31# 花嫁と…。
「何だ、このガラスの屑は……」
レオンハルト先代皇帝の手からザラザラとこぼれ落ちた小さな粒が、床の上で跳ねてレオンハルト皇帝の足元で躍る。
いつまでも動きが止まらないまま跳ねて躍るガラスの粒から、半透明の少女達がたくさん現れた。
「!!君たちは……」
レオンハルト先代皇帝には見覚えがある少女達。
ロージアに囚われていた大教会の地下で、レオンハルト皇帝に纏わりついていたディアナンネのなりそこないにされた少女達。
それ以上に多くの少女達が居るのは、一部だけ使われた者も多く居たのだろう。
『私達が、あなたを守ります』『あなたを守る事で、私達が救われるのです』『創造神様が私達の魂を救って下さるために、あなたを守るようにと…』
少女達が小さな光の粒子に変わり、レオンハルト先代皇帝の身体に吸い込まれるように消えて行く神秘的で美しい様を、その場に居た兵士達が涙を流して見ていた。
「俺は…俺は…!君達を救えなかった!守れなかった!こんな…俺を……すまん……」
レオンハルト先代皇帝が涙の粒を幾つも床に落として行く。
レオンハルト皇帝の涙が、最後に残ったガラスの粒に乗った。
涙に濡れた粒が皇帝の回りを跳ねてから皇帝の中に吸い込まれた。
「陛下!明日、正午にロージアが即位と、ディアーナ様を王妃にすると公表すると…!創造神様が!」
テーブルで黙りこんでいたジャンセンが、いきなりペラペラと話し出したので、その場に居た全員の視線が涙目のままジャンセンに集中する。
「…………は?」
「陛下!やっと話すのを許可されました!私です!ヒューバートにございます!」
「ヒューバートお!?」
ジャンセンにしか見えないその姿で、泣きながらレオンハルト皇帝にすがるように抱き付くヒューバートに複雑な気持ちのレオンハルト先代皇帝は思わず目を逸らす。
何か怖い。とゆーか、拒否反応が…。
俺は抱かれていない…抱かれていない…。
「創造神様が、私に言伝てを…陛下には向かって欲しい場所があると…帝国ではなく…。」
「帝国ではなく!?それではリリーを救いに行けぬではないか!」
ジャンセン姿のヒューバートはホロリと涙をこぼし、何度も頷く。
「創造神様のおっしゃる通り、確かにバカップルですな…ははは。」
またジャンセン(中身はヒューバートだが)にバカップルと言われたレオンハルト先代皇帝はイラっとするが、ジャンセンの姿が怖いので言い返せない。
「どんなに中身がクソでも一応、神だからな…言われた事は聞くか……。」
「陛下……創造神様は、陛下のお言葉を聞いてらっしゃいます……。」
「おまっ……!!何で、そんな恐ろしい事を最初に教えないんだ!!!」
レオンハルト先代皇帝が青ざめた。
翌日
ディアーナは花嫁衣装を身に纏い、ロージアの前に居た。
美しい花嫁姿のディアーナだが、その目は虚ろで何も語らない。
「ねぇディアーナ……君の…意識を戻したら…きっと君は…僕から離れてくんだよね…?」
兄のレオンハルト先代皇帝と、リリーが居なくなればディアーナが自分の物になるかも知れないなんて、なぜ思ったのだろう…。
ロージアは苦しんでいた。
「いっそ、ずっと意識を失ったままで…?でも僕の好きなディアーナは…こんな…人形みたいなディアーナじゃないよ…」
ディアーナの足元に崩れるロージアは、膝まずいたままディアーナの花嫁衣装の長い裾を持ち上げ口付ける。
「この衣装も、いつものディアーナに着て欲しかったんだ…僕を選んで、僕を見て、アイアンクローしてもいいから、僕を好きだと言って欲しかった……」
ディアーナは何も語らない。微動だにせず、まばたきもしない。
「どうしたら…良かったのかなぁ…ディアーナ…」
涙が花嫁衣装の裾を濡らしてゆく。
扉がノックされ、教皇が入って来る。
「これは!なんと美しい花嫁でしょう!ロージア様に相応しい美しい王妃ですな!」
「………本当に…美しいかな……」
こんな生気の無いディアーナが…。
ロージアはディアーナを伴い、バルコニーに向かう。
こんな国、早く無くなればいい……。
僕も、ディアーナと一緒に消えてもいいや………。
そんな考えを脳裏によぎらせながら。




