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魔王を困惑させる少女。変態女神と呼ばれてます。

白い白い世界。

壁も無く、床も在るか分からない白い世界。


創造神界という名の神の世界で、地べたに座ってぼんやりと何もない空間を見るロージアが居た。


「どーしたのー?ロージア、プロポーズされた割には浮かない顔をしてるわね!」


降って湧いたように現れたディアーナが、ロージアの隣に来て腰を下ろす。

旅装束のスカートがフワリと上がり、それをバフッと手で押さえつけ座ったディアーナがロージアに顔を寄せる。


「…プロポーズ?…ジャンセンに聞いたんだ…?おしゃべりだな…ムカつく。」


ディアーナから顔を背けボソッと呟くロージアに、空気を読まないディアーナはグイグイと顔を近付けると、ロージアの腕に自分の腕を絡ませた。


「ご機嫌ナナメってるわね!ロージア!どしたぁ?吐き出せ吐き出せ、楽になるかも知んないぞ?」


「うっぜ!なんで、こんな馬鹿で変態な女を愛してるなんて思っていたのかな!僕は!」


絡み付く勢いでくっついて来てロージアの全身を撫で回し始めたディアーナから、ロージアは鬱陶しいとばかりに身を捩って逃げようとする。


「理屈なんて無かったでしょー?好きになっちゃってたんだから!辛かったでしょ?でも、もう止められなかったのよね?一生懸命だったもの、私を愛してると言っていたロージアは。…で、結婚を申し込まれた受け身な今はどんな気持ちでいるの?」


ディアーナの腕の中で、逃れようとジタバタしていたロージアの動きが止まる。


「どんなって…10歳のガキのたわ言だよ?本気にするワケ無いじゃん。馬鹿じゃないの?」


「私を愛してるーって泣いてたロージアは5歳だったけどね。」


フフンと笑ってロージアを解放したディアーナが笑う。


「そんな余計な事、覚えてないでよ!!馬鹿ディアーナ!!」


カッと赤くなったロージアが黒い霧のツルを出し、先端を数本の棘に変えてディアーナを攻撃する。


「フフン!甘い甘い!まだまだ精進が足りないわよ!」


棘は全てディアーナの左手のみで掴まれ、笑顔のディアーナにそのまま粉々に砕かれた。


「…あの時の僕は…5歳だったけど…生まれた時から人ではなかったからね、こんな風にいきなり攻撃して人を殺す事にも何の躊躇いも無かったよ。」


「…?ロージア?」


「でも、あのクソガキは普通の人間で、人を殺した事も無ければ余程の事が無い限りは、これから殺すって事もない。……何も知らないから、僕を守ってやるなんて出来もしない事を言って。アホだし馬鹿だしクソガキだし、いっぺん死んだ方がいーよ。」


「…………怒ってるの?泣いてしまう程?」


ディアーナがクスリと笑ってロージアの頭を撫で回す。


「泣いてない!!あのアホ…!僕を守ってやるなんて言った…!僕は、誰かの一番好きな人になった事無いのに…!初めて、あんな事言われた!出来もしないのに!無理なのに!クソムカつく!!」


愛される事に餓えているロージアは、ライアンに言われた言葉が嬉しく、嬉しく思うからこそ何の根拠も無い子供の戯れ言に喜んだ自分に腹が立った。


「もう会わない!クソムカつく!兄上とリリーにも悪いし!!あいつ、知らないんだ、僕が昔、あいつの両親を殺そうとしていた事も!」


ディアーナはロージアを抱き締め、幼子をあやすように、目元を潤ませるロージアの背中をポンポンと叩いた。


「ロージアが会いたくなくても、あちらが会いたがっていたらどうするの?」


「あんな馬鹿に、会ったりなんかするもんか!あんなクソガキ!大嫌いだ!」


ディアーナはヘラリと口元が緩む。


ロージアが聞いたと言ったジャンセンのナレーション。

実はリアルタイムでディアーナもレオンハルトも聞いていた。

いつものように、二人で人として旅をしていた所に聞こえたジャンセンのバカみたいなナレーションに、食事をしていた二人は思い切り噴き出して、大爆笑した。


そして、ロージアの反応を見たくてディアーナは一人、里帰りした。


━━師匠が面白がりながら絡むと、だいたい…そういう運命になってるのよね…。


そのうち、バカップルと呼ばれるんじゃないかしら?

その子の両親みたいに。━━━


でも、まだ分からない。人の気持ちは移ろい易い。

まして、まだ10歳の子供ならばなおさら。


「どんな子かしら…アゴとリリーの息子って…見たいわ…」


しばらく創造神界に引きこもりそうなロージアを、巨乳のお世話係と、その夫に押し付けてディアーナは人の世に戻った。


「おとんが決めたんなら、文句無いわよね!私がどう、楽しんでも!!」


木陰で寝そべってディアーナの帰りを待っていたレオンハルトは、ディアーナのキラキラな表情を見て半笑いで身体を起こす。


「そいじゃ……10年ぶり位?変態女神の守護する国ディアナンネに向かうか?」


「変態女神は余計なお世話だわ、レオン」





聖女と変態女神の守護する国ディアナンネ。


夜の帳が降り、堅く閉ざされたこの国の門を、無理矢理越えようとしている少年が一人。


そして、門の一番高い場所で当然のお約束の通りに捕まる。


「よぉボーズ!深夜に家出か!!分かりやすい位に、お約束な行動だな!」


金髪の青年は、少年の首根っこを掴んで持ち上げ、視線を合わせて笑う。


「は、離せ!誰だお前!離せよ!」


月明かりの下、目映い金髪をなびかせた青年は翡翠の瞳を細めて笑い、少年を不躾な程にじろじろと見る。


「父親と母親の、いーとこ取りな顔だな!目は母親と同じ紫か……さて、ボーズは離せと言っているが、離したらお前がアレを相手にしなきゃならんが…イケるか?」


金髪の青年、レオンハルトは顎先で門の外側を指した。


少年が指された方に目をやる。

門の外には、眼窩や口から黒いヒルのようなモノをズルリと出した、奇怪な何かが数体徘徊していた。


「うわ、うわぁあ!な、な、何だアレ!!」


「お?ボーズはアレを初めて見るのか?アレは人間が魔獣化したものだな。巨人みたいにでっかくなる場合もあるが、この国周辺はあのタイプが多いな。ここいらにあった魔王のいた国の影響で、残った瘴気の魔力が高いせいかな。」


魔王の影響、と言う言葉に少年は息を飲む。ロージアの影響って事…?


「さて、ボーズ離して欲しいなら離してやるが、頑張ってあいつらの相手をしてみるか?」


青年は高い門の上に立った状態で、少年の首根っこを掴んだ腕を門の外側にのばす。


「このまま落とせば、楽しいバトルが始まるが…イケるか?」


少年は宙ぶらりんになった自分の足元に目をやる。


自分の足の遥か下に、ワラワラと集まる奇怪な者達。


声にならない呻きをあげ、生きた人間である少年に向かい届かない腕をのばす。


「あ、あんな…あんな…化け物…た、倒せない…気持ち悪いよぅ…!」


「そうか、倒せないか!なら頑張れ」


レオンハルトは少年を、呻きをあげながら腕らしき物をのばす奇怪な者達の群れに落とした。


「うわぁぁああ!!た、助けてぇ!!」













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