表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/17

リベンジ

次の日は朝から大変だった。


セリカには、コペンさんにキッチンの使い方を教えてもらうことにした。

朝のうちに食材を十分量を渡しておいた。

彼女たちなら昼食や夕食を任しておいていいだろう。


最悪何かあっても、冷食があるので大丈夫だ。


ツープラさんには引き続き土地を耕してもらうことにした。


ただ、この辺りは土地が狭い。

家から少し離れたら100mほどですぐ森だ。

これでは十分な広さの畑を作ることが出来ない。


オレは、この辺りを開拓することにしたのだ。



とりあえず、目の前にある木をビーム的な何かで切り倒す。

木が倒れると周囲にほこりがたったりするし、音でモンスターが来てしまうかもしれないので、倒れるまでにオレの魔法で収納してしまう。


右手でレーザー、左手で収納、右手でレーザー、左手で収納。

これを繰り返すとオレが進む方向の木がなくなっていく。


草とか蔓とか結構あるのだけれど、これは空間を切り取って消す。

多分、収納魔法と同じ原理なのかもしれない。

一度収納したら二度と取り出さないだけなのかな。


ちなみに、雑草は焼いて、徹底的に開墾する。


大樹から(多分)南の方に開墾して進んだ。

焦土と化した土地は後で耕して緑地化しよう。

生態系は出来るだけ崩したくない。


ただ、人間が生きていく上ではある程度の開発は必要なのだ。

イメージ的には1㎞四方の四角い更地を作れればOKだろう。


普通なら絶対に無理だが、今の調子で進めば1日もあれば開墾完了そうだ。

とりあえず、南下が終わったあたりで、オレは違和感を感じた。


敵が来ている。

何となくだが、あのブタの化け物だ。


どういう原理か分からないが、数百メートル先を歩いていて、まっすぐこちらに向かってきているのが分かる。

魔法と言う武器を手に入れたオレだが、一度死を覚悟した相手には緊張する。


相手がまっすぐこっちに向かっている以上、隠れても無駄だろう。

遠くからレーザー的な射撃をしても良いのだが、出来れば確実に仕留めたい。


オレは、足場の良い所で立ち止まった。

30mほど先にいる。

30mって街で言うと電柱と電柱の間隔くらいだ。

そんなに遠くはない。


草が動いているのはもう見えるくらいの距離だ。


20m、10m・・・


5m。


音からしても、目の前の茂みの向こう側にヤツはいる。

前回と同じヤツなのか、別の個体なのかは分からない。

でも、確実にそこにいるのだ。


ガサガサガサ


バサー!


予想通りヤツだ。

現れた!現れやがった!!


不気味な鼻息が不快だ。

オレと目が合っているからかヤツも動きが止まった。


背の高さなら2mくらいか。

体重は100kgをゆうに超えているだろう。


丁度茂みから身体が半分くらい出ている状態だろうか。

下手をしたらヤツの間合いには入っているだろう。

オレのパンチは絶対に届かない。



不思議と落ち着くものだ。

でも、手の震えが止まらない。

膝もがくがくしている。


止めようと思っても、止まらないんだ。


この震えに気づいたからか、先に動いたのはヤツだった。

まっすぐオレの方に飛びついてきた。


オレは、手を上に振り上げて、レーザーを放った。

ヤツは真っ二つになって倒れ込んだ。


飛びかかってきたんだ。

オレは、転びながらもなんとか避けた。

膝は擦りむいたが、ヤツは仕留めた。


急に真っ二つになった身体は、ビクンビクンと痙攣している。


さっきまでブタの化け物だったが、今は肉塊だ。

血まみれになったけど、オレは大事な一勝を勝ち取ったのだ。


初めての狩り。

生き物の命を奪うと言う行為。


街育ちのオレとしては胸につかえるものはあった。

何か少し具合が悪い。


今日はこれくらいにしておこう。



ブタは食べられるかもしれないので、収納した。

膝はまだ笑っている。

立ち上がれない。


腰が抜けたと言うのはこういう状態だろうか。

木につかまって立とうとするのだけれど、足に力が入らないのだ。


「ははは・・・」


情けないな。

誰も聞いていないのに笑いが出た。



・・・しまった。


腰が抜けたことで見逃していたんだな。


敵影が5つ。

これもでかい。

またブタの化け物かもしれない。


オレは立ち上がれない。

かなりヤバいな。

どうする!?

どうすればいいのか!?



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「セリカ?これは何に使うの?」


お母さんは調理する箱の前にいた。

この箱の名前は『でんしれんじ』。


火を使わない料理の道具だ。


私とお母さんは、ユーイチさんの家で料理をしている。

ここは、見たことがない物ばかり。


でも、ユーイチさんのために料理が出来るようになりたい。




私は産まれてからずっとニック村で暮らしていた。

いつも貧しくて、いつもお腹が空いていた。

でも、家族3人でなんとか暮らしていた。


村の人もいい人が多かった。

みんなで協力していかないと生きていけないから。


丁度、私の16歳の誕生日で、成人の日の夜だった。

村の人と一緒にお祝いをしていた時、その人たちは突然来た。


馬に乗って、50人以上いた。

村に火を放っていた。

中には剣を持って村の人に切りかかっている人もいた。


何これ!?


今までこんなことなかった。

知らない。

逃げなきゃ!逃げなきゃ!


その時誰かが言った。


「逃げろー!」


私は我に返った。

とにかく逃げた。


お父さんとお母さんも逃げているのは見えた。

私もそっちに逃げたかったけど、馬の兵隊に見つかってしまった。


とにかく、見つからないように逃げた。


夜中中走った。

走り続けた。



森に入った。

モンスターがいるからと普段はほとんど入らない森。

ここなら兵隊も来ないはず。


2日、3日森をさまよった。

始めてきたところだった。

途中、オークやホーンラビット、バジリスクかコカトリスか分からないけど、鶏のモンスター。


命からがら逃げた。

でも、もう駄目だと思った。

もう、水もしばらく飲んでいない。

お腹も減った。


隠れるところもない。

とにかく走るしかなかった。



そんな時、水の音が聞こえた。

水っ!

川のヘリに出たところで人がいた。


きれいな金髪。

男の人だ。

ウサギを持ってる。

しかも、焼いたウサギ。


神様だ。


すぐに分かった。

私がほしいものを全て準備してくれていた。


「お願いします!その肉を少し分けて頂けないでしょうか・・・」


すぐにウサギを手渡してくれた。


水を飲んでウサギを食べた。

男の子が見ているのは気づいているけど、止まらない。

本当にお腹が空いていたのだ。


普通知らない人に食べ物をあげたりしない。

やっぱりこの人は神様だ。


怖かった。

安心したからか、美味しいからか、安心したからか、とにかく涙が止まらない。


気づけば、全部食べていた。

こんなに食べたのはいつぶりだろう。


そうだ、神様にお礼を言わないと。

私は、いつものお祈りをする時と同じように両膝をついて、手を合わせ神様にお礼を言った。



神様は、それからも奇跡をいくつも目お前で起こし続けた。


大きな家を一瞬で出して見せてくれた。

つい一瞬前までは、何もないところに大きな家がでた。


部屋は信じられないくらいきれいで、これはもう人の物でないと言うのはすぐに分かった。

神様の家では水くみをしなくても水が出る。

お湯も出る。


身体を洗う時はいつも冷たい水だったけど、神様は大きな容器に大量のお湯をためてそこに入った。

最初はスープの具になった気分だったけど、神様の言う通り真似してみたらわかった。

これはすごい!

病みつきになりそう。


身体を洗っている間に、さっきまで着ていた服がきれいになっていた。

私は何も持たずに逃げたので着替えもなかったはずなのに。



食事もすごい。

まず、かまどがない。

そして、火を起こさない。


こんなのヒューマンが想像だってできるわけがない。


食材もいつの間にか神様が持っていた。

何もないところからいつの間にか出てきた。


四角い白い箱に入れたと思ったら、しばらく待っていた。

チンとなったら食事が出来た合図らしい。


ほんの少しの間だったのに手の込んだ料理が準備されていた。


これまで見たこともない料理。

食べたこともない味。


でも、美味しいのだけは間違いない。




こんな施しを受けて、私は神様にどんなお返しが出来るだろう。


もう私も成人したのだし、伽をするしかない。

私はすごく恥ずかしかったけれど、あの男の子の部屋に、神様の部屋に行った。


神様はやさしかった。


何も知らない私は、くすぐったがったり、痛がったりしたのに、嫌な顔一つせず接してくれた。

少し話もした。


神様とこんなに近くで話が出来るなんてきっと私は世界で一番幸せに違いない。


一生身の回りの世話をさせてもらえることになった。

相手が神様だから結婚なのかどうか分からないけれど、一生お傍にいさせてもらおう。


今日は、神様がどこかに遠征されていった。

きっと私たち家族を守ってくれるための何かだ。


お任せしておこう。

私はお母さんに神様の調理道具の使い方を教えることを頼まれた。


まだ使い方が分からないものもたくさんあるけど、包丁やまな板は分かった。

薪も要らないし、すぐに火が付くのを見てお母さんも驚いていた。

そうなのよ、神様の奇跡はすごいのよ♪



お母さんと料理をしているときに、外のお父さんが叫んでいるのが聞こえた。


「ユーイチ様!」


ユーイチさんに何かあったのか!?

私は急いで外に出た。


外には、ユーイチさんが倒れていた。

全身血まみれだった。

大変だ!


私は混乱して泣き叫ぶしかできなかったけど、お父さんとお母さんがユーイチさんを家に運んでくれた。

ベッドの上に寝かせられたユーイチさんは意識がなかった。


お父さんがユーイチさんを見てくれている。

私も治療をしないと・・・涙で何も見えない。

何もできない。

どうしたらいいの!


「おい、セリカ・・・これは・・・」


お父さんが少し驚いたように言った。

なに!?どんな悪いことが起きたの!?


「ない、ないんだよ、セリカ。傷がない。」


「え?」


全身血だらけなのに傷がないってどういうこと。

お父さんの言っている意味が分からなくて、私はますます混乱した。


お母さんが濡れた布を持ってきてくれた。

ユーイチさんの顔を拭いていった。


血だらけで真っ黒だったけれど、段々きれいな顔が現れてきた。


よく見ると、胸のあたりが動いている。

呼吸だ。


ね、寝てる?

寝てるだけ?


私はとにかく、ユーイチさんの身体を拭き続けたのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


いつものようにオレは寝坊したようだ。

外では日が高いのが分かる。


何故だか全身が筋肉痛だ。


なぜか、べたべたするし、少し変な臭いもする。

朝からシャワーを浴びようか。


身体を起こしたところで、ベッドわきにセリカがいることに気づく。


そこで色々記憶が蘇ってきた。


あのブタの化け物を1匹倒した後、その後5匹の群れもいたんだ。

情けないことにオレは腰を抜かしていたが、魔法は別に出せるので、氷柱で串刺しにしてやった。

当初は炎系を考えていたが、焼いてしまうと後々食べにくいかもしれないと思ったのだ。


ただ、初めての狩りと言うことと、イレギュラーな群れでとにかく疲れた。

気を失う前に移動魔法でログハウスの前に移動したのだ。

ただ、その後の記憶がない。

きっとそこで気を失ったのだろう。


この臭いはブタの返り血だな。

セリカが拭いてくれたのかもしれないな。

と、言うことは心配かけたかもな。


オレは、ベッドにうつぶせる様に寝てしまっているセリカの頭をやさしくなでた。


その瞬間、セリカがビクッと跳ねたかと思ったら目を覚まして捲し立てる様に話してきた。


「ユーイチ様大丈夫ですか!?」


「けがは!?」


「痛いところは!?」


「血があんなにいっぱい!でも、大きな傷はなくて!」



あー、こりゃあ、すげえ心配かけたなぁ。


「ごめんごめん。ブタの化け物を倒してきたんだ。血はほとんど返り血だ。オレのじゃない。」


セリカがギューッと抱き着いてきた。


顔は見えない。


しばらくして、オレの顔を見て言った。


「心配しました!次から森に入るときは私もいっしょに行きます!」


なんだか怒られてしまった。

でも、セリカの目に涙がいっぱいたまっていたのに気づいたので、オレは何も言えなくなっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


起きてからも散々だった。


ふき取ってもらったとは言え、ブタの化け物の血は臭かった。

シャワーで何度も洗い流したが、鼻の奥に臭いがこびりついているみたいで・・・


あの血だらけのブタの死骸をオレの収納魔法で納めていると思ったら一刻も早く取り出したくなった。


オレをこんなにしたとは言え、ブタも生き物。

殺してしまったからには、食べてやるのが人の道と言うもの。


地面に直接食材となるものを置くのには抵抗があったので、ブルーシートを敷いて、ブタの死骸を出して行った。

全部で6匹もいるのでかなりの重さだ。

ログハウスの前がブタの死体置き場の様になってしまっている。


セリカに見つかって、また抱き着かれて泣かれてしまった。

普通モンスターはそんなに大量には倒さないらしい。

でも、いたのだからしょうがない。


ツープラさんもコペンさんも今日は畑を後回しにして、ブタの解体を手伝ってくれた。

切り分けたら、数日で食べきれない分を収納魔法でしまっておこう。


ひとつ気づいたのは、ツープラさんとコペンさんとの距離だ。

物理的な距離と言う訳ではなく、オレとの心の距離。

何か少しフランクになったと言うか。


「ユーイチくん、無事でなによりだよ。昨日はセリカが取り乱して大変だったんだ。」


3人でオークを解体しながらツープラさんが話しかけてきた。


「心配かけてすいません。」


「全身血まみれで倒れていた時は、もうだめかと思ったよ。まさかオークを倒してくるとは。」


このブタの化け物はやっぱりオークって言うんだ。


「狩りが初めてだったもので・・・」


「初めて!?初めてでこれか!?今まではどうしてたんだい!?」


「少し前よりも前の記憶がなくて・・・」


嘘じゃない。

この世界での記憶と言ったら、ここ数日以前の物はないのだから。


「そーかー、セリカが神様なんて言うものだから本当にびっくりしたんだ。家を出現させたり、本当に神様だと思っていたくらいだよ。」


「そうね、昨日セリカがユーイチさんは本当は、魔法使いだと教えてくれたの。」


ああ、そうか。

セリカには、オレのことは魔法使いってことにしておいてほしいと言ったな。

ツープラさんとコペンさんに言ってくれたんだ。


それで、随分心の壁が低くなったわけか。

オレ的にはそっちの方が気が楽でいい。


「それにしても、魔法でオークを6匹も倒すなんて、王国魔法使い級じゃないか~!?」


「そうなんですか?よくわからなくて。」


「そんな頼もしい魔法使い様が娘の夫となってくれて嬉しいよ!」


「いやいや~。」


ん!?

『娘の夫』

オレってセリカの夫って扱いなのか!?


否定しようと思ったけれど、娘さんは美味しくいただいてしまった後だし、何も言えない。


「娘の成人の日に村を焼かれるとは思わなかったけど、こんな婿殿に出会えたのだ。人生何があるか分からない。」


ツープラさんは、はっはっはっと笑っていた。

割とおおらかな人なのかもしれない。


「セリカをお願いしますね。」


コペンさんにも念を押されてしまった。


「はい、出会いは本当に偶然だったのですが、大切に思ってます。」


「まあ!お父さん聞きましたか!」


「おお!確かに!」


「今日は良い肉も入ったみたいだし、パーティーをしようか!」


「私たちの村の料理をご馳走しますね!」


ツープラさんとコペンさんが盛り上がっている。

やっぱり娘のことだし、微妙な関係だと思って、不安だったのかな。


この世界の料理も食べてみたいし、お呼ばれしようかな。


そんなことを考えつつ作業をしていると、ログハウスの方からセリカが休憩用のお茶を持ってきてくれたのだった。


コメントもらえたら嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ