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魔王を倒せる聖剣。別名オクトパス

自然に恵まれ、豊かな大地に多くの農作物が実る。

建国15年を迎えたこの国は今、国民の数も増えて国土も広がり、大国になりつつある。


そんな聖女と女神に守護されし国ディアナンネ。

の、外れにある大きな湖の畔。


水面から高さのある、少し拓けた場所に三人の少年が集まり、その内の一人が抱えて来た荷物を下ろし、巻いた布を捲る。


「ほら、これが父上が言っていた魔王を倒す剣だ!」


10歳前後の金髪の少年が自慢気に言って鞘に納められた美しい剣を地面に置くと、二人の少年が目を輝かせて剣を覗き込んだ。


「「おー!スゲー!キレイ!」」


「待て待て、慌てんな!この剣がキレイなのは鞘から抜いてからだぞ!」


金髪の少年は剣の柄を持ち、ゆっくりと鞘から刀身を引っ張り出す。

クリスタルのように美しい透明な刀身が鞘から半分現れた所で、静かに凪いでいた湖の表面が荒れ狂う海のように激しく波立ちうねり始め、激しい風が吹き青く晴れていた空が暗い雲に覆われ出す。


「わ、わあ!お天気が…急に!」「魔王が復活する!逃げろ!」


剣を覗き込んでいた少年二人は、急激な気候の変化に恐れおののき、金髪の少年をその場に置いて走り去った。


「ちょっ…!お前ら!俺を置いて行くな!俺は王子だぞ!!」


剣を置いて行くワケにはいかず、金髪の少年はアワアワと剣を鞘に納め、布を巻き直し、帰り支度をしようとするが慌て過ぎて上手くいかない。


荒れた湖の表面が渦を巻き始め、その渦が竜巻のように少年の居る高さまで上がると、声が聞こえた。


「だぁれが…王子なんだよ……このクソガキが!!」


「うわああああ!魔王!!!俺は食べられません!」


渦の上には、15歳位の美しい金髪の少年のような人物が足を組んで座っており、涙目で後ずさる少年を冷めた目で見ている。


「…そんな汚いモン食べるワケ無いじゃん。バッカじゃない?…まだ抜かれるハズの無い剣が抜かれたから、何が起こったかと心配になって来てみたら……あー最悪!ガキのイタズラじゃん!」


銀に近い金髪に、青空のように澄んだ瞳の人物は、胸元にフリルの付いた白いシャツにパンツ、ブーツをはいた少年の出で立ちであるのに、どこか少女の様な儚さがある。


「子供でも簡単に持ち出せるって、一体どんな保管の仕方してるんだよ…馬鹿兄上…」


剣に呼ばれる様に現れた少年は、地面に置かれた剣を拾い、後ずさる少年の襟首を掴んで猫のように持ち上げると視線を合わせジィっと見る。


「僕の名前はロージア、お望みの魔王だよ…この剣を抜くって事は、僕に宣戦布告したって事だよね?死にたいのかな?」


青く澄んでいたロージアの瞳が赤く光る。口元に浮かんだ笑みは恐ろしさを越え美しい。


「お、お、お前なんか!お前なんか!ディアーナ様の持つ、この剣で倒してやるんだ!」


「あれは、剣じゃなくてタコの足の串だ!バッカじゃないの!?僕の美しい剣とタコの串を一緒にしないでよ!!ほんっとに、ディアーナの名前が絡むだけでろくな事にならないんだから!」


ロージアは震える少年の襟首を掴んだまま、城の前にある畑に転移し、少年と剣を泥の上に投げ出した。


「殺されたくなかったら、その剣ちゃんと片付けときなよ?クソガキ。あと、おとんとおかん……父上と母上には僕の名前を出すなよ?うぜぇ事になるから!」


言いたい事だけ言うと、ロージアは姿を消した。


泥まみれになった少年は、泥だらけの剣を抱きしめ、ロージアの消えた空間を呆然と眺めていた。


「魔王って、口わっっる…おとん…おかん…?」






「ライアン、わたくしがなぜ、こんなに怒っているのか分かってるわね?その剣はオモチャではないのよ?この国の、いいえ、この世界を守る宝なのよ?」


畑の真ん中で、泥だらけのまま叱られている金髪の少年ライアンの前には、美しい金髪の王妃リリーがニッコリと笑いながら怒気を発している。


「えーと…ごめんなさい…」


「リリー、ライアンも反省してるみたいだし…ほら、ちゃんと持って帰ったんだから…そんな叱らなくても…」


農夫の格好をしたレオンハルト王がライアンを庇うも、王妃が二人を睨み付ける。


「あなた!甘やかしてはいけません!その剣が無くなれば、魔王が復活した時にどうやって世界を救うのです!?またディアーナ様が現れるとも限らないのですよ!わたくし達の子孫に、そんな苦労を…!」


「そういやさぁ、何かロージアって男女が、剣はちゃんと片付けて子どもが持ち出せないようにしとけってさ。あと、国の門にあるディアーナ様のレリーフの剣って、その剣でなくてタコの足持ってるんだって。」


「「ロージア!!??会ったの!?」」


レオンハルトとリリーの声が重なった。


「あ…いけね、会った事言うなって言われていた…」


たいして悪びれる様子の無いライアンに、母のリリーが笑顔のままライアンの襟首を掴む。


「ちょっと…こっちにいらっしゃい…。城に戻って、じっくり話を聞かせて貰いましょうか…。」


「ちょっ…!母上怒ってる!?おかん!怒ってる!?」


「ふふふふ…ロージアに会ったのは嘘ではないようね…そんな口のきき方をするのは、ディアーナ様だけですもの…。ディアーナ様と家族になった兄ならば、そんな言葉が伝染っていてもおかしくないものね…。」


ライアンはリリーに引き摺られ、おろおろするレオンハルト国王と共に、王城に連れて行かれた。



「おかーーん!勘弁してー!!」







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