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魔王が妹分の女神。ある意味危機。

「あら、お帰りなさいませロージア様…?」


白い白い神の世界、創造神界に帰って来たロージアは何も無い場所を縦に切るようにして入り口を作り、自身の空間を作ると、そこに閉じ籠ってしまった。


「あら…泣いていらしたわね…何かあったのかしら?」


世話係を任されているウィリアが頬に手を当て呟いて、首を傾げた。





「ライアン、あなた…女をナメているの?母親に似ているから好きですって?胸の感じが好み?サイテーね、女の敵だわ」


優しい聖女の笑顔なはずなのに、なぜか見えてしまう気がする程の怒りのオーラが発せられている。

そのうち髪の毛が逆立って、筋肉が盛り上がって上半身裸になってしまうんじゃないか?位に。


「…り…リリー…?ど、どうした?」


夫のレオンハルト国王が妻のリリーを落ち着かせようと、優しく腕を掴む。


「ちなみに、ライアン…わたくしは貴方のお父様…レオンハルトがわたくしに対し、そんな事を言ったりしたら…即別れます。ぶん殴ってから。」


「「えええっ!!!」」


ライアンとレオンハルトが同時に声をあげる。


「当たり前じゃないですか!そんなの、わたくし自身には興味無いと言っているのと同じでしょう!だったら、そういう見た目のオフィーリアさんでもいいって事でしょう!」


「ちょっと!ちょっと待ってくれ!俺は一言もリリーが母上に似ているから好きだなんて言ってない!俺じゃない!ライアンだから!そんなアホな事を言ったのライアンだから!」


とばっちりで、怒りの矛先が自分に向いたのに焦ったレオンハルトが必死で取り繕う。


「え!?そんな怒る事なの!?何で?」


母の怒りを理解してないライアンの台詞にレオンハルトが吠える。


「うがー!!黙れ!さっさとディアーナ様の所に帰れ!!」


いきり立つリリーを大人しくさせようと抱き締め宥めながら、ライアンを睨むレオンハルト国王。


「芋でも持って、さっさと帰ってディアーナ様に聞いてみろ!そんな勇気があるならな!」



ライアンは首を傾げながら芋の入った袋を抱えて転移魔法を使い、ディアーナ達の元に帰った。



「ディアーナ姉ちゃん、ディアナンネから芋を持って来た。そいで、ロージアが会いに来たんだけど…何か泣いて怒ってた」


ディアーナは帰って来たライアンを冷めた目で見て、鼻で笑った。


「ええ、ロージアの気配を感じたから、最初から話聞いていたわよ。ライアンあなた、リリーに似たロージアの見た目が好きなんですって?そんなあなたに彼女を紹介するわ。」


ディアーナの背後から、金色の緩く波打つ髪をハーフアップに纏めた翡翠の目をした美しい少女が現れる。


「オフィーリアです、はじめましてライアン君」


ライアンは、歳は若いが、リリーに瓜二つなオフィーリアが現れた事に驚く。

オフィーリアは柔らかい笑顔を向け、顔を傾ける。

何だかあざとい。


「ライアンはしばらく、オフィーリアと一緒に鍛練しなさい。強いわよ、オフィーリアは。」


「え?えええっ?な、何で…?レオンハルト兄ちゃんは?」


急に剣の師匠が変わって焦るライアンの肩に、ディアーナが手を置く。


「好きなんでしょう?この顔が。何だったら胸にも触らせて貰えば?」


肩に置かれたディアーナの手に力がこもり、指が食い込む。


「い、イテェ!な、何でディアーナ姉ちゃんまで怒ってんの?!」


「怒ってないわよ、呆れてるだけで。でも、やっぱりロージアに会うのは早かったわね。あんたがガキ過ぎて、可愛い妹を泣かせたみたいだから。」


「ライアン君、剣の稽古をしましょう?ウフフ」


オフィーリアはライアンの襟首を掴むと、引き摺りながら森に向かう。


「ライアン君、君のせいでねディアーナがとても不機嫌でね…私まで睨まれるのよね…」


オフィーリアはスラリと剣を出して構える。


「発散させて貰うわよ!!本気でかかってこい!このガキャあ!!」


「その剣!レオンハルト兄ちゃん!?ちょ…!本気でって!敵うワケねぇ!」



森の中から剣の交わる音が響く。

ディアーナはライアンが持ち帰った芋を焼きながら独り言つ。


「恋愛偏差値の低いライアンに、ロージアが可愛いと聞かせ続けたのも良くなかったのかもね…ライアンは、本当にロージアを好きっぽいけど好きな理由を言葉にすると、あんな感じになるんだろうなぁ…馬鹿だぁ…」




夜営場所から離れた、大木に囲まれ少し開けた場所にて。

剣の稽古という名の八つ当たりを受けたライアンはゼェゼェ言いながら尋ねる。


「…レオンハルト兄ちゃん…」


「オフィーリアと呼んで。」


「オフィーリア姉ちゃん…オフィーリア姉ちゃんも母上そっくりだけど、絶対好きにならない自信がある。」


「あら、そお?この顔が好きなのに?胸も触らせてあげましょうか?」


「絶対やだ…」


地面にうつ伏せで倒れたライアンの背中に腰かけたオフィーリアはクスクスと笑う。


「まあ、お前が悪気があって言ったんじゃないって俺は分かるけどな、ガキの言葉なんてそんなもんだ。ただ、お前はもう少し後先考えて発言しなきゃな。お前の言い方だとな、相手からしたら外見違えば好きにならなかったのね?と捉えられたりするワケだ。」


「…レオンハルト兄ちゃんは、ディアーナ姉ちゃんが今の姿で無くても好き?」


「……ライアン、お前に話してなかったな……俺はディアーナを探し続けて、いや、すぐ見つかるんだけど……そのディアーナは男だったり、オッサンだったり、老婆だったり……」


「…?オッサンでばあちゃん?」


「どんな姿でも愛していた。……俺達が生まれた理由から教えるか…。」



レオンハルトがライアンの背中に腰掛けたまま、昔話をするのを芋を持って来たディアーナが陰で見ている。


どんな姿でも愛していたと…言い切ってくれるレオンハルトに嬉しい気持ちと、自分もそうよ!と言いたいけどオフィーリアの姿だけは、今でも少し警戒してしまう申し訳なさと。


「乙女ゲームの主人公に、悪役令嬢だからなのかしら…それにしても、そんな出会いを果たしてから数百年経ってるのにね」


これはもう、理屈ではないなぁと苦笑する。


それでもディアーナもまた、レオンハルトがどんな姿でも愛し貫く気持ちは揺るがない。


「……芋……焼けたわよ?」


芋を持って現れたディアーナに、オフィーリアが潤んだ眼差しを向ける。

ライアンに過去の話をしている内に感極まってしまった様だ。


「ディアーナ…俺…本当にディアに会えて良かった…愛して貰えて良かった…」


ちょっと!今ここでソレ言う!?

オフィーリアの姿で!!ライアンの目の前で!

ライアンの母さんが私を口説いてるみたいじゃない!


「ディア!愛してる!」


いきなりオフィーリアに抱き付かれたディアーナは、手から芋を落とす。

地面に落ちる前に芋はライアンがキャッチした。


「何で今、ここで!そんなの!ちょっと!」


ライアンは芋を持ったまま、スタスタと夜営の場所に向かった。


「レオンハルト兄ちゃん、こうなったらしつこいからな。お先休むよ。おやすみなさい。」


「何なの!その、今から何が起こるか分かってますから的な言い方は!ちょっと!振りほどくの手伝ってぇ!」


オフィーリアに絡まれたまま、身動き取れなくなったディアーナが叫ぶのを無視してライアンは姿を消した。


「せ、せめて姿をレオンに戻しなさいよ!」

「ダメ、間に合わない、もうこのまま…愛してます、ディアーナ様…」


このまま何なんだ!何をする気なんだ!

しかも見た目だけじゃなく完全オフィーリアで!


ディアーナは両手首をオフィーリアに掴まれ、大木の幹に縫い付けられるように身体を木に寄り掛からせられる。


「ちょっと…ちょっと待って!オフィーリアぁ!壁ドン!?木ドン!?ら、ライアンが見てるかもだし、ほら、子どもの前ではほら…」


パニックになり過ぎて、自分でも何を言っているのか分からない。


「てゆーかほら!お待ちになって!女の子のオフィーリアにはわたくしを抱くとか無理じゃなくて!?」


なぜか悪役令嬢風になってしまった。


「見られていても構いません……それに大丈夫ですわ、ディアーナ様……私、女の子に見えているだけで身体はしっかり……オスですの……」


怖い怖い怖い!!!オス言うな!!


オフィーリアの唇がディアーナの唇のふちに触れる。

熱い吐息がディアーナの耳元に吹き掛けられ、オフィーリアの片手がディアーナの肩に乗り、滑るように腕に、そして胸に乗る。


「むーりー!!ちょっとちょっと!レオン!女の子同士で胸触るとか駄目よ!何か駄目!」


「……ロージアやウィリアのは揉みまくってるのに?」


お、おっしゃる通りで……


「ディアーナ様、今日は覚悟して下さい!私、我慢出来そうにありません!」


なんでよ!!どーゆーこと!!??


「愛してますわ…ディアーナ様…」


焦るディアーナの顔を覗き込んだオフィーリアの顔の造りは、可愛らしく天使の様。

なのに、獲物を捕らえた獣のような恍惚とした表情は背筋がぞくぞくする程の恐ろしい美しさがある。


「あ…」


これ、ヤバイ。逃げられないかも。


ディアーナは覚悟を決めた。



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