14# 心が揺らぐ聖女の御子。
ロージアにはディアーナの言う事が理解出来なかった。
理解出来ないゆえに、おかし過ぎて聞き流せず、ディアーナの話す変な話しを夢中で聞いてしまう。
「ディアーナって、頭おかしいよね!月の女神のくせに。」
「あんたこそ、顔以外はいい所無しでしょうよ!ディアナンネの御子のくせにな!病気持ちのフリどうした!?」
「病弱な美少年にアイアンクローをかます馬鹿に、フリなんか意味無いじゃん!」
「馬鹿だと?…ロージア、こっち来い。あんたの鼻の穴にブドウ詰めてやるわ。」
中庭で、逃げて走り回ったロージアは疲れきって教会に戻った。
「ロージア様…お帰りなさいませ。」
ロージアを出迎えた教皇が頭を下げると、疲れて玉座に座ったロージアに尋ねる。
「いつ、ディアナンネ様を完成させるのです?」
「……疲れて帰ってきた僕に、いきなり質問?偉くなったもんだね、教皇…。消されたいのかな。」
「し、失礼致しました…!さ、下がらせて戴きます。」
広い礼拝堂に一人きりになったロージアは、大きな玉座のような椅子の上で膝を抱えた。
「……ディアーナを…使ってディアナンネ様を…造れと言うのか…」
今までは━━━
娘達を拐ったり、拐った奴隷を売った金で見目麗しい少女を買ったりと、ディアナンネの素材を集め身体をばらして継ぎ剥ぎを繰り返し、ディアナンネらしい姿をしたモノを造ろうとしていた。
ロージアが魔力を注げばソレは動き出す。
「ディアーナを使えば継ぎ剥ぎの必要は無いし、僕の魔力を無理矢理注げば……今のディアーナの魂は消えて、僕だけの思い通りになるディアーナになる…」
唇が弧を描く。
「僕だけの…僕しか見ない…僕だけの…人形みたいに静かで優しいディアーナ……。」
弧を描いた唇が震える。
「僕を追いかけ回したり、アイアンクローなんかしないディアーナ……そんなの……ディアーナじゃない…。」
初めて知った感情に心が揺らぐ。その感情の名前をロージアは知らない。
「ディアーナが欲しい…今のままのディアーナが欲しい…兄上なんかに渡さない…僕を…好きになって…」
ロージアは、ユラリと立ち上がるとディアーナの元へ行く、転移魔法を使った。
王城から皇帝が消えて二日目の晩。
王城内では側近のヒューバートをはじめ、多くの者達が皇帝の行方について情報を集めようとし、話し合いが行われているが……。
一番高い可能性を、敢えて避けている。
誰もロージアの、大教会の関与を口に出来ない。
側近のヒューバートは、大教会に皇帝が捕らわれていると確信しているが、そこに立ち入る権限はない。
「…腑甲斐無い……申し訳ありません…陛下…」
城内が慌ただしくなっていても、全くどこ吹く風なディアーナは、早々にベッドに入って寝ていた。
客人としての扱いを受けたディアーナ達が与えられた部屋は、ディアーナが一人で一つ、リリー達が三人で一つの大きな部屋をあてがわれている。
「……想像以上だね…これは」
ベッドで寝ているディアーナの傍らに現れたロージアは声を潜めて苦笑する。
シーツは外れてベッドからずり落ち、大きなベッドで寝ているネグリジェ姿のディアーナは、うつ伏せ状態でがに股になっていた。
「ヨダレ垂れてるし…イビキかいてるし…月の女神って、残念な女神だよね…ディアーナ…」
そんな君が…僕は…欲しい…
ロージアはうつ伏せに寝ているディアーナの背に、覆い被さるように身体を重ねる。
「……レオン?」
寝ぼけたディアーナが口にした名前に、ロージアの心がざわつく。それが嫉妬だと、彼は知らずに。
「兄上には渡さないよ!ディアーナは僕のものだ!」
背後からディアーナを抱き締め、ネグリジェの上から肩口に唇を押し付ける。
ディアーナは、ジタバタと暴れて隙あらば後頭部での頭突きを狙う。
「は?兄上?アゴ?ロージア?ちょっ…!寝技は反則だわ!」
「どうして君は大人しくならないのさ!」
少女に抵抗された所で、男の力で組み敷く事は容易いが、何しろ相手がディアーナなので、ロージアはディアーナの身体が脱力するような魔法を使っている。
それが、効いていない。
━━━ヤバイわ!美しい私が、美しい生け贄に!なんたって美しい私が、美しいまま悪の手に堕ちてしまうわ!美しいだけに!……もう、師匠にヘルプかしらね?━━━━
ディアーナは、父である創造神に助けを求める事にした。




