再会と発見
■新しい住人と治癒魔法
セリカが入れてくれたコーヒーを飲みながら、セリカの両親とセリカ、オレの3人で休憩していた。
ブタの化け物、オークの解体と言っても100kg以上のヤツが6体もある。
肉を切り分けるだけでも結構な作業だった。
最初は6体全部出してから解体していたのだが、腐敗や劣化が気になったので、解体する1体のみ出して4人がかりで解体することにした。
実は1体だけは、収納魔法(これをストレージと呼ぶことにした)で死体を取り込んで、肉だけ取り出したら、肉とそれ以外の部分で切り分けることが出来てしまった。
内臓や血だけでも分けて取り出すことが出来ると思う。
でも、ここで万能性を示してしまったら、みんなオレに任せて他の人のすることがなくなってしまう。
だから、1体か2体はみんなで解体しようと思っている。
今日と明日くらいは、ツープラさんも農作業は中断してもらうことになりそうだ。
セリカとコペンさんは、料理をお願いしないといけない。
ログハウスのキッチンでは2人は料理に慣れていないだろうから、ログハウスの外に簡易の釜などを作って、慣れた方法で料理をしてもらおうと思う。
オレもオークの解体もするのだけれど、気になっていることがある。
それは、『治癒魔法』だ。
今回オレはたまたま無傷で帰ってこれた。
でも、今後も同じとは限らない。
オレやセリカ一家がケガをしたとき治すための魔法が要る。
オレで試したいけど、自分で自分を傷つけるのは怖い!
とりあえず、植物とか、小さい動物で試したいのだ。
コーヒーをすすりながら、何気なく外を見た。
何か気配がしたのだ。
見れば、外に数人見える。
10人くらいいるだろうか。
ケガをしているものが要るのか、肩を組んでいるものもいる。
オレが森を刈ったので、必然的にこの家に来ているのかもしれない。
「ツープラさん、外を見てください。」
オレは、外を見ることを促した。
「あ、あれは!」
ツープラさんが一目散に外に出た。
危ないと一瞬思ったけれど、どうも知り合いらしかった。
念のためオレも外に出てみた。
見れば9人いた。
年齢はバラバラ、性別もバラバラ、ツープラさんが迷わずかけて言ったことを見ても村人だろう。
オレのあとから着いてきた、セリカとコペンさんも駆けていった。
やっぱり村人みたいだ。
『元』村人かな。
ケガ人がいるようだ。
まだ何も試していないけれど、治癒魔法が使えるかどうか試すチャンスと言える。
オレも元村人の所に駆け寄った。
ぶっつけ本番だ。
手に癒し的なイメージを溜めて、けが人の傷口に近づけた。
目の前で映像が巻き戻るように傷口が治っていく。
オレがイメージ付かないものは起こりえない。
『傷が治る』と言うと、映像が巻き戻るみたいなことになったのか。
大けがをしているのは2人だけ、後は、比較的軽傷だ。
傷の状態から見て、何らかのモンスターに引っ掻かれたようだった。
オレのセンサーでは、周囲にモンスターいない。
治療に専念できそうだ。
「き、傷が・・・治ってる!」
元村人が驚いている。
「ユーイチくん!こ、これは!」
ツープラさんも驚いている。
まあ、目の前で傷が治ってるからな。
傷どころか、血もなくなっていってるし。
オレも驚いているんだよ。
重症の2人を治療するのに約5分。
全員衰弱はしているみたいだけど、何とか歩くことは出来そうだ。
はー、またオレの冷凍うどんがうなることになりそうだ。
元気な人は、オークの料理も食べてもらおう。
セリカの誕生日パーティーは、思ったよりも大きなパーティーになりそうだ。
結局、元村人の9人は3家族と言うことだった。
だから、新たにログハウスを3棟建ててあげた。
元村人達も手放しに喜んでくれていた。
今日は、再会、セリカの誕生日パーティー、新しい住むところが決まった引っ越し祝いと色々重なって、みんなで夜通し大騒ぎした。
森の伐採の時に収納していた木を丸太にして、取り出して、みんなの椅子とテーブルにした。
キャンプみたいで楽しいな。
結構な傷を負っていた2人も結局パーティーに参加していたし、本当に元気になったのだなぁ。
セリカたちが作ってくれたオークの料理は、美味しくてオレも結構食べた。
ワインもちょっといいのを出した。
いいな、こういうの。
そう言えば、今までこんなのは経験がなかったな。
みんな本当に楽しそうだ。
オレは、自分の力について考えていた。
魔法も使うことができなかったオレが、ほんの数日でオレがイメージできることがなんでもできるようになっていた。
例えば、サーチ。
今では半径5km内の魔物は入ってくれば、気づくことができる。
種類までは分からないが、大きさ位ならわかるようになった。
炎、水、氷、雷・・・イメージできるものは何でもできる。
収納魔法もそうだ。
ぶっつけ本番でも治癒魔法ができた。
多分、結界も作れると思う。
明日になったら、この小さな村(?)に結界を張ってモンスターから守るようにしよう。
このなんでもイメージできるものは実現できる能力を『イマジン』と名付けよう。
力としては、既にあった。
名前を付けることで、その存在がはっきりする。
この『イマジン』があれば、何でもできる。
でも、その存在が知れれば周囲の人間をダメにしてしまう。
それならば・・・
「ユーイチさん!どうしたんですかっ!」
珍しくセリカが砕けた感じで抱き着いてきた。
酔っぱらっているようだ。
「ユーイチさんは、神様じゃなくて、魔法使いなのですから、もっと砕けて輪に入ってきてください♪」
そうだった。
オレは、魔法使いと言うことにしてもらったのだった。
引きこもりとして、部屋から一歩も出ない日々を目指したいのだが、それは十分な安全が確保されていないといけない。
セリカと、その両親、そして村人・・・
守るものが出来てしまった・・・。
「さー、婿殿!みんな前で結婚の発表をしてくれ!」
今度はツープラさんか、酔うとキャラが変わる家系なのか・・・
オレはこの人の流れに飲まれながら、夜をふかしていくのだった。
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