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第九話

 次の日の朝。


「あ、松崎さんおはよう!」

「ふぇ? あ、お、おはよう……」


 校門をくぐったところで、後ろから声を掛けられた。振り返ると、白沢さんが満面の笑みでこちらに駆けてくるところだった。

 声の主が彼女だと認識した瞬間、血液が顔に集中していく。頬が熱くなっているのが自分でもわかった。


「どうしたの? 顔赤いよ?」

「い、いやその、だ、大丈夫……」


 心配そうにのぞき込んでくる白沢さんの顔が、視界一杯に広がる。生暖かい吐息が鼻先にかかる。

 すっ、と彼女の手が伸びてきて、私の額に触れた。ひんやりしたその手は、少し柔らかくて、とても気持ちよかった。


「――~~ッ、だ、大丈夫だから、大丈夫だから、ね!?」

「……うーん、そういうならいいけど……無理しないでね?」


 もうそろそろ駄目になってしまいそうだ、というところで、ようやく白沢さんが離れてくれた。……危ない、このままいけば下手したら強引に抱きしめて接吻を――


「って、何考えてるの私――ッ!!」


 自分で自分が制御できない。白沢さんへの感情が溢れてしまって、何か一つでもきっかけがあれば衝動に身を任せてしまうという確信があった。

 きっと、どこかおかしいと感じているのだろう、白沢さんは何とも言えない微妙な表情をして「先に教室行ってるね」と言って先に歩き出した。


「……あ、あの」


 今言わなくちゃ。私ははやる鼓動を抑えつけて、必死に言葉を絞り出した。

 だけど、こんな沢山の人の目がある中で告白なんてできるはずがなくて。


「……つ、伝えたいことがあるから……今日のほ、放課後、校舎裏に来てくれる……?」

「ん、分かった」


 私のお願いに、彼女は満面の笑みで了承してくれた。その後、私も彼女の後を追うように、校舎に入っていった。


     *


「……うー……」


 ホームルームが終わり、掃除も終わった後の教室で、私は一人机に突っ伏していた。

 ……今日は全く授業に集中できなかった。気が付くと白沢さんの事ばかり考えていて、教師の言葉なんて一言も頭に入ってこなかった。

 自分で呼び出しておいてなんだが、白沢さんとまともに顔を合わせられる気がしない。こんな状態で告白など絶対に不可能だ。

 だが、呼び出してしまった以上私も行かなければならない。行って、白沢さんに思いのたけをぶつけるのだ。


「――ッ!」


 バチン、と自分の頬を叩いて気合を入れる。そして、足早に校舎裏に向かった。

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