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3# 聖女ディアナンネ降臨?

ディアーナは、馬車に乗せられていた三人を連れ城に向かう。


国境近くの村から拐われた娘達、オフィーリアに似た少女リリーと、ミーナとビスケは、ビクビクしながらディアーナの後を着いて来る。


怯える若い娘さん達を、あんなむさ苦しい男どもの前に置いてはおけない。


「私たち、どうなるの?」「売られちゃうの?」「怖い、お家に帰りたい」


背後から聞こえる、そんな声を聞いていたら、レオンハルト皇帝とやらに益々腹が立ってきた。


「陛下、村の娘達を連れて参りました。」


私を姫と呼んで、ここに案内した奴…が、陛下と呼んだ男。


暴君レオンハルト皇帝とやらの顔を見る。


私の愛するレオンハルトと同じ、金の髪、翡翠の目……


だけど、顎割れてるじゃん!モミアゲ長いし!ダッサ!


そのツラで私の夫と同じ名前だとか、なんたる無礼者!


「おお!何と美しい娘だ!初めて見たぞ!藍色の髪に金の瞳を持つ娘など!」


そうね、師匠いわく、聖女仕様のようですもの。

私以外には居ないらしいわよ?天然モノでは。


「月の聖女ディアナンネのようではないか!」


だから何なんだ!その残念な名前は!


「お前は特別に俺の妻にしてやろう!皇帝の正妃になるのだ、嬉しかろう!」


皇帝の手がディアーナに延びる。身体に触れようとした瞬間、ディアーナの右足が高く上がり、皇帝の左肩に踵が落とされる。


「うぐっ!!」


皇帝の鎖骨を折る勢いで振り下ろした脚の下で、皇帝が膝をついた。


「気安く触れるな、無礼者!私を誰だと思っている!私は月の女神ディアーナだ!」


女神ではないんだけどね、ホントは。

何か、一般的にそう呼ばれているのよ。

この国には浸透してないみたいだけど。


それとホントは、お前をうぬ呼びしたり、笑止!とか言ってみたかった。


ディアーナを案内した男が、焦ったように皇帝に駆け寄る。そして、皇帝に耳打ちする。


「へ、陛下!陛下!あの娘は、自分を月の女神だと言っている、おかしな娘です!しかも、聖女の名前をディアーナだと間違えています!ああいう………のは、まともに相手をしては駄目です!」


今、ひそかに頭おかしい的なジェスチャーをしたわよね?くるくるパー的な。

自分は女神だと思い込んでるのに名前間違えちゃってる痛い人だと思われてんのか?私。


なんかムカついてきたから皇帝も、この側近らしい男も、二、三発殴っておこうか…。


「そなた、名は…ディアーナと申すのか…」


肩を押さえて床に膝をついた皇帝の目がキラキラしている。

ああ……目覚めさせちゃったかしら……どエム……。


「何と強く美しい…わが、先祖に慈悲を与えて下さった聖女ディアナンネのようだ…」


膝をついたままディアーナを見上げる皇帝の顎先を、人差し指でクイと更に上向かせ目線を合わせる。


「その先祖の話し、聞きたいわね」


ポッと頬を赤らめ、乙女顔になるアゴ割れ皇帝。


話しを聞く所によると

百年以上前にアゴーンの先祖が近隣の国々に侵攻を繰り返していた際に、辺境の村に聖女ディアナンネが降臨。


「これ以上、人々を苦しめるのであれば、私があなた方の国を滅ぼします。このまま大人しく退くのであれば、今回の事には目をつむりましょう。」



「………それ、覚えてるわ……」


今回同様、ディアーナの滞在していた村に、いきなり兵士が侵攻して来たのだ。


村人のお宅にて、昼食をご馳走になっている途中だったディアーナは激怒。

百人近く居た兵士達をフルボッコにした。

怒りは治まらず、そのまま当時の皇帝の所に殴り込み、城で散々暴れ倒し、


「これ以上、うざったいマネをするなら国ごと消すわよ!大人しく退きなさいよ!このど阿呆どもが!」


………と、言った……


年数を経て美化が進み、名乗った名前も間違えられてるし…そいでもって、言葉遣いに聖女らしさがグレードアップしてますわね…。


「つか、アホか!結局同じ事してるじゃないの!マジでぶっ潰すぞ!」


「ち、違う!いや、違うんです!我が国は、聖女ディアナンネ様を崇拝しております!ディアナンネ教の信者を増やし、更なる布教の為に領土を増やしております!」


ディアーナはアゴーンの胸ぐらを掴む。


「ほう…で、人々を拐って奴隷商人に売るとか?そもそも名前間違えとるわ!」


ディアーナはアゴーンの肩を踏みつけ、土下座させるように頭を地面に擦り付けさせる。


「しかも、何でレオンハルトなのよ」


「そ、それは…聖女ディアナンネ様の怒りを…鎮めた勇者様の名前で…代々、皇帝になる者には、その名前が…」


地面に顔を擦り付けたままアゴーンが言った。


ああ、そう言えば…散々城で暴れ倒した後、レオンが私を羽交い締めにして止めたわ…


「ディアーナ!やっちゃなんねぇ!それ以上はやっちゃなんねぇだ!」





「………ディアナンネだと…?…レオン…原因お前か……どいつもコイツも…レオンハルトって奴はクソか…?」


腹が立ち過ぎて、怒りのやり場が分からなくなったディアーナは、足の下で土下座状態のアゴーンから足をどかす。


「私と、この三人の娘さん達をもてなしなさい。言っとくけど私の目の届かない所で、この娘さん達に何かしようとする輩が現れたら…」


ディアーナは指先で虫をにじり潰すジェスチャーをする。


「国ごとプチだから!」






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