2# 黄金の右、炸裂。
まずは情報を手に入れねば!
ディアーナは馬車に乗せられた少女達に話しを聞いていく。
少女達がいる国は隣国のバクスガハーツ帝国の侵略を受けた。
彼女達の国は敗戦国となり、賠償金を払う事で話しが済んだはずだとの事。
だが、それは国の上の方での話し。
侵攻してきた兵士たちは国に沢山残っている上、無法者と化している者も少なくない。
金目の物を略奪していくのは当たり前で、国境近くの辺鄙な町や村などは中央からの目も届かない為に被害に遭う事が多く、若い娘だけでなく、老若男女問わずに奴隷として売られる目的で連れて行かれる者もいるとの事。
「ところで、そのバスガス爆発帝国って、どんな国?」
「な、なんか名前違う気がするけど…レオンハルト皇帝は暴君だと聞くわ…」
思いがけない名前を聞いた。
ほう、私を拐ったクソ国のクソ皇帝は、神の御子と同じ名前を持つのか…暴君だと?
誰がじゃ!その名前を持つ者には絶対負けん!
「……あなた、なぜ笑っているの?」
オフィーリア(仮)がディアーナに尋ねた。
「あらやだ、わたくし笑ってましたのね…」
ディアーナは確かめるように、自身の唇に触れる。
口角が上がってるわ…やぁね…
「て…手!何で!?」
オフィーリア(仮)が驚いている。
ああ、そうね縛られていたわ…柔いヒモで。
こんなもん、ソッコーブチっでしょう?
揺れていた馬車が停まったようだ。
カチャカチャと鍵を開ける音がする。
やがて馬車の扉が開き、自分たちを連れて来た兵士より少しばかり位の高そうな鎧を身に着けた男が馬車の中を窺う。
「これは素晴らしい!月の聖女ディアナンネのような娘がいるではないか!」
月の聖女ディアナンネ?何だその残念な名前。
男は馬車の中に入ると、値踏みするようにディアーナの顎を掴み顔を近付ける。
「この娘を侍らせていれば、俺は聖女の加護のある男だと見せる事が出来るぞ!」
何だその安っぽいアピールは。
聖女そっくりな女を側に置いとくだけでそんなのか?
じゃあ、本物を側に置いとくとどうなるのかしら?
ディアーナは男の顔面に、見事な右ストレートを叩き込んだ。
「こうなるわよねぇ」
男はそのまま馬車のドアの外まで飛んで行き、馬車から遠く離れた地面にべちゃっと落ちた。
馬車からディアーナが降りる。
何が起こったか分からない回りは、時が止まったかのように誰も動けない。
「わたくしに触ったわね?このうすらハゲ。殺されなかっただけ有り難いと思いなさい。」
馬車から降り立ったディアーナは、目の前にある大きな城を見上げる。
まさか、村の付近で拉致られた少女達が、いきなり城に連れて来られるとは思ってなかった。
いや、可能性はあるか…見目麗しい少女ならば、暴君と呼ばれる皇帝とやらの寵姫になるかも知れない。
もっと酷い想像をするなら、オモチャ扱いを受ける可能性も無くはない。
捕らえた女は一度、城で値踏みされるワケだ。
ディアーナはグルリと回りを見渡す。
自分たちを捕らえた兵士たちの他、城から出て来たらしい兵士もいる。
何か偉そうなのもチラホラ。
「レオンハルト皇帝の所に案内しなさいよ。月の女神ディアーナが来てやったわよ。」
ディアーナは魔法も剣も使えない。
だが、この場にいる100人ばかりの兵士達なら余裕で倒せる自信がある。
腕力という名の暴力で。
では、それ以上の兵士が集まって、どうにもならない時は?
師匠…いや、おとんに頼むだけです!こいつらヤっちまって!と。
なのでディアーナに弱点無し。
「聞こえないの?耳悪いの?頭悪いの?あのハゲの2番目、3番目になりたいの?」
ディアーナは城を指差す。
「あれを破壊すれば出て来るの?アホ皇帝」
回りが急にあわただしく動き出す。
「こ、こちらです!姫!」
何か偉そうな奴に姫と呼ばれた。