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魔王より恐ろしい姉ちゃん。

ディアナンネ国王レオンハルトは寝室のベッドの縁に腰掛け身を屈めるようにし、眉間にシワを刻んで深く考え込んでいた。


「あなた…ライアンの事ですわね…?」


妻のリリー王妃がレオンハルトの隣に腰を下ろし、レオンハルトの手に自分の手を重ねる。


「…まさか、ライアンがロージアに惚れるとは…考えもしなかった…こんな事が、神の知るところとなれば…どんな恐ろしい事になるか…神の意志に背くなど…!」


創造主の神としての恐ろしさ……と言うよりは、ジャンセンの理不尽で我が儘で面倒くさい性格を知っているレオンハルトは、ライアンのせいで国が滅ぼされるのではないかと危惧している。


「あなた…ライアンはまだ子供ですわ…かつてはディアーナ様を愛していた兄が、子供のライアンを相手にするとは思えません…。神の耳に入る程の事ではないのでは…。」


リリーは気にし過ぎだとレオンハルトを安心させるように言う。


「しかしだな、リリー!」


コンコン


深夜の寝室の窓をノックする音が響く。


レオンハルト国王と、リリー王妃の顔が青くなる。


幽霊だとか、お化けだとか、そんなモノより恐ろしい者が現れたのを知って。


「陛下、ちょっと相談。貴方を抱いた男、私です。」


「貴方は俺を抱いてないし、俺は貴方に抱かれておりませんよ!!」


レオンハルト国王が慌てて寝室の窓を開け、唐突に現れたジャンセンを部屋に迎え入れる。


「久しぶり、元気そうで何よりだねバカップル。」


部屋に入るなり、イチイチ人を苛立たせんでも!と思うも、ジャンセンの現れた理由を思えば文句を言えるような立場ではなく、レオンハルト国王は床に膝をつき、頭を下げた。


「ジャンセン!いや、創造神よ…!此度の愚息の考えについては、今後よくよく言い聞かせるので、どうか…どうか!子供のたわ言だと思って目を瞑って貰えませぬか!」


ジャンセンは開いたままの窓の枠に腰掛け、土下座するようなレオンハルト国王を見ている。


「神の意志に背くような、そんな事は致しません!息子には魔王の事を忘れさせます!魔王の役割の邪魔はさせません!だから、どうか…!もし、何かしらの罰を与えると言うならば、この私を…!」


「創造神様!わたくしも…!夫だけ悪いのではございません!」


ジャンセンは必死なレオンハルトとリリーを見て、楽しげに笑う。


「何で罰?あのねー今日、私がここに来たのは、バカップルの息子をうちの息子夫婦に預けたいけどいーよね?って言いに来たんだ。」


………それ、駄目ですとか、嫌ですとか言えないヤツ?

ほぼ決定?


「魔王、魔王って言うけどね、魔王生む程の劣悪な環境なんて、そうそう出来るモノじゃないからね?息子夫婦だって、そうならない為の旅をしてるんだし。」


床に膝をついたレオンハルトとリリーは顔を見合せてから、おずおずとジャンセンに尋ねる。


「……と、言いますと…?」


「ロージアが魔王にならない為に、前もって悪い芽を摘むって、バカップルの息子の考えはいいアイデアなんだよ。ロージアだって魔王になりたいワケじゃないんだし。……なのに魔王にならない内は、孤独に一人で永い時を過ごさなきゃって思い込んでいる。」


「……うちの息子を預かる…ってのは?」


「お前ら、国内が平和だからって過保護に育て過ぎ!お前らの息子、クソの役にも立たない程のヘタレだからな。ロージアを魔王にさせないと言うなら、それなりに力をつけて貰わないとね…あと…うちの娘が勝手に決めたんだが…………。」


創造神の言う、うちの娘…。

破壊神変態女神ディアーナ様。


その名前が頭に浮かんだだけで、ろくなモンじゃねぇ!と思ってしまうのは何故だろうと、レオンハルト達は思った。





王城で、創造神ジャンセンとディアナンネ国王夫妻が久々の邂逅を果たしている頃。


国境を隔てる巨大な門の前で、地面に寝そべる少年はゼーハー荒い呼吸を繰り返しながら高い位置に輝く月を仰ぐ。


「……何体……何体倒したのかな…俺……」


「あんたが相手をしたのは30体程。ちゃんと倒したのは5体。少ないわ!本体を狙え言ったでしょうが!」


容赦無いディアーナは寝そべる少年の襟首を掴んで引摺り起こし、無理矢理立たせる。


「あんたが相手をしたあれは全て作り物、剣が触れただけで、溶けたでしょ?本物はあんな簡単に倒せないわよ。殺さなきゃ殺される位の気持ちでやり合わないとね。」


ディアーナは立たせた少年の身体をはたいて土埃を払ってやる。

しばらく姿を消していたレオンハルトが現れてディアーナの側に立つ。


「待たせてすまない、ディアーナ。この付近の目立つ瘴気は浄化して来た。しばらくは魔物も魔獣も出ないだろう。」


少年は、金髪の青年が少女を呼んだ名前に初めて気付いた。


「ディアーナ…ディアーナ様!?本物の!?タコの剣を持つ変態女神の!」


ディアーナは笑顔で少年の胸ぐらを掴む。


「本物の私は変態でもないし、タコの足も持ってないわよ。頭より先に、身体で理解して貰おうかしら?」


「ディアーナ、弱いものイヂメはやめときなさい。…まったく、キレかけている姿も可愛いんだから…」


いきり立つディアーナを背後から抱き締めるレオンハルト。胸ぐらを解放された少年は、呆然と二人のイチャイチャを眺めていた。


「……変態夫婦だ……」


そういえば父から話を聞いた事がある。


絶対に逆らってはいけない、この世の最高神である創造主と、その息子と娘の夫婦。


娘は特にワケ分からん。

遊び始めたら、その楽しみを邪魔しようものならプチが待っている。


そんな父の言った言葉が意味不明だと聞き流していたのだが…。


「…強い姉ちゃん…いや、ディアーナ様は…俺を鍛えてどうするの…?そんなんでロージアを倒せるかって言ったよね…?」


恐る恐る、イチャイチャしている二人に声を掛ける。


少年に尋ねられたディアーナは目を輝かせ、人差し指を立て嬉しそうに答える。


「君には人間の勇者、第一号になってもらいます!」


「…………え?……魔王って、かなり先にならないと…出ないって……俺、じいちゃんの勇者?」


じいちゃんどころか、下手したら生きていない位先だと聞いた覚えが…。


「ボーズは、ロージアと結婚したいと今も思ってんのか?まぁ、ガキの言った事だし…勢いや雰囲気で言ったってのもあるかも知れないが…。」


レオンハルトが少年に尋ねれば、少年は少し俯いて唇を噛んだ。


「分かんない…でも、謝りたい…だから、ロージアに逢いたい…逢ってくれなくなったけど…。ロージアに逢いたくてたまらないんだ…。」


消え入りそうな声を出す少年に反して、嬉しそうに声を張ったディアーナは目を輝かせる。


「そう!それが恋と言うモノなのだ!少年の初恋かしら!?勇者第一号!この先、魔王が復活!どこかの国が、世界が、滅ぼされるかも知れない!そんな時、魔王の前に現れて魔王を倒す者!勇者!そして魔王の夫!世界の滅亡をかけた決戦は、スケールの大きな夫婦喧嘩でした!に、するわよ!!」


レオンハルトは苦笑しつつも、否定する事は無く。


少年は、誰かしらの助けを求めて回りをキョロキョロ見渡すが、当然誰も居らず。


「…するわよって…断言…?しようと思ってとかじゃなく…?」


ディアーナが声を張る。


「するわよ!!ライアン、あなたはロージアの夫で勇者第一号になる!」


父から聞いた、娘はワケ分からん。

ほんとにワケ分からん…。


分かるのは、逆らえばプチが待っている。

プチがナニかは分からないが……本能が声を上げている。


こわっ!!!






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