネェの身に着けたローブを捲って中を見れば、首から下にはロージアの触手がタコ足の様に広がり、オネェは自立して歩いているように見える様になった。


ロージアによって切り取られた頭半分はディアーナが持って来た真っ赤なアフロヘアーのヅラを被されている。


「……ディアーナの過去、香月の記憶から出して見た、カミナリ様を思い出すよ。何か、そんなアフロだった。で、首から下は火星人みたいだね。」


カミナリ様も火星人も分からないライアンは、微笑んではいるが目が死んでいる。ロージアの言う事が理解出来ない。


「……あたし、ビックリしたわよ……本当に魔王様そっくりなのね…月の女神とやらは……でも、似てる事に驚くより何より……怖かったわよ、あれで本当に女神なの?何なの?あの狂暴さは。」


「……何もされなかったじゃん。頭にヅラ乗せられただけで。僕も、それだけで済んで驚いてるけど。」


「攻撃を受けなくても分かるわよ!あの容赦の無さ!あたしが敵だと認識したら、ホントに拳だけで粉砕するでしょうよ!もう一度聞くけど、あれ本当に女神なの!?」


「……女神だよ。少なくとも僕にとっては唯一の女神だ…。」


ライアンに聞こえない位の声で呟く。

オネェに返事をしたのではなく、無意識に口からこぼれた独り言。


「……あら……まぁ」


思わず漏らした言葉を、オネェが拾っていた。

頬をほんのり染めて僕を見る。


「っ……!!き、聞いていたっ…!!お、お前!わ、忘れろ!!でないと、お前を殺す!!」


「殺されてもいーのよ?あたし~でも、人の恋心を誰かに話すなんて野暮な事はしないわよう!」


くねくねと、気持ち悪い動きをするオッサンに腹が立つ。

いや、くねくねは僕の触手のせいか。


「殺されてもいいけど…あたし、この恋の行く末が気になるワ。チビ魔王様が狂暴な女神に恋をしていて…そのチビ魔王様の事をイケメン従者が愛している……でも、チビ魔王様の事を、あたしの魔王様が花嫁と呼ぶのよね……この恋模様、複雑だわぁ…」


こいつ、さりげなく僕の事をチビ魔王様と呼んでやがる。


ウッゼェ!!!


「あたし、身体は男だけど心は女よ?チビ魔王様は、逆なのかしら?……何だか、お仲間みたいで…ほっとけないわ…母性本能くすぐられちゃう…」


ウッゼェ!!ウッゼェ!!キモい!!!

早く、自称魔王見付けてぶっ殺して、このオネェなオッサンも殺す!!


「うっさいわ!!そもそも、何で僕がソイツの花嫁になるのさ!!冗談じゃないんだけど!!」


思わず大きな声でオネェを怒鳴ってしまった。

背後から、とてつもなく恐ろしいオーラが発せられる。


「……花嫁って……何です?……ねぇ、教えて下さいませんか?」


笑顔のライアンは…………

さっきのオネェを殴る勢いだったディアーナより怖かった。

もう、立ち上る怒気がパネェってば………。














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