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17# 聖女ディアナンネ。

夜が明け、目を覚ましたリリーは困惑していた。


見知らぬ美しい金髪の男性が、つやっつやな顔色で茶を淹れている。


「まずい。」


茶をすすりながら文句を言う妙に機嫌のいい、この世の頂点だという創造神様…。


テーブルの上に顔を乗せ両腕はダランと下に下がり、生ける屍のようになっているディアーナ様。


━━ 私が気を失ってる間に、一体何が!?━━


「おや、リリーさん目が覚めましたか。」


ジャンセンはリリーを呼び、テーブルにつくよう促す。


「貴女の事について、この馬鹿娘に教えてあげて下さい。」


「は、はい…私は…私の本当の名は…リリーではありません。」


テーブルについたリリーは、言い辛そうに目を伏せる。


「信じて貰えないかも知れませんが…私はディアナンネ…なのです。」


「「マジで!?」」


ディアーナとレオンハルトが大きな声を揃えた。


「ちょっと!聞いた!?ディアーナ聞いた!?マジで居たよ!ディアナンネ!俺が作ったんじゃなかったわ!」


「あっはっは!ごめんね!ディアナンネ!私、何度も残念な名前だと思ってしまっていたわ!ちゃんと、居たのにね!」


テンションの上がる二人を尻目に、ジャンセンはニヤリと唇の端を上げて笑う。


「いいえ、私は人々の信仰が具現化したもので…聖女ディアナンネを愛する人々の想いから生まれました…けど…この名前に何かあるんですか…?」


リリーがジャンセンに目をやり再びディアーナ達の方に目を向けると、ディアーナは拳を振り上げており、金髪の男は床の上にダウンしていた。


「やっぱりディアナンネを生み出したのはレオンだったんかい!間違った名前で定着されとるやないか!」


怒りの余り、言葉がおかしくなっているディアーナに、リリーがおろおろし出す。


「ど、どういう事ですか…?」


「聖女ディアナンネは、うちの馬鹿娘のディアーナの名前から生まれているんだよ。うちの馬鹿息子のせいで、何だか面白い名前になってしまってるけど。まぁ、ザマァミロだね。」


ジャンセンはまずい茶をすすりながら笑っている。


「まぁ、元が馬鹿娘でも、今はちゃんと聖女ディアナンネという存在が生まれているワケだし、いいんじゃない?神様なんて、ところ変われば名前も扱いも変わる場合もあるんだからさ。…それより、君が具現化した理由、あの子でしょう?」


ジャンセンの目が妖しく光る。

唇の端が上がり、神を慈悲深い存在だというならば、余りにもかけ離れた表情を見せる。


「えっ…ええ…私は…彼が皇太后の肉体の一部と魔力を奪ってこの世に生まれた時に…皇太后リリアーナの僅かな魔力と、国と息子を守りたいという想いから生まれました…」


「そんな事…あるの?師匠。」


ぐったりしたレオンハルトの胸ぐらを掴んだディアーナが尋ねると、ジャンセンは笑う。


「知らない。でも、あったから目の前に居るんだろ?彼女は。楽しいねぇ…人の想う力が起こす奇跡なんて、たかが知れてると思っていたけど、これは面白い。」


ディアーナは少し悲しい顔をする。

ジャンセンが楽しいと言ってる奇跡は、皇太后の命を失って起こった奇跡だ。

彼女がそれを望んだ訳ではないのに。


「…ディアーナ、言い訳にも慰めにもならないが、この世界と、この世界に生きる人間の基を造った私にも、今この世界に生きる人の運命は僅かしか動かせない。そして皇太后は、私を越える大きな力によって、そうなる必要があったんだよ。これからを動かすために。」


「分かるのだけどね…私も、レオンと永遠を生きる今の私のために、何度も死んだ身だから…でも、必要だったからと犠牲に選ばれてしまったなんて…」


前世の私達の死を重ねて、その犠牲があって今の私がある。だから、今の私が過去の自分に「かわいそう」なんて思うのはおこがましい。だけど…


「……私は…彼のようにすぐに肉体を持てなかったので、最近になって、やっと動けるようになりました…バクスガハーツの皆さんの信仰が集まって、やっとこの身体に…。でも…私には彼を制する魔力も力も無いのです…。」


リリーの言葉を聞きながら、ディアーナがジャンセンの方に目を向ける。


「ねえ、師匠!リリーがディアナンネだってのは分かったけど、ロージアは何者?」


「彼は…言うなれば、寄生虫ですかね…」


ジャンセンは楽しそうに、嬉しそうに口角を上げる。


「私の造った箱庭で、観察しようと飼育していた蟻の巣に、いつの間にか蝶のサナギが居て…どんな蝶が羽化するんだろうと楽しみにしていたら、蝶のかわりに蜂が出て来る。……その、予想を裏切られる感じが楽しいのですよね…。」


ディアーナとレオンハルトは、ほくそ笑むジャンセンを遠巻きに見ている。


━━━こわっ!━━━


「彼は、瘴気から生まれた魔物達の…凝縮された魔物とでもいいますか…魔物の中の魔物、キングオブ魔物、めっちゃ魔物」


「親父、あんた、テンション上がり過ぎて…言葉がなんかおかしくなっている。」


レオンハルトがボソッと呟く。


「私の造った、この世界に初めて生まれた魔王とでもいいますか…ふふふ…私が造ったのでなく、勝手に生まれたんですよ…?楽しいですねぇ…ふふふ…」


ディアーナとレオンハルトは滅多に見ない、超ゴキゲンなジャンセンから距離を取る。


━━━こっわ!!━━━





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