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8/17

村の整備と今後

翌朝、みんなすごく寝過ごした。

昨晩はかなり大騒ぎしていたし、元村人にしてみれば数日森をさまよっていて疲れ果てていたのだろう。

セリカの誕生日、成人式、結婚報告パーティーでもなければ、パーティーどころじゃなかっただろう。


何気にセリカ一家人望あるな。


オレは、あることをずっと考えていた。

そのためには、新しく住み始める9人とセリカ一家の12人で小さくても村となっている必要がある。


そんなことを考えて、オレはキッチンにむかった。

そこには、意外にもセリカがいた。


「おはようございます!」


セリカは朝から元気だ。

昨日割と飲んでいたような気がするが、意外にタフだな。


「おはよう」


オレは挨拶をしながらキッチンを見渡した。

セリカは朝食を作ってくれているようだった。


オレで言う現代的なキッチンもしっかり使いこなしていた。

適応力がすごい。

さすがの若さだな。

もっとも、オレもこの世界では15~16歳らしいが・・・


コンロはつまみをひねったら火が出るので分かりやすい。

セリカも一回の説明で理解してくれた。

セリカにしてみたら火力が少し弱いらしい。

そりゃあ、焚火と比べたら火は小さいかもしれない。


冷蔵庫も分かりやすかったみたいだ。

物を入れておくと長く日持ちする。

分かりやすい。


これまでは、「作り置き」と言う文化がなかったみたいだけど、余った食材を保存することを理解したみたいだ。


面白いのは、オーブントースターだった。

言わずと知れた石英管ヒーターで上下から遠赤外線で焼く調理器だが、オレはもっぱらパンを焼く調理器具だと思い込んでいた。


セリカは今朝も、たまごを焼いていた。

最初は驚いたが、この世界ではゆでたまごよりもたまごやき・・・と言うよりも「焼きたまご」らしい。


たまごを生のまま火にくべて焼くらしい。

だから、セリカにとって卵をトースターで焼くのは自然なことだったらしいが、オレにとっては違和感だった。


聞けば鶏のたまごならトースターで10分ほど焼けば、中が固まるらしい。

出来上がりはゆでたまごみたいな感じだが、殻が少し剥きにくいかな。

もしかしたら、たまごって茹でるときに少し水が殻の中にはいるのかもしれない。


見た目も普通に人間だと思った異世界人のセリカも、オレとは文化だけは違うんだなぁ。

いいな、こういうの。

楽しい。


セリカはこの家の設備を使いこなせる。

洗濯機も、浴室乾燥機も、アイロンも理解できたようだった。


セリカの両親は、機械類には疎いみたいだけど、セリカが教えれば使えるようになるだろう。


オレは軽い朝食を済ませ、森の更地になった部分を見た。

伐採して道になった更地が南に一直線。

道みたいな土地を耕すのは非効率だ。

ログハウス近くはツープラさん達が耕してくれていたけどな。


オレは、ログハウスから南に1km、幅1kmの森を伐採した。

耕すには木の根っこが多すぎて手を焼いていたみたいだから、木や植物そのものを空間から消した。

収納魔法の応用で、物を消す魔法と言うところか。


この広さを10人くらいで耕すのは大変なので、コンバインでも出しておこうかと思ったけれど、誰かが深刻なケガをしそうなのでやめた。

一部だけは耕しておいて、残りは彼らに任せよう。


1/4程度耕した状態にして、じゃがいも、にんじん、キャベツなどよく使いそうな野菜が生える様にしておいた。

夏の野菜も冬の野菜もごちゃまぜだ。

なんとかなるんだ・・・


鍬とか鎌とかは人数分準備しておこうかな。


次にオレは、1km四方刈り取られて更地となった森の角々に行き、結界の準備をした。

この範囲内ならばモンスターが入ってこないようにしたのだ。

森に入ることはあるだろうが、村は守ってもらわないと・・・


モンスター襲来も困るが、イノシシやクマなどがいたら農作物を荒らしに来てしまうかもしれない。

この結界があれば大丈夫だろう。


色々頑張っていたら昼になっていた。

オレは一旦ログハウスに戻って、セリカと昼食を食べることにした。


「ユーイチさん、新しいメニューに挑戦してみました♪」


セリカは嬉しそうに、グラタンを出した。

すげえなぁ、レシピ本は渡していたが、字は読めないはず。


オレがこの世界の文字や言葉が分かる方がどうかしているのだ。


グラタンうまい。

マカロニとか、ホワイトソースとかよくわかったな。

そう言えば、缶詰なんかをいくつか出したのだった。


「すげえな、食べたこともないメニューを。」


「はい、ユーイチさんに食べていただきたくて。」


「でも、なんでグラタン?」


「実は、このメニューってこの世界の物が一切ありません。」


「ん?」


どういうことだろう?


「缶詰なんてこの世界にはありません。このメニューもレシピもこの世界にはありません。味見をしても美味しいかどうかはわかっても、正しい味かはわかりません。そもそもこのメニューの名前すら分かりません。」


たしかに!

すごい適応力だ、セリカ。


「ユーイチさん、どこかに行こうとしていますね?私たちは大丈夫です。」


!?

セリカには何も言っていない。

それどころか村人の誰にも言っていない。


オレは都に行ってみようと思っていた。

セリカの村を襲った「兵隊」と言うのは馬に乗っていたらしい。


きちんと訓練を受けた人間と馬がいないと成り立たない。

村人に聞いてもこの森の周囲にそんな教育や訓練ができるところなどないそうだ。


唯一聞いたのは『王都』だった。


聞いた話だけで特定できるとは思わない。

単純に王都に行ってみたい、見てみたいと思ったのだ。


「すごいな、セリカ。ありがとう。ちゃんと帰ってくるから。」


セリカは少し寂しそうな笑顔だったけれど、オレを笑顔で送り出してくれた。

早目に行って、帰ってこないとな。


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