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魔王に寄り添わせたい少年、一人立ち

ライアンがクローディア王女とコーランを連れ転移してきた町は、ディアーナ達が夜営している場所の一番近くにある町。


昨夜、レオンハルトに宿屋に連れ込まれたディアーナが、朝までレオンハルトと共に過ごした町でもある。


その町の入り口辺りに転移したライアンの前に、レオンハルトと、うんざりした顔のディアーナが立っていた。

町の入り口のすぐ近くに、ディアーナ達が夜を過ごした宿屋がある。

ディアーナは、その宿屋を見ながら、大きな溜め息を吐いた。


「何だかドッと疲れが出たわよ…よく考えたら私、あまり睡眠取れてないわ…」


クローディア王女とコーランを連れて転移したライアンは、レオンハルトとディアーナが待ち伏せるようにその場に居たことに驚いたのちに、パァと明るい顔になった。


「レオンハルト兄ちゃん、ディアーナ姉ちゃん!何でここに?テントで待ってりゃいいのに迎えに来てくれたの?」


見知らぬ男女の出現にコーランは警戒し、クローディアを庇うように背に隠すとレオンハルト達から距離を取るように後退り始める。


「少年の知り合いか…すまぬが、素性の知れぬ者をお嬢様に近付ける訳にはいかん。」


「あ、そう!じゃ、迎え来たんで!さよなら!!」


ライアンはビシッと手を上げ、爽やかに笑むとレオンハルト達の方に行こうとする。

そんなライアンを離すまいとクローディアがライアンの腰のベルトを掴んだ。


「待って!行かないで!わたしを守って!王子様なんでしょ?王子様は、姫を守るものでしょう!!女の子はか弱いんだから!」


ベルトを掴まれ、走り掛けたライアンの腹にベルトが食い込む。グヘッと変な声を出したライアンは、ベルトを掴むクローディアにイラッとし、ベルトを掴む彼女の手を振り払うと声を上げる。


「あのなぁ!!女の子がか弱いってなぁ!!んな事ねーよ!ディアーナ姉ちゃんなんか一人で千人とか蹴り倒すし変態女神って呼ばれてんだぞ!ロージアなんかムカついた奴は片っ端からぶっ殺すし!弱いワケねーだろが!」


無防備なライアンの肩に、ディアーナのかかとが落とされる。


「グヘッっ!!」


地面に膝をついて、四つん這いになったライアンの背に腰を下ろし足を組むディアーナ。


「変態女神は余計なのよ。このどアホ!!世間一般的には、女の子は男が守ってやるってモンなのよ。最強女神の私や、魔王のロージアを基準にすんな、馬ぁ鹿。」


「……女神だと……?」


この微妙に頭のよろしくない少年は、自分を女神だと言う変な女に騙されて、いい様に使われているのじゃないか?

神の声が聞こえるだとか、誰々の生まれ変りだとか、そんな事を言う奴にはろくなヤツが居ない。

コーランはそう考え、余計にディアーナ達を警戒する。


「そのお嬢、セフィーロ国のクローディア王女か…セフィーロ国、今騒がしい国だな。……あー……このままだと、このお嬢死ぬみたいだな。」


レオンハルトはクローディアを指差しながら同意を求めるようにディアーナの方を向く。


「……なっ!!ぶ、無礼者!王女と知って、殿下を亡き者にする気か!!」


青ざめたコーランが、ライアンの側を離れないクローディアの腕を掴み、強引に引き寄せ自身の背に庇うと短剣を抜く。


「……説明が難しいな…信じる、信じないは置いといて…俺と妻のディアーナは、神の子どもだからな…今、親父が俺たちにカンペ送ってきた。映像付き思念伝達みたいな…。」


カンペとは何だ?と聞いた事がない単語にコーランが眉間にシワを寄せる。


ディアーナはレオンハルトの言葉を聞きながら、「出向くのがめんどくさいからって、脳内に画像付きメッセージ送ってくるとかナニしてんのよ師匠!思念伝達つーかメールかよ!」と、空に向かって無言の圧を発する。


「セフィーロ国は王が死んだよな?だがまだ次の王が決まってない。セフィーロ国は女でも王位を継げる。そこのお嬢の腹違いの姉ちゃんが、正妻の娘であるお嬢を殺したいってな。……ライアン、お前はどう思う?」


急に話を振られ、ディアーナの尻の下で四つん這いになったライアンが顔を上げる。


「えっ!?何にも思わないけど!?誰が王様になっても俺には関係無いし!その国と関わらない俺には、どうでもいいんだけど?」


ライアンの背に座ったディアーナが、ライアンの尻をパンッと叩く。


「だから馬鹿だって言うのよ。あんた、誰を守りたくて強くなろうとしていたのよ。あんたがさっき、弱いワケねーだろがと言った相手を背に庇うように守ってやるため強くなったんじゃないわよね?…今回だけは、答えを言ってあげる。セフィーロ国は、クローディア女王でなければ滅ぶわよ。…誰がいつ、滅ぼすかは言わないけどね。」


ディアーナの尻の下のライアンが、眉間にシワを寄せ考えている。少ないオミソで頑張ってるなぁとレオンハルトは生ぬるい眼差しを向ける。


レオンハルト達が創造神である父のジャンセンから受け取ったカンペにはチャート表的な物が添付されており、クローディアの腹違いの姉が王位を継いだ場合、瘴気が蔓延り魔王が復活する。


ライアンには言わないが、約80年後。彼女の孫の時代に。


それをさせない為には、クローディアに王位を継がせる為に、クローディアの姉を王位継承から排除するしかない。


「俺は…ロージアを魔王にしたくない…」


「でしょう?だからってあんたが第一王女を殺しちゃえばいいってモンでもないのは分かるわよね?そんな事をすればディアナンネとセフィーロで戦争が起こるわよ。」


ディアーナの言葉に、あからさまに目が泳ぐライアン。

あ、考えてやがったな第一王女やっちまおうと。


ディアーナは呆れたように、尻の下のライアンの頭を軽くコツコツ叩く。


「……あんたは世間知らず過ぎよね。興味無いからどうでもいいとか、したい事だけしたら、話すのも面倒だからハイさよなら!とか…そもそも、たった今助けて目の前にいる二人が死ぬ事を想像出来てない。強くする事ばかり重点置いて、人の社会ってモンから隔離させていた私達も悪いのだけど。もう少し、社会ってもんを知っておかないと。」


「そうだな、もう俺達から離れて世間ってモンと、人との関わりを知っていくべきだな。でないと、完全引きこもりなロージアを任せられん。旅に出たら即、野垂れ死ぬわ。」


コーランとクローディアは、三人の会話の意味が分からず不思議そうな顔をしている。

レオンハルトはコーランの方を向くと、ディアーナの尻の下のライアンを親指で差した。


「ディアナンネ国の第一王子ライアンを、あんた等の護衛として預ける。目茶苦茶強いが、すげーアホだから、とりあえず一般的な常識を身に付けさせてやってくれ。あと…こいつ、ディアナンネ国の王太子ではないからな、除籍になるし。後の国王としては見るなよ?ディアナンネ国からの援助等は一切期待するな。」


クローディアはレオンハルトの言葉に顔を輝かせ、コーランは複雑な表情をする。


「あなた方は一体…何者…。」


「ちょっと待って!レオンハルト兄ちゃん、ディアーナ姉ちゃん!お別れって事!?やだよ!俺、まだ…!教えて欲しい事いっぱいある!」


レオンハルトとディアーナは、二人寄り添いながら宙に浮く。

太陽に重なるように浮いた二人は、逆光で表情が見えない。

背中が軽くなり、ディアーナが離れた事を知ったライアンは慌てて立ち上がり、二人に手を伸ばす。


「イヤだ!まだ、一緒に居てよ!一緒に戦おうよ!俺…二人が好きなんだ!置いてかないで!」


太陽に溶けるように二人の姿がかき消されてゆく。

二人に向けのばした手は、やがて太陽に手をのばした様になった。


「急だけどお別れよ、ライアン。この先、あなたの選ぶ道によっては、また私達に会えるわ。」


「俺達は神の一族だが、人の運命にはなるべく関わりを持たない。だが、こうして人として出会ったのも何かの縁だから、ライアンにあんた等を守らせよう。俺達がお嬢にしてやれる唯一の手助けだ。…まあ、うまく使ってくれ。アホだけど。ライアン、兄貴分の俺をガッカリさせんなよ?」


「あなたの選ぶ道が…私たちに、ロージアに、続く事を願っているわ。ライアン、あなたは私たちの大事な弟よ。」



やがて空には燦々と照る太陽だけとなり、ディアーナとレオンハルトは姿を消した。


一人残されたライアンはしばらく、嗚咽をあげながらポタポタ地面に涙をこぼしていが、やがて涙を拭いコーランとクローディアに向き直った。


「俺はライアン…。国の名はもう言わない。俺は、魔王を生み出さない為に、魔王の側近となる者だから。…そんな俺を信用してくれるなら、創造神の御子と、その妻に恥じぬよう、しばらくは王女を守るよ。」





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