36# 神聖な場所にオーデーンあらわる。
「師匠!それは私のです!大事に育てていたのに!」
「早い者勝ちでしょう?そんなのは。」
「ディアーナ、それは俺が育てていたがんもどきだ。」
……ガンモドキって……ナニ?
ロージアは聞いた事の無い言葉を聞きながら目を覚ます。
自分の中の最期の記憶は、焦土と化したバクスガハーツ帝国の上空でディアーナに身体を貫かれ、身体が砕け散った瞬間。
白い白い世界。
白すぎて床と壁の境目すら分からない。
そもそも壁があるかも分からない。
そんな場所に居る自分…。
そんな厳かで神聖っぽい感じの白い世界で、ディアーナと黒い男、兄を騙った偽物のレオンハルト皇帝が低いテーブルに寄せ集まって何かをしている。
「だから師匠!!そのタコの足は私が狙っていたと!!」
立ち上がったディアーナと、ロージアの目が合う。
「………ディアーナ……何してんの……?ここ、どこ…?」
ロージアの声に、ジャンセンとレオンハルトもロージアを見る。
二人とも口からナニかはみ出している……キモチワルイ。
何……何なの…?
「ここは創造神界、神の世界よ!ロージア、おはよう!気分どお?お腹空いてない?おでん食べる?」
おでん……?て……ナニ?
「僕……生きて…る?」
「生きてるとゆーか、死ねないからね!ロージアは。私達と一緒で。」
ディアーナはロージアの傍に行き、その手をとって土鍋の置かれたちゃぶ台に連れて来る。
「…あ、あの……僕……」
ニコニコと微笑む黒髪に黒目の男と、苛ついた顔で冷たい視線を投げ付けてくる金髪の男。
まるで針のむしろに座らされているかのようだとロージアは思った。
「ディアーナの事…!本当に好きで…っ…わ!」
「うんうん、可愛い妹分に愛してるとか言われて、おねぃさんも嬉しいわぁ!」
ディアーナは背後からロージアを抱き締めつつ、さりげにロージアの胸を触る。
糸こんにゃくをすすりながら、冷めた顔で見詰めるレオンハルトはぼそっと呟く。
「まさか僕っ娘とはな……つか、たまたま女の形なだけで性別自体は無いのだっけ?」
「そうですね、私も性別はありませんしね。男性の形なだけで。ロージアはリリーと同じく皇太后の形をとってますから女性型寄りですね。リリーより中性的ではありますが。」
おでんを肴に、日本酒らしきモノをチビチビやりながらジャンセンが言う。
「そんなのでディアーナを抱くとか、よく言えたな…つか、何となくソレっぽい事をしようとしたみたいだが、よく分かってなかったんだろうな…まぁ、あの様子じゃ…男型になった所で、もうディアーナをどうこうしようとは思わないかも知れないが。」
「……でしょうね………姫さん、ロージアが真っ赤になって震えてるから、やめたげなさい。変態。」
ディアーナに全身まさぐられたロージアは、ディアーナの腕の中でグッタリと脱力していた。
「な、な、何なの!これ!すごい恥ずかしいし!すごい疲れる!!やめて!!」
真っ赤になり涙目のロージアは、怯えるように自身の身体を抱き締め、ディアーナから距離を取ろうとする。
「ほう…羞恥心が芽生えたとな?これは更に、おねぃさんがエエ事を……」
怪しい笑みを浮かべ手指をワキワキとイヤらしく動かすディアーナに、怯えたロージアが後ずさる。
「だから、やめろと言っている。この、セクハラ変態女神。」
ディアーナの脳天にジャンセンのチョップが炸裂した。
「ぐふっ!」
白い白い神の世界。
そんな神聖な場所に在るはずが無いのに、なぜかある、土鍋が置かれたちゃぶ台。
それを囲むジャンセンとレオンハルト、そしてロージア。
ディアーナはジャンセンの後ろで正座で反省中である。
「もう、自分が何者かも生まれた理由も分かったよね?」
ジャンセンが微笑みながらロージアに尋ねれば、ロージアはコクリと頷く。
「君に課せられた宿命は重いけど、君が君を全うするために、私達は君を愛するし大事にしていくよ?」
「……どういう…意味?」
ロージアはジャンセンにからかわれた記憶しかなく、警戒して口数を減らす。
ジャンセンの背後からディアーナが飛び出すように身を乗り出すと、ロージアに満面の笑顔を向ける。
「つまり、魔王やってない時はダラダラ好きな事をやっていていいし、私達家族があなたを愛して見守っていてあげるって事ね。……可愛い妹だもの……ふふ…」
「俺はまだ、完全に許したってワケじゃないんだよな。キスだってなぁ、なんでロージアは良くて、オフィーリアは駄目なんだか納得いかねぇし…俺もオフィーリアの時に口移しでブドウ食わせて欲しい。」
ふて腐れたように言うレオンハルトに、冷めた口調でディアーナが言う。
「口移しでバナナ食わせてやるわよ。」
「唇、届かねーよ!届かせようとしたら、オエッてなるわ!」
アホな会話を神の世界で聞いているロージアは、何も無い白い空間をボンヤリ見ていた。
ディアーナはアホだ…。そんなディアーナを含む、神の家族になるのか…僕が…………
「なんだか疲れそう………。」
ロージアの言葉に、ウンウンと頷くジャンセンとレオンハルトを見て、ロージアはヘラリと力なく笑った。




